「しなやかな頭」こそ、これからの時代を生きる子どもたちに必要なもの。
非認知能力研究の第一人者、岡山大学の中山芳一先生と一緒に、おやこで取り組めるレジリエンス(=困難な状況にあってもしなやかに適応する力)の育み方を考えていきます。
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「折れない心」の連載もいよいよ最終回です。
そこで、いま一度第1回の内容を思い起こして、「折れない心」を持つためには「しなやかな頭」が必要だということを、改めて確認していきたいと思います。
まず、心と頭の関係についてですが、私たちはどうしても気持ちや感情は「心」で、勉強や思考は「頭」というイメージを持ってしまいます。
しかし、これは違うんです。
私たちにとっての心とは、本来は頭の中にあるからです。つまり、気持ちや感情、そして勉強や思考…いずれも脳の機能が必要不可欠。私たちの心は頭の中で生まれているものだとご理解ください。
次に、「しなやかさ」という言葉は、みなさんもよく耳にされる言葉ではないでしょうか。一言でいえば「やわらかさ」ですよね。つまり、頭をやわらかくすれば、心は折れにくくなるということになります。
それでは、頭をやわらかくするとはどういうことでしょうか?
言うまでもなく、頭そのものをやわらかくするのではなく、「考え方」とか「とらえ方」をやわらかくするということです。第3回の「”あたりまえ”を”ありがたし”に変えること」や第4回の「できないをできるに裏返すこと」が、まさにドンピシャですね。
この「やわらかい考え方・とらえ方」の大切さは、以前からよく言われていることです。
たとえば、下にある「ルビンの壺」をみなさんもこれまでどこかでご覧になったことがあるでしょう。このような「だまし絵」を通してとらえ方を変えてみるトレーニングができるわけです。
心が頭の中にあるのなら、私たちはトレーニングをして、その心(頭)を変えていくことができます。たとえば、この絵が壺にしか見えなかった人も、トレーニングによって向き合っている2人の顔を見つけることができるでしょう。”頭は鍛えることができる”というわけなんですね。
ただし、このトレーニングはふだんの暮らしの中で、自分が実際にどんな「考え方・とらえ方」をしているのかを振り返りながら変えていくことが中心のもの。マニュアルや特効薬のようなものがあればよいのですが、一人ひとりによって違うのでマニュアル化できないところがもどかしいですよね。
それでも、トレーニングを続けることで、ご自身やお子さん、そのほかの人たちに対する「考え方・とらえ方」は変えられるんだと気づけると思います。
そこで、みなさんが自分の頭(考え方・とらえ方)をしなやかにするための3つのコツをご紹介していきます。
みなさん自身もそうですし、お子さんにとってもきっと大切なコツになるはず。ぜひ、自分育てにも子育てにもご活用ください!
私たちはどうしても自分の中に思い込み=ラベルを持ってしまいます。
「あの人は〇〇な人だ」というラベル、そして「私は□□□□だ」「うちの子は△△△だ」…というラベルの数々です。このラベルは、ときとして私たちの変化や成長をジャマしてしまいます。
たとえば「私は引っ込み思案だから…」というラベルは、何か新しいチャレンジをしたくても、自分でブレーキをかけてしまうわけです。
そして、何よりもみなさんの頭(考え方・とらえ方)がラベルのせいでしなやかではなくなってしまいます。だから、できる限り貼ってしまったラベルをはがして、新しく貼り付けないようにしましょう。
とくに、自分やわが子にブレーキをかけたり、しなやかさを失わせたりするようなラベルは、"なる早で"はがしてくださいね。
自分の中にあるラベルをはがすと同時に、「自分は変えられる」と自分自身に信頼の言葉をおくってあげてください。
よく「私は年だし、簡単に変わることなんてできやしないよ」と言われるご高齢の方がいらっしゃいます。その一方で、「まだ気持ちだけは若いから…」と新しいことを次々と吸収され、使いこなされるご高齢の方もいらっしゃいます。
何が違うかは決定的ですよね。「自分は変えられない」というダメ出しの言葉をおくっているのか、「自分は変えられる」という信頼の言葉をおくっているのかの違いです。じつは、先ほどのラベルとよく似ているのですが、ここでは何よりも「私(あなた)は変えられる」という前向きな言葉をご自身やお子さんへおくってあげてほしいと思います。
3つ目のコツは、ともすれば私が一番大切にしていることかもしれません。
みなさんの中には、失くし物をしてしまったときに気になってしょうがない方が少なからずいると思います。私も、もちろんある程度までは気になって探しまくります。しかし、それでも見つからない場合は「まっいっか!」と自分に言い聞かせて、失くし物に応じた必要な手続きをとるようにしています。そうしなければ、失くし物のことがずっと気になってしまい、ほかのことに意識を向けづらくなるため、私の中では"前向きなあきらめ"だととらえています。
ポイントは、「もういいっ!」ではないということでしょうか。「もういいっ!」のあきらめは、とても後ろ向きだからです。
「あきらめ」はどうしてもネガティブな印象を持たれがちですが、これは言い換えるなら「切りかえ」です。
私たちはどうしてもこだわり続けることでしなやかさを失ってしまいます。これはとても残念なことだと思いませんか?
だから、あきらめ(切りかえ)たいのですが、後ろ向きではなく前向きでいたい!そのためのおススメの合言葉こそが「まっいっか!」です。
「こだわりが強くなりすぎているなぁ」と感じられたときに、ぜひこの言葉を使ってみてください。きっと気持ちが楽になり、凝り固まっていた頭の中が、スーッとしなやかになっていくことでしょう。
「まいっか!」の切りかえは子育てでも同じことが言えます。わが子へ「これをさせたい」「こうなってほしい」などという思いが強すぎるとき、それはこだわりの強さであり、頭の固さです。
その状態では、先ほどのだまし絵のように、壺が壺にしか見えません。そんなときこそ、「まっいっか!」です。
この子にはこの子のやりたいことがあるだろうし…この子は私と血のつながっている他人なんだし…などというしなやかな考え方・とらえ方を子育ての中にも取り入れることができそうです。
みなさん、この3つのコツを使って、もっともっとしなやかな頭になっていってください。
そして、大人であり親であるみなさんが、しなやかな頭になっていけばいくほど、それを見た子どもたちもしなやかな頭になっていくことが大いに期待できます。
それは、結局のところ、より多くの子どもたちが「折れない心」を持てることにつながっていくわけです。ぜひ、一緒に実践していきましょう。
岡山大学准教授 中山 芳一
1976年岡山県生まれ。岡山大学 全学教育・学生支援機構准教授。専門は教育方法学。大学生のためのキャリア教育に取り組むとともに、幼児から小中高学生の各世代の子どもたちが非認知的能力やメタ認知能力を向上できるように尽力している。9年間没頭した学童保育現場での実践経験から、「実践ありき」の研究をモットーにしている。『家庭、学校、職場で生かせる!自分と相手の非認知能力を伸ばすコツ』『学力テストで測れない非認知能力が子どもを伸ばす』(ともに東京書籍)ほか著書多数。最新刊は監修をつとめた『非認知能力を伸ばすおうちモンテッソーリ77のメニュー』(東京書籍)。
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