これからの未来を生きる子どもたちに不可欠な「折れない心としなやかな頭」。
大人でも強い心をもつことはなかなか難しいもの。家族で取り組めるレジリエンスについて、岡山大学の中山芳一先生に教えていただきます。
前回までの中山先生のお話で、大人も子どもも「振り返り」が大切だということがわかりました。
⇒【折れない心の育て方】子育てのモヤモヤ・イライラは悪くない!解消のための振り返りが親自身の強い心を育む!
⇒親が聞きがちな「今日どうだった?」は子どもが困るだけ!強い心を育むために必要な「振り返り力」は学力以上に習慣が肝心!!
今回はいよいよ、うまく感情コントロールができるようになるための具体的な家族の取り組みに話が進みます。
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大人にとっても、子どもにとっても大切な「振り返り」。自分の心の状態がわかるようになれば、心の状態をコントロールできるようにもなります。
そうすれば、自分で自分をほめることも、励ますことも、なぐさめることも、ときにはそこから逃げさせてあげることだってできますよね。これは、大人になってもとても大切なことではないでしょうか。
今回は、自分で自分の状態をモニタリング(観察)して、自分自身をコントロール(調整)することの発展版をやってみましょう。
ちなみに、みなさんは次の言葉をご存知ですか?
「喜びは分かち合うことで倍になり、悲しみは分かち合うことで半分になる」
これは、海外の有名なことわざの一つとして知られていて、私の好きな言葉でもあります。親子、友だち、恋人…共に分かち合える存在がいてくれることの幸せが、この言葉で見事に表されていると思います。
そうです!今回の発展版では「分かち合う」がキーワードなんです!
つまり、親子で分かち合えば、喜びは倍、悲しみは半分にすることができます。そのための方法を提案したいと思います。
カーリング女子日本代表のロコ・ソラーレのみなさん、2022年冬季オリンピックでも大活躍でしたね。"もぐもぐタイム"もばっちり取り上げられていました。
そんな中、彼女たちがよく口にしている「そだねー」以上に、私の耳に留まったのは試合中の「ナイス」でした。いいプレーをしたときだけでなく、ミスしたときでも彼女たちが声を掛け合う「ナイス」という言葉が、なんとも心地よく耳に残っています。いつもポジティブな心の状態をつくろうとしている彼女たちは、本当にさすがですよね。
でも、ちょっと待ってください!
彼女たちがそれぞれに「いいね」「ええやん」「グッドグッド」と言っている場合と、合言葉のように口をそろえて「ナイス」と言っている場合とではずいぶん違うような気がしませんか?
みんなが声を掛け合うときに同じ合言葉を使うことで、ますます意思の疎通ができるようになり、そのときの気持ちをより分かち合うことができるんですね。
この合言葉、家族の間でうまく使えそうですよね。そこで、この気持ちの分かち合うにつながる言葉を「分かち合言葉」と名付けてみました。
分かち合言葉は、お互いにどんな心の状態のときに、どんな言葉を使うかがわかっていなければ成立しません。そのために、まずは仕込みが重要となります。
たとえば、うれしいときにはどんな言葉にしますか?
怒っているときは?
悲しいときは?
もちろん、すでにある言葉を使っても大丈夫です。大切なのは、親子で一緒に共有されていること。ちなみに、「うれしいとき」「怒っているとき」「悲しいとき」の分かち合言葉は、自分の心の状態をモニタリングしたときの合言葉になりますので、プラスの感情を2倍にふくらまし、マイナスの感情を半分に減らしたいときに使ってみてください。
それでは早速…うれしいときは「うれぴー」がよいでしょうか(古めですみません)。
怒っているときには「オコだよ」とか、悲しいときには「ぴえんだよ」などが分かち合言葉になれば、そのままちょっぴり笑顔になれるかもしれませんね。もちろん、そんなに手を加えなくても、従来からある正しい日本語を使えば大丈夫です。
また、すべての心の状態を合言葉にする必要もありません。
親子でとくに共有したい心の状態や、親子で気をつけておきたいマイナスの感情を見つけて、それだけを分かち合言葉にされることをおススメします。
この分かち合言葉、家庭内でちょっとした「バズワード」になるかもしれませんね。
続いて、自分の心の状態をコントロールするための分かち合言葉です。
つまり、先ほどのどんな心の状態なのか(モニタリング)ではなく、どんな心の状態にしたいのか(コントロール)のための言葉になります。
ロコ・ソラーレであれば、いいプレーでもミスしたプレーでも心の状態を前に向かせるための「ナイス」だったわけですよね。昔からよく使われている「ドンマイ」も代表的な分かち合言葉ではないでしょうか。
さて、みなさんはどんな分かち合言葉をつくりますか?
ちなみに、私が気になっている言葉の一つに「ネバギバ」があります。なんか、響きが無性に惹かれるんですよね…。今度、小学1年生のわが子があきらめそうになったときや、逆にあきらめずにやり切れたときに使ってみようかなとチャンスをうかがっているところです。
中学1年生の娘が使っている「あざーっす」は、「サンキュー」か「グッジョブ」に変えたいのですが、現時点では押され気味です(私の方が3回に1回は使っちゃってます)。
モニタリング用もコントロール用も、分かち合言葉は「こういうときにはこの言葉を使うようにしよう」と改めて約束を交わさなくても共有していくことができます。お互いがいろんな場面で使っているうちに、次第に共有されるようになるからです。
そんな分かち合言葉が飛び交いながら、家族の心の状態をお互いにほめたり、励ましたり、なぐさめたりできるといいですね。
プラスの感情はもちろん、マイナスの感情を家族の力を借りながらコントロールしていくことで、折れにくい心を育んでいくことができるはずです。
岡山大学准教授 中山 芳一
1976年岡山県生まれ。岡山大学 全学教育・学生支援機構准教授。専門は教育方法学。大学生のためのキャリア教育に取り組むとともに、幼児から小中高学生の各世代の子どもたちが非認知的能力やメタ認知能力を向上できるように尽力している。9年間没頭した学童保育現場での実践経験から、「実践ありき」の研究をモットーにしている。『家庭、学校、職場で生かせる!自分と相手の非認知能力を伸ばすコツ』『学力テストで測れない非認知能力が子どもを伸ばす』(ともに東京書籍)ほか著書多数。最新刊は監修をつとめた『非認知能力を伸ばすおうちモンテッソーリ77のメニュー』(東京書籍)。
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