子どもが大好きな砂場遊び。公園に着くと真っ先に砂場に行き、夢中になって動かないという子も多いですよね。
子どもの心をそれほどまでにとらえる砂遊び。
ですが、親はつい「広い公園に来てるんだから…」と体を動かす遊びに誘ったり、服が汚れたり靴がジャリジャリになって嫌だな…なんて思ってしまうことも。
でもじつは砂遊びは、子どもの発達にとてもよい影響を与えることがわかっています。
砂遊びと子どもについて長年研究されている同志社女子大学現代社会学部の笠間浩幸先生に、「砂場遊び」の魅力について、お聞きしました。
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砂場は子どもの可能性を引き出すための最高の遊び場と言えます。
その前提として、まず3つの特徴が挙げられます。
まず1つめの特徴は、「年齢を問わずに遊べる」ということです。
砂遊びは0歳からできます。
「そんな赤ちゃんに砂遊びができるの?」「砂を食べてしまいそうで心配…」という方もいるかもしれませんが、大人がお手本になって遊ぶことで次第に砂遊びに興味を持っていき、"口に入れずに遊ぶ"ということを覚えていきます。
次に砂遊びは1人でも十分楽しめるものですが、2人、3人…と人数が増えていくことで作れるものの可能性がどんどん広がります。
大人数になると、みんなで協力して大きな山を作ったり、水路を走らせたりとスケールの大きなものを作ることができます。砂場全体を創造の場としたダイナミックな作業が、砂場遊びをもっと面白くしてくれます。
砂には決まった形がないため、想像力とアイデア次第でどんな姿にも変化します。
砂場は、男女による好き嫌いの差はほとんど見られず、自分の好きな遊びをすることができます。性別にとらわれず、思いのままに遊ぶことができる砂場は、子どもの多様な個性が生かされる自己実現の空間です。
年齢・性別を問わずに、ひとりでも大勢でも楽しむことができる砂遊び。
そんな砂遊びが子どもの発達に与える意義を、私は大きく10の要素に分けてとらえています。
砂遊びの楽しさは色々な"感覚"を使って遊ぶところにあります。
砂の色や形、水分量(湿っている・乾いている・ドロドロなど…)を、視覚と触覚を通じて感じ取り、遊びに反映させることができるようになります。
また、手ですくった時の砂の温度や重たさ、圧迫感を感じたり、平坦ではない砂の上を歩くだけでも、深部感覚としてのバランスや関節、筋肉を総動員しています。
砂を手で押すと手の形に合わせて沈んでいくように、砂は子どもの体や動きによって変化します。子どもたちはそこに「ありのままの自分を受け止めてくれている」という安心感を見出しています。
安心して遊べる場所があることは情緒の安定につながり、遊びへの意欲と集中力も高まります。
足元が不安定な砂場では、ハイハイや歩くことはもちろん、お尻をつかないようにしゃがむこともなかなか難しいですよね。
踏ん張りながら身体を支える、転ばないように気を付けながら歩いたり飛び跳ねたりすることで筋力や腕力が鍛えられ、バランス感覚などの身体能力が養われます。
子どもは砂遊びを通して道具をうまく操れるようになります。
操作性を高めるために持ち方を変えてみる、姿勢や構え方を変えてみる、道具の形や大きさに応じて力加減を調整する…などのプロセスが手指の巧緻性(こうちせい/器用さのこと)を高め、自分の思うままに道具を使えるようになっていきます。
面白くて、楽しくて、いろいろな感覚を刺激してくれる砂遊びでは、思わず色々な"声"が出てきます。また、「どうぞ」「おいしいね」、「かして」「ありがとう」などという、生活を通じて学んだ言葉を再現する場面がたくさんあります。
砂遊びが引き出してくれるイメージは、子どもの心の声も活発にします。
「こうしたら上手くいくかな?」「こんなに運べるかな?」という自分へのつぶやきをたくさんストックすることで、自分と語り、自分を見つめる自分の姿も育っていきます。
砂場では、作りたいもののイメージを共有して協力して作る、けんかをして仲直りする、小さな子の面倒を見てあげるといった場面がよく見られます。
遊びを通して友だちや周囲の大人との距離感をつかんでいくのです。友だちを気遣ったり、作ったものをほめたりほめられたりすることで人間関係が深まり、社会性が育まれます。
子どもは砂を何かに見立てて、その見立てを通して友だちとやりとりをしています。
砂の形が無限の想像を広げて、砂場全体にイメージを広げていくことで新しい創造を促します。
また、自分のもっている完成イメージを追求しながら、技術を組み合わせていく工程の中で、"美"への意識も生まれます。
子どもは砂の硬さや柔らかさ、どちらが大きいのか小さいのか、砂をすくう角度や力の強弱など、遊びを通じて物質の状態を理解していきます。
また、大人や友だちの姿をよく見て、まねをしたり比べたりすることで、自分の行動や今いる環境を理解し、言葉にして伝えることができるようになります。
例えば「砂は水を入れると固くなる」ということを、子どもたちは遊びながら理解していきます。
きれいな泥団子を作るために、最適な水の量や握る時の力の加減はどれくらいなのか…失敗を重ねながら何度も繰り返すことを通して、子どもは自然の法則を自らの身体を通して感じていくのです。
きれいに型抜きができたとき、自分の思い通りに道具を使いこなせたときなど、成功体験のひとつひとつが子どもの自信につながります。
また、失敗しても何度も挑戦すること、難しい道具へスキルアップするという経験も、子どもたちの集中や忍耐を養い、自己肯定感を深めていきます
子どもの発達における砂遊びの10の意義を紹介しましたが、決して、わが子に何かの力を身につけるために砂場遊びをさせましょう、ということではありません。
「自分でしたい!」という自発的な行動が、砂や道具、周りの人たちとの関係を作っていきます。そして「砂場遊びが楽しい!」「もっとしたい!」という気持ちが、子どもの可能性を広げ、成長を引き出してくれるのです。
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"砂場"という環境が子どもたちに与えるたくさんの影響がわかりました。次回は、子どもの発達段階ごとに、砂場でどんなことを楽しめるようになるのか、またそれが子どものどのような力を引き出していくのかを笠間先生にお伺いします。
同志社女子大学 現代社会学部 現代こども学科教授 笠間 浩幸
専門は幼児教育学。子どもの成長・発達に関わる環境作り、中でも「砂遊びと子ども」に特化し30年以上研究している。「釧路市こども遊学館」(北海道釧路市)の屋内砂場をはじめ、全国各地で砂場作りの企画・監修に携わる。砂場遊びのワークショップも全国で開催している。
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