砂場遊びの「楽しい!」には、子どもの無限の可能性を引き出すチカラが宿っている
過ごしやすい秋は、外遊びのベストシーズン!親子で公園遊びが楽しい季節ですね。
公園に着くと真っ先に砂場に行くという子も多い、子どもに人気の「砂場遊び」も、秋は熱中症の心配もなく、水を使って遊んでも冷えすぎず、夢中で砂と戯れることができます。
落ち葉やドングリなど、砂場遊びに使える自然物も充実しています。ぜひ砂場で子どもの想像の翼を思う存分、広げてあげたいですね。
砂遊びと子どもについて長年研究されている同志社女子大学現代社会学部の笠間浩幸先生によると、「砂場遊び」の大きな特徴はこの3つ。
0歳からできる砂遊びは、1人でも楽しめますが、2人、3人…と人数が増えれば、大きな山を作ったり、水路を走らせたり、作れるものの可能性が広がります。男女による好き嫌いの差もほとんど見られません。
砂遊びが子どもの発達に与える意義を、笠間先生は大きく10の要素に分けてとらえています。
・砂の色や形、水分量、温度、重さを、視覚と触覚を通じて感じ取れる
・砂の上を歩くだけで、深部感覚としてのバランスや関節、筋肉を総動員する
・子どもの体や動きによって変化する砂に、「ありのままの自分を受け止めてくれる」という安心感を見出せる
・安心して遊べる砂場は情緒の安定につながる
・足元が不安定な砂場で踏ん張って体を支えることで、筋力が鍛えられる
・転ばないように歩いたり飛び跳ねたりすることで、バランス感覚が養われる
・道具をうまく操れるようになる
・操作性をよくするためのプロセスが手指の巧緻性(器用さ)を高める
・砂遊びの場面で、生活を通じて学んだ言葉を再現できる
・自分へのつぶやきをストックすることで、自分を見つめる姿勢が育つ
・作りたいもののイメージを共有して作るため、友だちとの距離感をつかんでいく
・作ったものをほめたりほめられたりすることで、人間関係が深まる
・砂の形が無限の想像を広げ、新しい創造を促す
・完成イメージを追求しながら、技術を組み合わせていく行程の中で、"美"への意識が生まれる
・砂をすくう角度や力の強弱を工夫することで、物質の状態を理解していく
・人のまねをしたり、比べたりすることで、自分の行動や今いる環境を把握できるようになる
・例えば、「砂は水を入れると硬くなる」ということを、遊びながら理解していく
・きれいな泥団子を作るために最適な水の量や握るときの力加減を試行錯誤することで、自然の法則を学べる
・きれいに型抜きができたなど、成功体験が自信につながる
・失敗しても何度も挑戦することで、集中力や忍耐力を養える
砂場が子どもに与えるよい影響の多さに驚きますよね。
でもここで注意したいのは、わが子に何かの力を身につけるために砂場遊びをさせるわけではない、ということ。どんな遊びや学びにも共通することですが「したい!」という自発的な行動が、子どもの可能性を広げ、成長を引き出してくれます。
▼砂場遊びの魅力について詳しくはこちらの記事へ!
0歳ごろから大人になるまで楽しめる砂遊び。子どもの発達によって、どのように楽しめることが変わるのでしょうか。
笠間先生によると、大きく以下の5つのフェイズ(段階)に分けられるとのこと。
0歳ごろの砂遊びは、砂に触れたり、大人がする型抜きを見たりと、まず感覚的な出会いから始まります。 そして1歳ごろからは、砂に触れるよりスコップやバケツなど「道具」に興味が向かいがち。最初はただ振り回すだけの砂で遊ばない遊びであっても、やがて砂をすくう、入れるなど簡単な作業ができるようになり、手指の巧緻性を高めていきます。
2歳ごろになると、手で砂を掘ってトンネルを作る、型抜きで砂の形を変えるなど、砂に直接触れる砂遊びに移行します。バケツに砂を入れる量、加える水の配分など、何度も繰り返すことで、微妙な操作性の向上や科学的な物の見方が養われます。
3歳前後で、イメージと言葉が広げる砂遊び、いわゆる”ごっこ遊び”に夢中になります。「どうぞ」「おいしいね」などと友だちとやりとりすることで、想像もコミュニケーションも広がっていきます。
そして子どもの発達とともに、砂の表面に模様をつける、型を抜いたものを重ねて塔を作るなど、アートとしての遊びに変わっていきます。
※目安の年齢は子どもの砂遊びの経験によって大きく変わります。
子どもの発達段階に応じて、砂との関わり方は大きく変化します。
成長とともに砂遊びがどんどん発展し、さまざまな力が引き出されていく様を見守るのは、親としても楽しいものですね。
▼発達段階で変わる砂との関わり方と、遊びによって引き出される力はこの記事で!
子どもの砂遊びに付き添っている間、親はどうしても手持ち無沙汰になってしまう…という声も聞かれます。
そんなときは、”大人自身も遊ぶ”ことで、楽しい時間を過ごせます。
子どもの前で大きいものを作ったり、砂のアートに挑戦したり、あえて失敗する姿を見せることで、親子のコミュニケーションも活発になります。一緒に遊ぶときは、子どもの表情をよく見てみてください。
型抜き一個一個に対する想いを汲み取り、試行錯誤を重ねるプロセスで”できなかったことができるようになった”という変化に気づけるようになります。
砂遊びのために、わざわざ専用の道具を用意しなくても、家にあるものや、100円ショップやホームセンターで売っているもので大丈夫です。
例えば、プラスチック製の植木鉢の底を抜けば、大きな作品を作るための型抜きになります。かまぼこ板や切り開いた牛乳パックは、砂山をまっすぐ垂直にスパッと切る包丁に早変わり。左官屋さんが壁に塗るときのコテ(ホームセンターで300円程度から手に入る)は壁を作ったり、型で抜いた後に彫刻するのに便利です。
階段のステップを作るときは、牛乳パックの底を一段一段押し付けて、形成します。その後、側面に牛乳パックの包丁で切り込みを入れれば、「手すり付き階段」に! 砂場では、こんなものまで?という道具が、立派なアートのお供になるのです。
▼親子で砂場遊びをもっと楽しむ方法はこちらの記事へ!
何を作るのか、そのためにどんなものが道具として使えるのか。子どもと一緒にアイデアを出し合えるのも砂場遊びの醍醐味です。
失敗してもすぐ次のトライができるのもいいところ。
芸術の秋「次は何を作ろう?」ぜひ親子で砂場で作品作りに挑戦してみてください。
ライター 福田チヅコ
主として大手通信教育会社にて未就学児や小学生向けの教材や告知物の編集・原稿執筆を担当。
その他、女性誌やWEBでインタビューや対談記事を手がけている。
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