「先生って、どうしてあんなに冷静でいられるんだろう?」「私なんて、毎日怒ってばかりなのに…」 そんなふうに思ったことはありませんか?
保育のプロが子どもに対して“怒らない”ようにしているのは、感情をぶつけることが子どもにとって有効な関わりではないと知っているからです。 “怒る”とは、大人の感情が先に立ってしまっている状態。
「なんでこんなことするの!」「もうやめなさい!」と声を荒げるとき、実は子どもに何かを“教える”というより、自分の気持ちを吐き出している場合が多いものです。
一方、“叱る”とは、子どもに伝えるべきことを伝える行為。 これは、感情をぶつけることではありません。
「この行動は危ないよ」「相手が悲しむことだよ」と、子どもにわかる言葉で伝えることが大切です。 保育士たちはこの違いを理解したうえで、できるだけ“怒る”ではなく“伝える”を選んでいるのです。

保育士は子どもが何か困った行動をしたときに、それだけを見て判断しません。 「どうしてこの行動をしたのか」「背景にはどんな気持ちがあるのか」を考えることを大切にしています。
たとえば、友だちを押してしまった子がいたとします。 その瞬間だけを見れば「悪いこと」として怒りたくなるかもしれません。
でも、その子はもしかしたら「一緒に遊びたかった」「うまく言葉で伝えられなかった」だけかもしれません。 子どもが表現できる言葉はまだまだ少ない中で、体や行動で気持ちを伝えようとすることはよくあります。
それを大人が「だめなこと」と一方的に怒ってしまうと、「気持ちを出す=怒られること」と学んでしまうのです。 保育士はその子が何を感じ、なぜそうしたのかという“心の動き”に目を向けることで、次にどう関わるかを考えています。
大人も人間ですから、イライラすることはあります。 けれど、感情のままに抄して叱ってしまうと、子どもの心には「怖かった」という記憶だけが残ってしまいます。
保育士は、どんなときでも「まず自分が落ち着く」ことを意識しています。 たとえば深呼吸をしたり、少しだけ間をとったりして、怒りの感情に振り回されないよう自分を整えるのです。
「感情をコントロールできる大人がそばにいる」ことは、子どもにとってとても安心できる環境です。 大人の落ち着いた対応は、子どもにとって“心の安全地帯”となります。
これは保育の現場だけでなく、家庭でもいかせる考え方です。 「今、私は怒りそう…」と感じたときに、一呼吸おいて自分を見つめ直すだけで、子どもとの関係は大きく変わってきます。
保育者が怒らないもう1つの理由は「信頼関係こそが子育ての土台」と考えているからです。 子どもは、自分の気持ちを安心して出せる相手に対してこそ心を開きます。
そして、その相手の言葉だからこそ、素直に聞こうという気持ちにもなれます。 信頼関係は、日々の積み重ねで育つものです。
否定されず、受け止められる経験を重ねていくことで「この人は自分のことをわかってくれる」と子どもが感じられるようになります。 怒られるからやめるのではなく「大好きな人が悲しむからやめよう」と思える心を育てていくことが、保育士のめざす関わり方なのです。
ときに「怒らないとわからないんじゃないの?」「厳しさも必要なんじゃないの?」と疑問を持つ方もいます。 でも、怒らないことは決して“甘やかす”ことではありません。
むしろ、大人が冷静に、誠実に子どもと向き合い、時にはピシッと伝えるからこそ、子どもは本当に大切なことに気づいていきます。 「怒らなくても、きちんと伝えられる」「厳しさは、愛情をもって冷静に伝えることでも表現できる」
怒るのではなく叱ることで子ども自身が考え、感じ、行動する力を育てていくことができるのです。
「怒らない先生」は、ただやさしいだけではない「叱る先生」です。 子どもの行動の背景に寄り添い、信頼関係を土台にしながら、冷静に伝える力を大切にしています。
家庭でも、完璧に“怒らない親”をめざす必要はありません。 大切なのは「怒る前に立ち止まる」「気持ちを受け止めてから伝える」こと。
子どもにとって、安心できる大人の存在こそが心の土台になるのです。
ライター / 監修:でん吉(保育士)
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