母子手帳や育児書に書かれている「〇ヶ月でこれができる」という記述。 あれはあくまで統計的な平均値にすぎません。
クラスのテストで平均点が60点だったとき、100点の子もいれば20点の子もいます。 それと同じで、からだの発達も個人差の幅は想像以上に広いものです。
歩きはじめが8ヶ月の子もいれば1歳半の子もいます。 言葉が出るのが1歳の子もいれば3歳近くまでかかる子もいます。
早いから優秀、遅いから劣っているという単純な話ではありません。 目安はあくまで「この時期にチェックしてみましょう」というアラート機能であり、クリアしなければならないノルマではないのです。

周りの子どもが活発に動き回っているのに、わが子はじっと座っているだけ。 これを見ると「消極的だな」と心配になりますが、見かたを変えれば「観察力が鋭い」とも言えます。
自分から動くよりも、周りの状況を目で見て情報を集めることにエネルギーを使っているタイプです。 彼らは動かない間に「どうやって遊具を使うのか」「お友だちは何をしているのか」をじっくり分析しています。
インプットの時期が長い子どもは、動き出したときの習得が驚くほど早いことがあります。 止まっているように見える時間は、決して無駄な時間ではなく、脳内でシミュレーションを繰り返している重要な学習期間なのです。
からだの機能に問題がなくても、性格が慎重なために「できるけどやらない」という選択をしている子どもがいます。 石橋を叩いて渡るタイプの子どもは、絶対に転ばない自信がつくまで踏み出そうとしないこともあるでしょう。
言葉も同じで、完璧に発音できる自信がつくまで口に出さない完璧主義の子どももいます。 親から見れば「まだできない」ように見えますが、本人の頭のなかでは準備完了までカウントダウンをしている最中です。
遅いのではなく、確実性を重視するリスク管理能力が高いと捉えてみてください。 動き出しは遅くても、始めたら非常に安定しているのがこのタイプの特徴です。
子どもの成長エネルギーには限りがあります。 一度にすべてを伸ばすことはできません。
からだの発育にエネルギーを使っている時期は、言葉の発達が一時的に停滞することがあります。 逆に言葉が爆発的に増えている時期は、運動面での進歩が見られないこともあります。
からだと言葉はシーソーのように交互に伸びていくことが多いのです。 「歩くのが早い子どもは喋るのがゆっくり」という俗説がありますが、あながち間違いではありません。
今はどっちにエネルギーを注いでいるのかな、と観察することで、焦りは「今はこっちのターンか」という納得感に変わります。
SNSや公園で他の子どもと比べるのは「横」の比較です。 これはキリがありませんし、上には上がいます。
大切なのは「縦」の比較です。 1ヶ月前のわが子と比べてどうなっているか。
先週はできなかったことが、今日は少しだけじょうずになっている。 昨日は食べなかった野菜を1口食べた。
その小さな変化こそが成長です。 過去のわが子と現在のわが子を比べることだけが、正確な成長の記録になります。
他の子どもができるようになったことは「その子のニュース」であり、わが子の成長とは関係のないできごとだと思いましょう。
成長のスピードは100人いれば100通りのドラマがあります。 早く咲く花もあれば、ゆっくり根を張ってから大輪を咲かせる花もあります。
周りと比べて焦りそうになったときは、スマートフォンを置いてわが子の寝顔を見てください。 昨日より少し大きくなったその寝息だけが、誰とも比べられない確かな真実ですから。
ライター / 監修:でん吉(保育士)
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