子どもの好みや機能性を重視した上質なランドセルを購入したい!という想いからどんどんと早まっているランドセル購入のための活動=「ラン活」。
コロナ禍での3回目のランドセル販売を迎え、ラン活の状況も変化している今、新入学生にはどんなランドセルが選ばれているのでしょうか?
創業125年の歴史を持ち「手縫い、手づくり、天然素材」の本格派のランドセルを制作している黒川鞄工房の代表・黒川由朗さんに、2023年4月入学者のラン活の傾向と、ランドセルの人気色や機能の最新トレンドを伺いました。
ラン活は工房系を購入するのか、量産系を購入するのかでスケジュールが変わります。黒川鞄工房をはじめとする工房系のランドセルでは、まず9月頃にカタログを請求して、2月下旬頃には展示会に足を運んで試着し、5月のGWごろには購入するという流れが一般的です。つまり年中児の秋からランドセル探しが始まり、年長クラスに上がった春には購入が完了しているというスケジュール感です。
黒川鞄工房が2021年10月に実施したアンケートによると、年中児から「ラン活を始めている」人は全体の約22%、始めようと思っている人を含めると、実に約6割のおやこが年中児からランドセル探しをしているという結果になりました。
10年前は小学生に上がる直前の3か月がランドセル販売の繁忙期とされていました。近年こんなにも早期化している理由には、6年間愛用できる高品質で高機能なランドセルを求める家庭が増えているという背景があります。
しかし、天然素材で作るランドセルは生産数が限られており、早期に注文しないと手に入らず販売が終了してしまうことも…。そこで検討時期を前倒しする家庭が増えているというわけです。
2023年4月入学者のラン活もそのスタートは早まっているようです。
「カタログ請求時期も販売開始時期も、例年よりも早くなっています。黒川鞄工房では2021年9月から紙のカタログ請求受付を開始し、3月17日から販売が始まっていますが、早いメーカーさんは1月から販売開始しているところもあります」(黒川由朗さん・以下同)
また、早期化するラン活の中、今年はコロナ禍になって3年目。
とくに1年目は緊急事態宣言などで展示会が延期されたり、開催されなかったりということもありラン活に大きな異変がありましたが、続くコロナ禍でオンライン展示会やサンプルの貸し出しなど新たなラン活の形が増えてきました。
今年も、日本各地でwithコロナの形での展示会がまさに今開催されていますが、例年と比べて購入や検討における変化はあったのでしょうか。
「以前は、展示会にいらっしゃる方は情報収集段階の方がメインでしたが、コロナ禍でもある今年はWEB上で情報収集を行いある程度希望商品の目星をつけた上で、購入の最終確認をするために訪れるというパターンが増えていると感じています」
また、コロナ禍ということで店舗は完全予約制になっているそう。
「人数は枠に対してできる限り少人数で行うようにしており、その結果1組のお客様に対して、スタッフがよりたくさんの時間を使うことができるようになっています」
コロナ禍では販売する側も、動画やLIVE配信などWEB使った情報発信を積極的に行うようなりました。それまでは展示会に行かなければわからなかった商品の詳細やサイズ感なども、家にいながら知ることができるようになったのも大きな変化ですよね。
以前は、混雑する展示会場でなんとかお目当ての商品を試し親子共に疲れ果てる…というイメージもあったラン活。販売員としっかりコミュニケーションが取れて、その機能などを熟知したうえで検討できるというのはありがたいですね。
では変化するラン活の中で、2023年4月入学者にはどんなランドセルが人気なのでしょうか?
「機能」「色」「素材」ごとに最新トレンド情報をチェックしていきましょう。
機能性で注目されているのは、「ランドセルを背負ったときの体感の軽さ」です。
昨今はランドセルの重さによる子どもの筋肉痛や肩こり、通学を憂鬱に感じるなど、心身に負担が生じる「ランドセル症候群」が社会問題になっています。
ランドセル本体は年々軽量化が進んでいることから中身の重量が問題視され「置き勉」の取り組みも始まっていますが、まだまだ荷物が多く子どもの負担が大きいのが現実です。
そんな中で親がランドセルに求めているのは子どもの心身の負担を最小限に抑えること。
アンケートでは「ランドセルに欠かせない機能は?」という質問に対しても、8割の保護者が「背負ったときに軽く感じる」と解答しています。
そのため、各ランドセルメーカーでも子どもの身体の負担を軽減し、少しでも軽いランドセルの開発が進められています。
しかし、ランドセル自体を軽くするのは数百グラムが限界。黒川鞄工房では、ランドセルの機能を落として軽くするのではなく、少しでも体感を軽くできるように企業努力を重ねているといいます。
「はばたく®ランドセルは、肩ベルトがはばたく翼のように立ち上がり、背負うと背中にフィットする"はばたく肩ベルト"を採用しています。天然皮革にこだわって作成していますので、合成皮革と比べるとどうしても少し重くなってしまいますが、背負った時に実際よりも軽く感じられるのが特徴です。
うしろに行きがちなランドセルの重心を身体の中心に近づけることで、姿勢良く背負うことができます。ほかにも、子どもの成長をサポートするための機能も充実しています」
ただ軽いだけではなく、各メーカーがそれぞれの技術を駆使し、子どもの心身の健康に配慮して制作していることが伺えます。
▲黒川鞄工房の「はばたく®ランドセル」シボ牛革 キューブ型 各78,000円(税込・送料無料)カラーは左がピスタチオ、右がグレージュ
親世代のランドセルの色は黒や赤がほとんどでしたが、今のランドセルはとにかくカラーバリエーションが豊富。たくさんの色がある中でどれを選ぶのかも迷いますよね。
黒川鞄のランドセルは、定番のブラックとレッドからブルー、グリーン、ピンク、キャメルなど、大きく分けて12色。2022年4月入学者の人気色TOP3を伺いました!
