育児書に書かれている情報は、過去の膨大なデータから導き出された平均的な傾向です。 「8時に寝かせれば朝までぐっすり」というメソッドも、その通りになる子が統計的に多かったというだけで全員に当てはまるわけではありません。
育児書のセオリーが外れることは日常茶飯事です。 本には「こうすれば泣き止む」と書いてあっても、目の前の子どもが泣き止まないならその瞬間における正解は「本の内容」ではなく「泣いている事実」の方です。
データよりも目の前の現実を優先して自分の判断を信じる勇気を持つことが、親の精神衛生を守る第1歩です。
とくに親を悩ませるのが睡眠の問題です。 「泣いても抱っこせずに見守る」というネントレ(ねんねトレーニング)が推奨されることがありますが、劇的に効く子もいれば火がついたように泣き続け、吐いてしまうまでヒートアップする子もいます。
気質が敏感な子や体力があり余っている子には、一般的なメソッドが逆効果になるケースも多々あります。 本に書いてあるからと無理に続けておやこともに疲弊するなら、それは「悪い薬」を飲み続けているようなものです。
「うちの子には合わなかった」とやめることは、決して挫折ではありません。 その子に合う別の方法を探すための前向きな損切りです。
「私はこれで成功しました」という個人の体験記は魅力的ですが、たまたまその著者の子どもとその方法の相性がよかっただけかもしれません。 おとなしい性格の子どもに通用したしつけが、活発で自己主張の強い子どもに通用するとは限りません。
他人の成功体験はあくまで参考資料の1つです。 「この人の家ではうまくいったんだな」と客観的に捉え、自分の家で試してダメなら「相性が悪かった」と割り切る。
育児書は正解が書かれた教科書ではなく、数ある選択肢が並んだカタログくらいに思うのがちょうどいい距離感です。

本を読む時間を、子どもを観察する時間に変えてみてください。 「眠くなると耳を触るな」「お腹が空くと声のトーンが変わるな」など。
これらはどんな名著にも書かれていない、世界でたった1つの「わが子の育児書」です。 一般的な離乳食の進め方とは違っても、この子はカボチャなら食べるという事実があるならそれが正解です。
マニュアル通りの完璧な食事を与えても食べなければ栄養になりませんが、マニュアル外でも食べてくれれば栄養になります。 まわりの声よりも、毎日接している親の「なんとなくこうかも」という直感の方が、的を射ていることも多いのです。
育児の難しいところは、昨日まで正解だった方法が今日は不正解になることです。 成長にともなって好みも睡眠サイクルも刻々と変化します。
本はアップデートされませんが、子どもは毎日アップデートされています。 昨日は抱っこで寝たのに今日は背中をトントンがいいという変化に気づけるのは、本を読んでいる人ではなく目の前の子どもを見ている人だけです。
固定された正解を探すのではなく、常に変化する子どもに合わせて親も柔軟にやり方を変えていく。 その試行錯誤のプロセスこそが育児の本質です。
育児書通りに育たなくても、子どもが今日笑ってごはんを食べていれば、それは大成功です。
もし本の内容と目の前の現実にズレを感じたら、迷わず本を閉じてください。 1番確かな答えは活字の中ではなく、あなたの腕の中にいるその温かい存在が教えてくれます。
ライター / 監修:でん吉(保育士)
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