数年前、仕事帰りにコンビニへ立ち寄ったときのことです。 偶然、昔からの知人とばったり顔を合わせました。
少し話をしていると、財布を忘れてしまったらしく、知人が困った様子で声をかけてきたのです。
「悪いけど、千円だけ貸してくれない?」
本当に困っているようでしたし、特に理由も聞かずに「いいよ」とその場で千円を渡しました。 その後はしばらく連絡を取ることもなく、私自身もお金を貸したことなどすっかり忘れていたのです。
それから半年ほど経ったころ、突然その知人から食事に誘われました。 久しぶりに会えるのが楽しみで出かけたのですが、連れて行かれたのは、なんと一人5万はする高級な鉄板焼き店でした。
目の前で焼かれる上質なお肉を見て、私は思わず尋ねてしまいます。
「こんなに豪華なお店で本当にいいの?」
すると、知人は当時のことを静かに話してくれました。
実はあのころ、仕事で思うようにいかないことが重なり、私生活でも深い悩みを抱えていたそうです。 精神的にも追い詰められ、手持ちのお金もほとんどなくて途方に暮れていたとのことでした。
その後、少しずつ仕事が落ち着いて生活を立て直すことができ、気持ちに余裕が戻ったときに、私から千円を借りたことを思い出したといいます。
「理由も聞かずに助けてもらえたのが、本当にうれしかったんだ。いつかちゃんとお礼をしたいと思っていたんだよ」
そう話す知人は、以前会ったときよりもずっと明るい表情をしていました。
帰り際にも、知人は笑顔で声をかけてくれたのです。
「千円以上のことをしてもらったから、今日はそのお礼。遠慮しないでね」
自分では貸したことすら忘れていた千円が、まさかこんな温かい形で返ってくるとは思いませんでした。 金額の大きさではなく、困っているときにそっと差し伸べられた手が、相手の心に残り続けるのだと実感した出来事です。
(男性/41歳/会社員)
※こちらは実際に募集したエピソードをもとに記事化しています
おやこのへや編集部
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