子どもを叱らない先生は、決して甘いわけじゃないという話

子どもを叱らない先生は、決して甘いわけじゃないという話
「子どもを叱らないって、甘やかしじゃないの?」そう思われがちですが、そこには信頼と根気、そして成長を支える確かな意図があります。 保育士の視点からその理由をお伝えします。
目次

「叱らない先生」って、甘いの?やさしすぎるの?

「〇〇先生って、全然怒らないですよね」 「もっとビシッと叱ってくれたほうが、うちの子にはいいのに…」

保護者の方から、そんな声をいただくことがあります。 確かに、保育現場には“子どもを叱らない先生”がいます。

注意はしても怒鳴ったり、声を荒らげたりしない。 感情的に叱ることもない。

でもそれは、決して“甘い”からではありません。 子どもを叱らないという選択には、深い考えと丁寧な関わりの積み重ねがあります。

そしてその背景には「子どもを信じるまなざし」と「自立を支える覚悟」があるのです。

“叱らない”は放任でも容認でもない

まず最初に伝えたいのは「叱らない=何も言わない」「自由にさせる」ということではない、ということです。 保育の現場では、子どもが社会性を育んでいくためにやっていいこと・よくないことをきちんと伝える必要があります。

しかし、その伝え方が「怒る」ではなく「伝える」だったり「否定」ではなく「問いかけ」だったりするだけなのです。 たとえば、友だちに手が出てしまった子がいたとき。

「何やってるの!ダメでしょ!」と強い言葉で止めるのではなく「どうしたの?何があったの?」とまずは気持ちを聞く。 そのあとに「相手はどう思ったかな?」「どんなふうにすればよかったかな」と、子どもが自分の行動を振り返るきっかけを作ります。

こうした関わりは、一見すると甘いように見えるかもしれません。 ですが、これは時間も手間もかかるとても“根気のいる関わり”なのです。

叱ることで止まってしまう、子どもの本音

感情的に叱られたとき、子どもは表面的には行動を止めることがあります。 でも、それは“理解したから”とは限りません。

ただ「怒られたくない」「怖いからやめた」だけのこともあるのです。 叱られると、子どもは一時的に萎縮したり、うまく話せなくなったりします。

本当は何か伝えたい気持ちがあっても、それを言えないままになることもあります。 結果として、行動の“根っこ”がそのままになり、同じことを繰り返してしまうでしょう。

だからこそ、叱る前に聴くことで、子どもが自分の言葉で気持ちを話せるように促す。 これが,叱らない先生たちが大切にしているアプローチです。

それは子どもの甘えを受け入れることではなく「自分で考え、選び、行動できる子」を育てるための、まっすぐな対応です。

子どもを信じることは、簡単ではない

叱らない保育には、強い“信じる力”が必要です。 「この子は、自分でわかっていける力を持っている」

そう信じて待つには、大人側の忍耐と見守る力が問われます。 すぐに答えを教えない。

すぐに正解に導かない。 失敗しても、まずは自分で向き合えるように手助けをする。

これは、ただ“やさしい先生”というよりも「子どもを人として尊重している大人」の姿です。 子どもと向き合う姿勢に、責任と愛情が込められています。

保育の現場が目指している「育ちのかたち」

保育士として、環境に関わるたくさんの現場を見てきましたが、叱らない先生たちのまなざしはいつも温かく、しかし芯の通ったものです。

たとえば、「時間を守れない子」に対して、叱るのではなく「どうすれば間に合いそうかな?」と問いかける先生。 「乱暴な言葉を使ってしまう子」に対して、「どんな言い方なら相手がうれしいかな?」といっしょに考える先生。

子どもの“困った行動”の裏には、何かしらの理由があります。 その理由に目を向け、そこから育ちの芽を見つけていく。

それが、叱らない保育の本質です。 子どもを変えるのではなく、子どもといっしょに考え、成長していく。

これこそが、本当の意味での“しつけ”であり、対人スキルの土台を育てる関わりだと考えています。

まとめ

「叱らない先生」は決して甘いわけではありません。 子どもの行動の奥にある気持ちに目を向け、自分で気付けるように導くことは、大人にとっても簡単なことではありません。

だからこそ、叱らない先生たちは“信じて待つ”という、深くてあたたかな関わりを大切にしているのです。

ライター / 監修:でん吉(保育士)

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執筆者

保育士 でん吉

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