中学高校の理科・情報教員免許をもち、インスタグラムで「子供のなぜ?を育てる理科育児」を発信中の5歳と1歳の兄弟のママ、はるかさんに食にまつわる楽しいおやこ実験を紹介してもらう新連載がスタート。
第1回は子どもにとって身近な牛乳を使ったチーズ作りです。
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子どもにとって身近な「食」「料理」の背景には、理科・科学の視点がたくさんあります。
たとえば「卵はどうして加熱すると固まるの?」「パンはどうして焼くとふくらむの?」など。
料理の工程はまさに実験そのもの。その変化を目の当たりにすることは、子どもにとって大きな学びとなります。
また、リアルな実験で興味をもったときが学びを広げるチャンス!おすすめの絵本も紹介しますね。
今回作るのは「カッテージチーズ」。カッテージチーズとは、脱脂乳などを原料に作られるやわらかな食感のフレッシュチーズで、牛乳にレモン汁を加えることで手作りすることができるんです。
どうして牛乳にレモン汁でチーズができるんでしょうか?秘密は牛乳のたんぱく質とレモン汁の酸にあります。
まずは子どもが興味をもつように誘ってみましょう。 「よーし実験してみよう!チーズって何からできるか知ってる?」 あえて”実験”という言葉を使うことで、楽しい・ワクワクするイメージがふくらんでいきます。
■材料(作りやすい分量)
牛乳はできればたんぱく質が200mlあたり10g程度ある高たんぱくのものがおすすめです。牛乳パックに成分表示があるのでチェックしてみてください。
レモンは果物のレモンをしぼってもOKですし、どちらもなければお酢でも代用できます。
■道具 計量カップ、計量スプーン、小鍋、ボウル、ザル、キッチンペーパー、おたま
1.牛乳500mlを計量カップで量って鍋に入れる
数字がわかる年齢であれば、子どもに計量カップで量ってもらい、数字の感覚や単位に親しんでみましょう。
「牛乳を500mlまで入れてみようか」1回で量れないカップであれば、少し難しいですが「500mlだから、200mlを2回と100mlを1回入れてみよう」などと話しながら量ってみてくださいね。
2.牛乳を小さな泡ができるまで温める
鍋に牛乳を入れて、弱火~中火にかけ、ふち全体に小さな泡ができるまで温めます。60~70度が目安ですが、だいたいでOKです。
コンロの火は炎の先がなべ底に少しつくくらいが目安。沸騰させるとタンパク質が変性して固まらないこともあります。
3.火を止めてレモン汁大さじ2を入れる
「大さじ満タンを2回入れてね」と温めた牛乳にレモン汁を入れます。
鍋が熱くなっているので、子どもが入れる際は大人がしっかりサポートしてくださいね。
4.おたまでゆっくり大きく混ぜる
混ぜると牛乳が豆腐のような塊と水に分離しはじめます。
「うわぁ~!かたまりができてきたね!」と子どもがワクワクしてきますよ♪
5.キッチンペーパーをしいたザルにあける
1分ほどおいたら、鍋の中身全体をボウルにのせたキッチンペーパーをしいたザルにあけます。
そのままカッテージチーズと黄色い液体に分離できるまでしばし待ちます。
▲ザルの上にはカッテージチーズ
▲濾されてボウルに溜まった黄色い液体
6.キッチンペーパーの上から絞ったら完成
水分を手で絞ったら完成です!自然に水切りができる程度でぎゅっと絞りすぎないのがおすすめ。
できたカッテージチーズは、ほのかな酸味のあるさっぱりした味。そのまま食べてもおいしいですが、冷やしてはちみつやジャムをかけるとチーズケーキのような風味に!
サラダにかけたり、クラッカーにのせたり、パンに塗ったりして楽しんでくださいね。塩を少し入れても。
濾したときに出た黄色い水分は乳清(ホエー)と呼びます。タンパク質・ミネラル・ビタミンなどが豊富で捨ててしまうのはもったいないので、ぜひ活用を!冷やしたホエーにレモン汁とお砂糖や、ジュースを混ぜると飲みやすいですよ。
作ったチーズは冷蔵庫に入れて保存し、当日食べきってくださいね。
どうして牛乳からカッテージチーズができるのでしょうか?
