うれしい、楽しい、悲しい、腹が立つ…たくさんの経験を通して、複雑な感情も持ち始めてくる幼児期。子どものさまざまな感情に、親としてはなんと声をかけてあげていいのかわからないというシーンもしばしば出てきますよね。
そんなときは、子どもの目線に経った、子どもの気持ちに寄り添うような絵本を、読み聞かせしてあげませんか? そこで、絵本や児童書に関する日本最大級の絵本ポータルサイト「絵本ナビ」の編集長・磯崎園子さんによる「子どもの気持ちに寄り添う絵本」連載をスタート。
今回は「ママに叱られてばっかり、怒られてばっかりの子ども」にむけての一冊です。
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朝はぐずぐずして起きられない、公園では服を泥だらけに。
家ではなかなかおもちゃを片づけない。
すぐに弟や妹とけんかする。
大声を出して静かにしない…
大人のいうことをきかない子どもは、どうしてもママやパパから怒られる回数が増えてしまいます。気を付けていてもついうっかり・・・そしてまた怒られる!
そんな風に、怒られているのはとっても悲しい。
ママやパパは自分のこと嫌いなのかな?
弟や妹のほうが大事なのかな?
ぼくって、私ってなんだかダメな子???
叱っている大人も大変ですが、そんなふうにわが子の気持ちも沈んでいるかもしれません。
磯崎さん、そんなときに子どもの気持ちに寄り添って、ママやパパは叱ってばかりいるけどあなたのこと大好きなんだよというような気持ちが伝わる絵本、ありませんか?
この絵本の主人公はテツコ・プー。いつも機嫌が悪くて、プーッとしているから。弟をつねってお母さんに怒られてもあやまらないし、もっと不機嫌になったりして。
「いつまでもプーッとしていると、ふうせんみたいにふくらんで、どっかにとんでっちゃいますよ」
まさか。でも、ほんとにテツコ・プーのからだが膨らんできて……ふわりと浮いた!そのまま窓から飛び出して、空高く飛んでいってしまったのです。どうする、テツコ・プー!?
こんな風に上手くふるまえない子っていますよね。眉をキリリとあげて、口元をぎゅっとへの字に結んで。そんな姿だって、子どもは可愛いものです。
だけどね、もしかしたら一番困っているのは当の本人なのかもしれません。その不機嫌な顔の下にどんな気持ちが隠れているのか、ママがちゃんと探してあげないといけません。いつも怒ったり、怒られたりばかりじゃ疲れちゃいます。
親子でちょっと深呼吸して、力を抜いて、口もとをちょっとだけ上げてみて。そしたら、怒りの気持ちがどんどん抜けて、ママの腕の中にストン。ほーら、テツコ・プーみたい! 仲良く一緒にこの絵本を読んでみてくださいね。
『テツコ・プー ふうせんになったおんなのこ』
(作:児島 なおみ 偕成社)
ぼくは、いつも怒られる。家でも学校でも、お母さんや先生に怒られてばかり。どうしてだろう……。男の子の揺れる心を、ユーモアとあたたかな眼差しで包み込みながら、丁寧に描きだします。
『おこだでませんように』
(作:くすのき しげのり 絵:石井 聖岳 出版社:小学館 )
ママに怒られたショックで、からだがバラバラになってしまったぼく。自分で元通りにしようとしてもうまくいきません。だけど、ママがやってきて……。大胆なストーリーだけれど、母と子のじんわり深い愛情を感じることができる1冊です。
『おこりんぼママ』
(作:ユッタ・バウアー 訳:橋本 香折 出版社:小学館 )
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叱ってばかりの毎日に、大人も反省。子どもも反省。だからこそ、絵本を読んでお互いの気持ちをわかりあえるといいですね。仲良く読めば、決して嫌いで怒っているわけじゃないこと、子どもにもきっと伝わりますよ。
「絵本ナビ」編集長 磯崎園子
絵本情報サイト「絵本ナビ」編集長として、絵本ナビコンテンツページの企画制作・インタビューなどを行っている。大手書店の絵本担当という前職の経験と、自身の子育て経験を活かし、新聞・雑誌・テレビ・インターネット等の各種メディアでも「子育て」「絵本」をキーワードとした情報を発信している。著書『ママの心に寄りそう絵本たち』(自由国民社)