
なぜ子どもは泥んこ遊びや粘土遊びが大好きなのでしょうか。 それはこれらの素材が「可塑性(かそせい)」、つまり力を加えれば形が変わり、また元に戻せるという性質を持っているからです。
固いプラスチックのおもちゃは形が決まっています。 でも粘土は子どもの「こうしたい!」という思いのままに形を変えてくれます。 ギュッと握れば指の跡がつく。伸ばせばどこまでも伸びる。
この「自分の力で世界を変えられる」という万能感が子どもの心を開放し、ストレスを発散させてくれるのです。保育園でも雨の日の粘土遊びは、子どもたちの目が輝く特別な時間です。
粘土遊びの面白さは「作ること」だけではありません。「壊すこと」もまた重要な遊びの一部です。 一生懸命作ったお団子を手のひらでぺちゃんこに潰す。ヘビのような長い紐をブチブチとちぎる。
大人から見ると「せっかく作ったのにもったいない」と思うかもしれません。 でもこの「破壊」の行為こそが、子どもの心の中に溜まったイライラやモヤモヤを外に吐き出すデトックスになっているのです。
何度壊しても誰も傷つかないし、またすぐに新しい形に生まれ変わる。 その安心感が子どもの情緒を安定させます。
「指先は飛び出す脳」と言われるほど、手と脳は密接に繋がっています。 粘土のひんやりとした温度。しっとりとした湿り気。少し硬いものをこねるときの抵抗感。
そうした触覚からの豊かな刺激はダイレクトに脳を活性化させます。 丸める、つまむ、ひねる、ちぎる。無心になって手を動かしているとき、子どもの脳内では想像力や集中力の回路が猛スピードで育っているのです。
特別な知育玩具を買わなくても、粘土の塊が一つあればそこは最高の知育の場になります。
お絵描きには「はみ出した」「色が混ざった」という失敗がつきものです。 でも粘土にはそういった失敗なく、すべての工程がそのまま進むためのプロセスになります。
「失敗しても大丈夫」という心理的な安全性が、子どもの「やってみよう!」という冒険心を後押しします。 「これは恐竜のしっぽ!」「こっちは宇宙人!」。
大人の常識では思いつかないような自由な発想が次々と飛び出してくるのは、そこに正解も間違いもないからです。

「でも部屋が汚れるのが心配…」。保護者の方のその気持ちもよくわかります。 だからこそ最初にルールと環境を整えてしまいましょう。
新聞紙やレジャーシートを広げて「この上だけで遊ぼうね」と約束する。 そして最後は「小さく落ちている粘土を大きな粘土でペタペタして集めよう!」とお掃除も遊びに変えてしまうのです。 「粘土の集まれゲーム」は保育園でも定番のお片付けテクニックです。
準備さえすれば親もおおらかな気持ちで見守ることができます。
外で遊べない日はどうしてもテレビや動画に頼りたくなってしまいます。 でもそんなときこそ粘土を取り出してみてください。
指先から伝わる心地よい刺激。ぐちゃぐちゃにする解放感。そして何でも作れる自由な世界。 その時間はお子さんの退屈を紛らわせるだけでなく、心を癒し創造力を育む最高に贅沢なおうち時間になるはずです。 大人も一緒にこねてみると意外と癒されるかもしれませんよ。
ライター / 監修:でん吉(保育士)
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