その秘密はタンパク質と酸にあります。牛乳のタンパク質にはカゼインという成分が多く含まれています。牛乳の中でカゼイン同士は分散しています。そこへレモン汁のような酸性のものが入ると、カゼインの構造が変わり、カゼイン同士がくっついて固まります。それがカッテージチーズです。
ちなみにカゼインはpH値(酸性かアルカリ成果を表す尺度)が4.6以下になると固まり、水分と分離する性質があります。牛乳に加えたレモン汁のpH値は約3.0なので、これによって牛乳に含まれるカゼインが固まったんですね。
カゼインが酸で固まる際、加熱することで固まりやすくなります。ただ、温度が高くなりすぎると熱で変性が起こるため、沸騰させないよう弱火で60~70度までじっくり加熱することがポイントです。
牛乳には目には見えないけれど、「たんぱく質」という栄養がたくさん浮いているんだよ。すっぱいレモン汁を入れると、そのたんぱく質が固まってチーズになるんだよ。
実験の基本は、条件を変えて比較すること。そして、予想することです。正解はさておき、予想すること、考えてみることが大切なのでおやこでアレコレ話しながらやってみてくださいね。
条件を変えて比較するときのために、重さを量っておくのがおすすめです。
こちらは200mlあたりたんぱく質が10.2gの牛乳500mlにレモン汁を大さじ2加えた場合でした。いろいろ条件を変えるとできるチーズは変わるのでしょうか。
たとえば、タンパク質量が少ない牛乳だと、同じ牛乳の量からできるカッテージチーズは多くなる?少なくなる?
さあ、予想を検証してみましょう。
用意した牛乳はたんぱく質が200mlあたり2.6gと、先ほどカッテージチーズの作り方を紹介した牛乳の約1/4量のたんぱく質です。
同じ手順、牛乳を変えた以外は同じ条件でしたが…結果はカッテージチーズのかたまりができず、液体のままでした。カッテージチーズはできません。たんぱく質量が少ない=カゼインが少ないから十分にかたまりができなかったんですね。
牛乳が姿を変える食べ物は、ヨーグルト、アイスクリーム、生クリーム、さまざまな種類のチーズなどとてもたくさんあります。実験で関心をもったときがチャンス!ぜひ、牛のミルクがどのように姿を変えて、私たちがふだん食べている乳製品になるか親しんでみましょう。
大きな写真を中心としたおすすめ絵本を2冊紹介します。
あれもこれも牛乳が姿を変えたもの!文字や解説の量が多いので5~6歳向けですが、もちろん小さなお子さんでも写真中心に楽しめますよ。
『すがたをかえる食べもの④ 牛乳がへんしん!』
著者:香西みどり
発行:学研プラス
価格:3,080円(税込)
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こちらは、小さめのサイズで27ページとボリュームも少ないので、読み聞かせなら3歳ごろから楽しめます。わが家の長男も年中の頃に気に入って繰り返し読んでいました。
『ぎゅうにゅう だいへんしん!』
著者:中山章子、古島万理子
発行:ひさかたチャイルド
価格:1,320円(税込)
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牛乳とレモン汁またはお酢という冷蔵庫にある材料で、ちょっとした実験が楽しめて、おいしく食べられるのが楽しいですよね。
牛乳を豆乳に変えたり、レモン汁をお酢やリンゴ酢に変えても風味が変わって面白いですよ。今回は牛乳の種類を変えて比較実験をしましたが、酸の量を変えるのもぜひ試してみてくださいね。
ポイントは、なんでかな?なぜ?の思考をおやこで楽しむこと。たとえ親がその場で説明ができなくても、「一緒に調べてみようか」でOK!親が正しい答えを教えなくても、子どもの心になぜ?のフックがかかって、ゆくゆくの興味関心が広がります。
食実験を通した知的好奇心の種まき、やってみましょう。
はるか
「日常のなんで?を大切にする理科育児」を実践し、日々の生活で子どもの知的好奇心を楽しく広げるヒントをInstagramで発信中。子どもの頃から理科が好きで、高校は理数科。大学ではバイオテクノロジーを学び、大手メーカーSEを経て私立大学で人の成長を支援する。キャリアコンサルタントの視点から、子育てとわたしらしく生きることの両立を応援する団体「ラシク」を2021年1月に設立。
中学高校の理科・情報教員免許。5歳と0歳の兄弟を子育て中。
モットーは「ママの世界が広がると子どもの世界も広がる」
Instagram: はるかの理科育児日記
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