小学校で行う「新体力テスト」のシャトルラン。親世代にはなじみがないので、どんなものか気になっている人もいるのでは?
まだ「パーソナルトレーナー」という職種が日本にほとんど浸透していなかった1997年にフィットネスの本場・米国シアトルにて学び、これまで述べ5万人以上のクライアントを指導してきた筋肉デザイナーの藤本陽平さん。キッズアスリートたちの指導経験もある藤本さんに、「シャトルラン」のコツを伝授していただきました。
文部科学省は国民の体力・運動能力の現状を明らかにするために、1964年から「体力・運動能力調査」を行っていましたが、国民の体位の変化やスポーツ医・科学の進歩、高齢化の進展等を踏まえ、1999年に調査内容を全面的に見直し、現状に合ったものに改定したのが「新体力テスト」です。
6〜11歳(小学校全学年)を対象としたテストでは「握力」「上体起こし」「長座体前屈」「反復横とび」「20mシャトルラン(往復持久走)」「50m走」「立ち幅とび」「ソフトボール投げ」の全8項目が実施され、項目別の得点表に基づき、総合的に評価されます。
シャトルランとは、20m間隔で引かれた2本の平行線内をシャトルバスのように行ったり来たりして走ること。 一方の線上に立ち、5秒間のカウントダウンの後、20m先にあるもう一方の線に向かって走り出します。制限時間は9秒。9秒後に電子音が鳴るので、それまでに20m先の線に達し、足が線を超えるか触れたら「1回」とカウントされます。
向きを変え、スタートを切った平行線を目指してまた9秒以内に走り切れたら、カウントは「2回」となります。
電子音の間隔は折り返し回数が7回までは「9秒」に設定されていますが、8−15回は「8秒」、16−23回は「7秒58」と約1分ごとに少しずつ短くなります。
速度を維持できなくなり走るのをやめたり、2回続けてどちらかの足で線を超えるか、触れることができなくなったときにテストは終了となり、最後に触れることができた折り返しの総回数が記録となります。
1回、電子音に間に合わなくても、余力があるなら諦めずに折り返しましょう!次の電子音までに遅れを取り戻せれば、テストを継続することができます。
親として気になるのは、わが子の結果はどうなのかということですよね。スポーツ庁が発表している令和3年度体力・運動能力調査報告書によれば、年齢別の20mシャトルランの平均値(折り返し数)は以下の通りです。
シャトルランで必要とされるのは、「持久力」です。
文部科学省は参考資料として「20mシャトルラン(往復持久走)最大酸素摂取量推定表」を公開していますが、それも持久力が最大酸素摂取量と密接に結び付いているからです。
最大酸素摂取量とは、1分間に体重1キロあたり取り込むことができる酸素の量最大値のこと。
身体を動かすエネルギーをつくるには酸素が必要なので、体内に十分な酸素を取り入れ利用することができる能力が高い人ほど持久力があると言えます。その摂取量が大きいほど長時間の運動が可能になる、つまりは持久力が続くのです。
ろうそくも空気中の酸素がある限り、燃え続けられますが、ろうがなくなり酸素を取り込めなくなると消えてしまいます。 人の体も同じように、多くの酸素を取り込める人ほど、長く運動し続けることができるのです。
持久力は、運動の中でもトレーニングで増やせる力の一つです。やればやるほど力がつくので、ふだんからかけっこやおにごっこなど息が切れるような運動をしている子はシャトルランの記録が伸びやすいでしょう。
シャトルランのベースとなる持久力を理解したうえで、記録を伸ばすにはちょっとしたコツも必要。とくに「呼吸」と「ターン」を意識してみましょう。 また袖の長い服や上着など、動きにくい服装でないか、しっかりと睡眠が取れて万全の体調かどうかなどもチェックしておきましょう。
シャトルランで必要なのは「オン」と「オフ」の切り替えです。子どもは良い記録を出そうと気負っていたり、緊張から全身に力が入りがち。体が緊張すると、いつもどおりの力が出せなくなってしまします。
深呼吸して気持ちを落ち着かせてもいいのですが、子どもには難しいもの。そこで、息を吸いながら2・3秒グッと力を込めて肩をすくめ、一気にストンと肩の力を抜いて息を吐く「筋弛緩法(きんしかんほう)」という方法で体の緊張をとるのがおすすめです。
これを2、3回繰り返すと、自然とリラックスした状態でスタートを切れます。
長く走り続けるためには、自分のペースを守ることも大切です。最初から飛ばさずに、最初の余裕があるうちは、音に合わせてのんびり走って持久力をうまく使いましょう。
シャトルランがふだんの動きと違うのは、ただまっすぐ全力で走るだけでなくターンがあるという点。音の感覚が短くなってきたら、素早いターンができるかも記録を伸ばすのに必要なテクニックです。
前に走るのは得意でも、横向きに走ったり素早く方向を変えたりするのはあまり経験がない子も。ターンの練習は、サッカーのウォーミングアップでもよく取り入れられているサイドステップ(横向きに走る)、クロスステップ(足をクロスさせて横向きに走る)などの練習も有効です。
無理なスピードで回ると転倒したり、足首を痛めたりするので、手前で少し減速し、負担のないターンを心がけましょう。
シャトルランで試されるのは「息が上がってから、どれくらい粘れるか」。 そのためには、日頃から遊び感覚で「息を上げる」運動を取り入れるのがオススメです。鬼ごっこ感覚で遊びながら楽しめる3つの練習方法を紹介します。
まずは、親子同時にスタートを切る「同時走」から始めましょう。いわゆる「よーいどん!」で走るかけっこです。 子どもが小さいうちは、少し手加減しながら走ってあげましょう。
ママやパパが少しゴールに近い場所からスタートし、子どもにハンディを与えます。少しずつハンディをなくしたり、増やしたりしながら子どもの「負けたくない」という気持ちを刺激しましょう。
タッチ走はいわゆる鬼ごっこのようなもの。ママやパパが前にいて、子どもにタッチされたら終わり。子どもは一生けん命息を切らして走るでしょう。年齢に合わせておやこの距離を調整して遊べます。
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子どもの体力テストの結果を見ると、つい記録ばかりに目が行ってしまいますが、あまり一喜一憂するのもよくありません。運動することを好でいるには小さいころから比べないことも大切です。 シャトルランは、鬼ごっこやかけっこなどでふだんから遊んでいる子が得意な種目。おやこで遊びながら、楽しんで記録を伸ばせるといいですね。
パーソナルトレーナー、筋肉デザイナー 藤本陽平
パーソナルトレーナー歴約25年、これまで延べ5万人以上を指導する。キッズアスリートへの指導経験も。現在は、東京都世田谷区(二子玉川)にて『股関節ストレッチスタジオNatural Movement』を運営。股関節に特化したパーソナルトレーニングの他、オンラインレッスンも幅広い世代から好評を得ている。
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ライター 福田チヅコ
主として大手通信教育会社にて未就学児や小学生向けの教材や告知物の編集・原稿執筆を担当。
その他、女性誌やWEBでインタビューや対談記事を手がけている。
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