きょうだいでケンカや意地悪をしてしまったときに、兄がなかなか素直に謝れません。
つい「いけないのはあなた」などとジャッジして「お兄ちゃんなんだからしっかりしないと」という形で終えがちですが、この対応は間違っていますか?
「きょうだいゲンカは仲のいい証拠」「きょうだいはケンカをしながら育っていく。親はむやみに介入しない方がいい」など、よく言われますよね。
そうはいっても、いざ目の前で派手なケンカをされると、何もせずに黙って見ているなんてできないもの。
そこで、この記事ではきょうだいゲンカが起こったときの親の対応や言葉がけについて、解説していきます。
きょうだいゲンカは、きょうだい同士が1歳から4歳離れている場合によく起こります。それ以上離れていれば、年齢からくる成長で上の子が相手にしなかったり折れたりする大人な対応ができるようになり、下の子も、正面から向かっても負けることが経験上わかっているので、何かあってもどちらかが最初から諦めている場合が多く、そもそもケンカが起こりにくい、というわけです。
男女でいえば、上と下が異性同士よりも同性同士の方が起こりやすいようです。お互い欲しいものや興味の対象などが似ていることが多いため、どうしてもいさかいが起こってしまうのです。
ケンカの様子は男女でずいぶん違ってきます。
男の子は暴力を伴うことが多く、相手がけがをしてしまうこともあります。
女の子同士の場合は、互いにののしり合ってお互い引かないことが多いようです。中には髪の毛をひっぱったりひっかいたりと、暴力的なケンカに発展することもあります。
5歳くらいまでは、年齢の1つ違いは大きな違いですので、ケンカをした場合、下が3歳未満のときはどうしても負けることが多く、最後は下が泣いて終わり、となる場合が多いようです。
きょうだいが異性であれ同性であれ、目の前で大きなケンカが始まると、親は、それを黙って見ているなんてことはできず、どうしても介入する…と言うより、介入せざるを得なくなることが多いと思います。特に、暴力が伴ったケンカ、いつまでもやみそうにないケンカの場合などは。
ただ、親の介入には「いい介入」と、火に油を注ぐだけの「よくない介入」があります。
まず、よくない介入例を3つ紹介します。
ひとつは、「もうやめなさい!」と、怒りながら言うこと。
それでやめることはない上、それでは大声を出す人が3人になっただけで、周りからは、「さらに賑やかになった」ような状態に見えるだけです。
その次によくないのは、悪いほうを決めつけること。
悪くないと言われたほうは「それみろ」という気持ちが沸き、悪いと言われたほうには、悔しさと憎しみのようなものが募ります。
親が裁判官になっただけでは何も解決できない上、それで終わらせてしまえば、どちらかに必ずしこりが残り、そのしこりが第2章(早ければ翌日に)をもたらします。
一番よくないのは「お兄(姉)ちゃんなんだから」と上を叱り、下にも「それくらいで泣くな」と、両方を叱ること。
親は喧嘩両成敗をしたつもりでも、子どもたちは「向こうのおかげで(親に)叱られた」となり、仲直りどころか、さらに険悪な状態になります。
では、きょうだいケンカはどのように介入すればいいのでしょうか?
大人でも子どもでも、言い合いやケンカというのは、どちらも必ず言い分があり、どちらも自分が正しいと思っています。
2歳の子どもでも言い分はあるので、まずはその言い分を聞いてあげましょう。
仮に上が先に暴力を振るったとしても、暴力を振るわなかった方が正しいとは限らないからでもあります。
たとえば、5歳の兄(姉)と3歳の弟(妹)ケンカしていて、上が暴力を振るった場合、まずは兄(姉)に「どうして叩いたの?」と理由を聞きます。
「なんで叩くの!」は非難ですが、「どうして叩いたの?」は単なる質問です。聞かれた方も、責められているようには感じません。
するとお兄(姉)ちゃんは「勝手にこのおもちゃを横取りしたから」とかなんとか、叩いた理由を言います。
そこでは「ふーん、そうだったの」とか、オウム返しに「横取りされたの」とだけ言い、今度は弟(妹)に、「どうして横取りしたの?」と聞きます。
「だって、遊びたかったから」などと答えたら「そうだったの。遊びたいもんねえ」などと、そこでもオウム返し的な共感のことばをかけます。
そのあとは、兄(姉)には「遊びたかったんだって」、弟(妹)には「貸すのがいやだったんだって」などと、互いの気持ちや事情を代弁して言います。
子どものケンカはたいてい、お互い気持ちや事情をうまく相手に伝えられないところから始まります。
大人同士でもそうですが、自分の「事情」を聞いてくれた時点で気持ちは収まり、興奮も鎮まります。
自分の気持ちを、自分に代わって相手に伝えてくれたことで、満足感も募ります。
お互いの興奮が冷めたそのときに、「でもね」と親は自分の言いたいことを言えばいいのです。
いきなり「やめなさい!」と言っただけのときよりも、ずいぶん「聞く耳」を持って聞いてくれます。
こうやって書くと難しいことのように思われるかもしれませんが、以上のやり取りはすべて1分もあればできます。
きょうだいゲンカで大切なのは、要は「親までが興奮して怒らない」「お互いの事情を聞いて代弁してやる」の2点です。
きょうだいゲンカで悩んでいる親御さんは、ためしに一度やってみてください。今までとは違う反応を見せ、少なくともその時点でケンカは終わっていますよ。
終わったら、そこで3人で仲直りの握手をしたり、「仲直りのぎゅ~」と言いながら二人を抱きしめたりするとお互い笑い合い、そのあとウソのように仲良く遊べることもありますよ。
こどもコンサルタント 原坂 一郎
1956年、神戸市生まれ。関西大学社会学部卒業。神戸市内で23年間6か所の保育所勤務を経て、2004年「こどもコンサルタント」に。笑いと笑顔をキーワードに、子どもおよび子育てに関するさまざまな研究・執筆・講演を全国で展開。『読むだけで子育てがうんと楽しくなる本』(春陽堂)、『男の子のしつけに悩んだら読む本』(すばる舎)ほか著書多数。
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