今回ご紹介する『モンテッソーリ教育・レッジョ・エミリア教育を知り尽くした オックスフォード児童発達学博士が語る 自分でできる子に育つ ほめ方 叱り方』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)は、Amazonの子育てジャンル売れ筋ランキング1位のいま売れている話題の教育書(2021年4月14日現在)。
「そう!それが知りたかった!」と言いたくなる、3歳から5歳の子の子育てですぐ実践できるほめ方・叱り方がシンプルに解説されています。
内容を絞ったわかりやすい構成で本自体もとても読みやすく、あっという間に読み切ることができました。パッと読んですぐ実践したい、忙しい親にピッタリな一冊です。
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本は冒頭、著者からのこんな問いかけから始まります。
普段子どもと接するときに、無意識にこんな言葉を使っていませんか?「すごい!」「よくできたね!」「ダメって言ったでしょ!」
───使ってます。むしろだいたいそれです。
これらのほめ方・叱り方は、子どもの行動の善しあしによってその行動をコントロールしようとする「条件付きの接し方(条件付き子育て)」に当たるんだそうです。
この接し方を続けていると、愛情を注いでいるつもりが、子どもの自主性を奪ったり子どもに過度なプレッシャーを与えたりして、家族関係を悪化させるなどのネガティブな結果につながる危険性があるのだと言います。
このような子どもの行動をコントロールするための接し方を、子ども全体を見て子どもの気持ちを受け入れる「無条件の接し方(無条件子育て)」に変えていくことが大切だと言います。
そのためには「子どもには、一人でできる力がある」というように、子どもに対するイメージを見直すこと。そして、そのイメージを持った上でどうほめ・叱るのかがキーになるのだと言います。
私たち親が「すごい!」と思った行動をしたとき、「ダメ!」と静止してしまったとき、子どもの気持ちを考えていたかと聞かれると、私自身あまり自信がありません。
日々の子どもとのやりとりを振り返ってみると、大人が困るから、大人がこう望むからといった、大人都合のほめ方・叱り方だったのかも、と気づきました。
では、子どもの気持ちを考え受け入れようとする場合、どんなほめ方・叱り方をするべきなのでしょうか。まずほめ方は、とりあえず「すごい!」とただほめるのではなく、もっと具体的に、そして行動の結果ではなくその行動に至った過程や努力といったプロセスをほめるのが効果的なんだそう。
本書ではこの「プロセスほめ」を、さまざまな場面に当てはめたほめ方の例をたくさん紹介してくれています。例えば字が上手に書けたときに「すごいね!」とほめるよりも「すごく集中して何度も書いていたね!」とほめる。
自分に置き換えてみても、具体的に・過程に注目してほめられると、自分の行動や考え方の「何がよかったのか」が具体的にわかるし、「次はもっとこうしよう!」という意欲につながると感じました。
ほめ方のほかに、むやみやたらにコメントしないことも大切だそうで、心当たりが少し…。
子どもが遊んでいるだけなのに「何か声をかけなければ!」とつい「すごい、上手」と連発してしまっています。
子どもが集中しているときには見守って、何かを達成したときやうれしいことがあったときに素直にほめる。大げさである必要はなく、素直なリアクションが大切なんですね。
続いて叱り方ですが、普段の私は…といえば「ダメ!」「やめて!」と反射のように声を発しています。このような否定的な言葉を浴びせられ一方的な叱り方をされると、脳が脅威を感じるだけでなく、子どもの意識が「いかに罰を逃れるか」に向いてしまい、自分の誤った行動を振り返る機会を奪ってしまうのだそう。
叱り方もほめ方と同様に、子どもの気持ちや意思を受け入れ、プロセスに目を向けることが大切だと言います。本当は子どもは何をしたかったのか、何を言いたかったのかを理解し、具体的にフィードバックを与えるのが上手な叱り方なんだとか。
もちろん道路への飛び出しのような危険な場面では別ですが、親はイライラせず穏やかに子どもと向き合えるよう心に余裕を持つことが必要ですね。
さまざまな場面での叱り方の例もたくさん紹介されています。例えばジュースをこぼしてしまったときに「なんでいつもこぼすの!」ではなく「どうしたらこぼれずに済むかな?」と声をかける。
これらの例は、自分が持っている「叱る」イメージとは大きく違って、これをいきなりマスターするのはなかなか難しい…というのが正直な感想。
ですので、ここで紹介されている例は「100点満点の例」だと考え、余裕があるときにできそうなことから取り入れていく、ぐらいの意識でいいのかなと思いました。
「こうじゃなきゃ」と親が頑張りすぎて余裕をなくすのもよくないですから、それぞれのペースで子どもとの向き合い方を見直していけるといいですね。
教育論や方法論などの難しい考え方ではなくほめ方・叱り方に要点を絞って解説してくれているので、とてもシンプルでわかりやすく、子育てのヒントがたくさん詰まっていました。子どもとの関わりに迷い、何をすべきか悩んだときに、最初に読む一冊におすすめしたいです。
ほめる・叱るは道具もいらず、毎日発生する子どもとの関わり。
いきなり例のようなほめ方・叱り方ができなくても、少しずつ真似して習慣にしていけば、子どもの意欲は伸び、家族関係もよくなるだろうと想像できます。定期的に読み返し、また家族とも共有して、よりよい子育てに役立てていきたいと思います。
『モンテッソーリ教育・レッジョ・エミリア教育を知り尽くした オックスフォード児童発達学博士が語る 自分でできる子に育つ ほめ方 叱り方』
著者:島村 華子
発行:ディスカヴァー・トゥエンティワン
定価:1,650円(税込)
【わたし的評価】
満足度 ★★★★☆
実践度 ★★★★☆
読みやすさ ★★★★★
わかりやすさ★★★★☆
ライター 西方 香澄
徳島で生まれ育ち、大学進学を機に神戸へ。養護教諭・児童発達支援など教育に従事したのち独学でライティングをはじめる。夫・1歳になった娘とクリエイティブな毎日をつくるため、現在デザインも勉強中。
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