男の子は黒、紺、グリーン。女の子はチェリー、ローズなどのピンク系のほか、キャメル、ラベンダーが人気だったそう。
また、昨年秋のアンケートでは当時の年中児、年少児を対象に「何色のランドセルが欲しいですか」と聞いたところ、このような色が人気でした。
【年中】(複数回答)
男の子:ブラック(52.5%)、ブルー(41.5%)、ネイビー(20.5%)
女の子:ピンク(46.5%)、パープル(45.5%)、レッド(25.5%)
【年少】(複数回答)
男の子:ブルー(43.0%)、ブラック(41.5%)、ネイビー(21.0%)
女の子:ピンク(60.5%)、パープル(36.5%)、レッド(26.0%)
男の子はブラックとブルー系、女の子はピンク系とパープル系が圧倒的人気です。男の子ならグリーンやブラウン、女の子ではキャメル、ブラウン、スカイブルーといった、定番色以外の人気も高まっています。
昔は黒といえば一色でしたが、今はマットな黒からツヤありの黒、ステッチの色がアクセントになった商品もあります。
同じくピンクの種類にも、ローズ、チェリー、パステルなど、絶妙に異なるカラーが展開されていて、特に2023年はくすみカラーなど、大人っぽい色合いが注目されている傾向に。
昔は女の子の色とされていた赤にも、黒とのツートンやワインレッドなどさまざまな色が出ているため、今や男の子の10人に1人が赤を選択しています。
ランドセルの色選びにも多様性が感じられますね。
多様化しているのは色だけでなく素材も。
「黒川鞄工房では牛革、コードバン、人工皮革とさまざまな素材のランドセルを扱っていますが、昔から一貫して天然皮革にこだわっており、今後も環境に配慮した天然皮革を使った製品づくりをおこなっていきたいと考えています。
ランドセル市場全体では"とにかくできるだけ軽く"という流れができている中で、革ではない特殊生地を使用するメーカーさんも出てきています」
これまでは本革とクラリーノに代表される人工皮革の二択がメインだったランドセルも、今はナイロンや綿帆布、ポリエステル製など、革以外も多く販売されています。軽量でリーズナブルな素材は魅力的ではありますが、子どもが6年間使用するランドセルはやっぱり耐久性が気になるもの。
アンケートで「ランドセルを選ぶ際に魅力に感じるポイント、重視するポイント」を聞いたところ、ランドセル選びは「耐久性・機能性」が最も重視されていることがわかりました。
昨今はSDGsの観点から、高品質で耐久性に優れたものを永く、心地よく使用するという意識が強くなっています。
永く愛用できる天然皮革はサスティナブル。黒川鞄工房ではさらに卒業後のランドセルをリメイクすることで、子どもたちに「もったいない」を伝えるための「革育(かわいく)」にも取り組んでいます。
「リメイクできるものはミニランドセルとペンケース、今年からは財布も追加をしました。ミニランドセルが一番人気です。今後も生涯にわたって使えるランドセルとしてリメイクにも力を入れていきたいと考えています」
ランドセル選びをスタートさせる中で気になるのは、わが子に合うランドセルの選び方。
入学がまだ先で小学校生活がイメージしづらい中で、年中や年長になりたての子どもが実際に試着しても感想を明確に伝えられないのでは?と不安になりますよね。
ランドセル選びに失敗しないためには、親はどんなことを確認すべきなのでしょうか?また、子どもにはどのように確認して検討すればいいのでしょうか?
「展示会にいらっしゃる親御さんは、実際に子どもが背負ったときに軽く感じるか、身体に密着しているかという点を重要視されています。近年は主張がはっきりしているお子さんが多いので、軽さの面は声をかけて確認してあげるといいですね。
また、重さを比べる際には、荷物を入れた状態で比較することをおすすめします。特に低学年の時は、小さい体で5~6㎏にもなる学用品を運ぶことになります。ランドセルそのものの重さを比較するのではなく、5~6㎏のものが入った状態で腰などに負担がかからないかを重要視してあげてほしいです」
展示会や店舗では教科書や重りが用意されているところも多いよう。実際に背負うことになる重さで使用感を確認することで、永く愛用できるランドセルが見つかりそうですね。
***
2023年4月入学者のラン活傾向と、ランドセルの人気色や機能の最新トレンドを紹介しました。
近年ではゴールデンウィーク前に、人気モデルの人気色が売り切れてしまうことも多いです。今回取材にご協力いただいた黒川鞄工房でも2022年4月入学モデルは2021年5月18日にすべてのモデルが完売したとのこと。
早めの情報収集で、子どもにとってベストなランドセルを見つけてくださいね。
■本文中で引用しているアンケート調査の概要
黒川鞄 ランドセルに関する調査
調査方法 :インターネットリサーチ
日時 :2021年10月14日~10月15日
性別 :女性
年齢 :20~40歳
地域 :全国
対象数 :800名
ライター Ichika
山梨県生まれ。関西、九州での生活を経て11年ぶりに地元に戻りライター業をスタート。身内や友人に教育関係者が多く、たくさんのヒントを得ながら自分なりの育児を模索中。子育て経験をもとにした体験談やコラムも発信しています。
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