「算数が苦手にならない子に育てるにはどうすればいい?」
そのヒントを探して、幼児期から楽しく取り組める算数タブレット教材「RISU算数」の開発者である、RISU Japan株式会社 代表取締役の今木智隆さんにお話を伺うシリーズ第2弾。
前回の記事では、幼児期に「子どもの興味と算数を紐づける」ことで算数の土台を作ることができるとわかりました。そして日常生活には算数があふれているというお話も。では、もっとも身近な「おうち」にはどんな算数のヒントがあるのでしょうか。
編集部:おうちの中で算数に親しむ、具体的な方法を教えてください。
今木智隆さん(以下今木): まずおすすめしたいのがアナログ時計を置くことです。時計は小学校低学年でつまずく子どもが多い単元なのですが、今はデジタル時計が普及して、アナログ時計を見る機会が少ない子どもが多いんです。
デジタル時計は便利ですが、「60秒は1分」「午前と午後」「1時と7時は離れている」など時計の本質的な概念を理解しづらいもの。「今現在の時間」の情報だけしか得ることができないので算数に親しむためにはおすすめできません。
生活の中でアナログ時計を見ながら「あの長い針が6になったら歯を磨こう」「20分お片付けをやってから出かけよう」「1時になったら出かけよう。13時ね!」というように具体的な数字を出すと時間感覚が自然と身についていきます。
編集部:たしかに今はスマホも普及しましたし、テレビにデジタル時計を表示させることもできます。家に時計自体を置いていない家庭も多いですね。
今木:もしこれからアナログ時計を買うという場合は、必ず1~12までの数字が入ったものにしてください。数字の入っていないものはインテリアとしてはおしゃれですが、子どもは覚えづらく混乱しやすいので学習には不向きです。
1分ごとに数字の入った知育時計もおすすめですよ。
編集部:時計は子どもに強く意識させすぎず、時間を読むことを習慣にするといいのですね。ほかにも遊びながら自然と算数を身近に感じられるものがあれば教えてください。
今木:子どもって料理を手伝うのが好きですよね。料理も算数的要素が満載なのでいっぱい経験させてあげて欲しいと思います。
料理はものを数えたり、量ったり、素材を切ることで立体を想像したりすることができますし、何g、何cm、何mLなどの単位がたくさん出てきます。単位は小学生の「3大つまずき」のひとつなので、目で見てリアルに体感することはとても貴重な体験です。
編集部:たしかに大人でも「180mL」と聞いたときにそれがコーヒーカップ1杯の量なのか、お茶碗一杯の量なのかということは目の前にしないとイメージしづらいですよね。子どもならなおさらです。
今木:紙の上で「1000mL=1L」と学ぶより、牛乳パックを見せて「これが1Lなんだよ」と言いながら実際に料理をしてみたほうが、単位の感覚が身につきやすいんです。
ほかにも、にんじんを横に切ると断面が丸で縦に切ると三角になるなど、食材のカットで「図形」を学ぶこともできるので料理はとてもおすすめです。
編集部:時計も料理のお手伝いも、すぐに取り組めそうですね。簡単なことだと親も気負わずできるのがうれしいです。
今木:ほかにも…たとえばごみの日を待っている解体した段ボール。段ボールはそのまま立体の展開図になるので、ぜひ捨てる前に開いてお子さんに組み立てさせてみましょう。逆に組み立ててあるものを展開させるのもいいですね。
「図形」は算数で苦手になる単元の1つです。よく問題で立体を2次元(平面)で表した展開図が登場しますが、紙に書かれた平面だけを見て立体を想像するというのは、実はとても難しいことです。普段から段ボール遊びなどで平面から立体に組み立てたことがある子と、紙の上で想像だけでしか立体の組み立てをしたことが無い子だと、理解度は雲泥の差です。
編集部:捨てるはずのものだったらお金もかからないし、特別な道具がいらないのがいいですね。ティッシュの箱でもできそうです。
今木:ほかに折り紙も折り方によって形が変わるので図形を感覚的に学ぶことができますし、レゴブロックも縦にも横にも多くを積めて複雑な形を造形できるので、図形に親しむのにおすすめです。
普段からブロックで遊んでいる子は、積み上げたブロックの数を考えさせるような図形の問題でも「見えない部分にも隠れているブロックがある」ということに気づきやすい傾向があります。
編集部:こうしてみると、家の中にこんなに算数があふれていることに驚きます。親が算数に紐づけられるように常に意識することも大切ですね。
今木:そうです。本当になんでもいいんです。たとえばテレビでお天気ニュースを見ているときに「明日はマイナス1度だから寒いね」と言い続ければ、マイナスの概念などわからなくても「マイナス1度って寒いんだ」ということを覚えます。
効率よく教えようとしないで、気長に、日常生活の中に算数の感覚を身につけるヒントを散りばめてあげてみてください。幼児期にこの感覚をつかんでおくことは、先々の算数の問題を解くセンスに結び付いていきます。
***
家の中にも算数を学ぶヒントがあふれているんですね。少しの発想の転換で、色んなおうち遊びが算数の教材になり得るので、今日からぜひ意識してみてください。
次回は、お出かけ先でできる算数力アップについて具体的な方法を教えてもらいます。
RISU Japan株式会社 代表取締役 今木 智隆
京都大学大学院エネルギー科学研究科修了。
デジタルマーケティング専⾨コンサルティングファームのビービットに⼊社、 ⾦融・消費財・⼩売流通領域のサービスに従事する。2012年より国内コンサルティングサービス統括責任者に就任。
2014年、RISU Japan株式会社を設立。タブレットを利用した幼児から小学生向け算数教材でのべ10億件のデータを収集し、より学習効果の高いカリキュラムや指導法を考案。著書に『10億件の学習データが教える 理系が得意な子の育て方』(文響社)。
RISU 算数
ライター 松永あつこ
目が合うと即座に変顔をしてくれる5歳と、ごはんは口に運んでもらう主義の3歳の女の子のママ。主に育児・教育系メディアの編集&ライターをしています。趣味はファミキャン!将来の夢は家族でオーロラを見に行くことです。
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