今年から、熱中症の危険度を表す「高温注意情報」がさらにわかりやすく、「熱中症警戒アラート」に置き換わりました。環境省と気象庁は気温や湿度などをもとにした暑さ指数(WBGT)が「危険」ランクの中でも、33以上が予想される場合に「熱中症警戒アラート」が発表されます。
気象庁では、「熱中症警戒アラート」が発表された場合、熱中症になりやすい高齢者、子ども、障害者の方々は十分に注意するよう呼び掛けています。
この週末には、愛知県・和歌山県・島根県・徳島県・沖縄県の八重山地方に「熱中症警戒アラート」が発表され、いよいよ梅雨明けを前に、熱中症への警戒が強まっていますよね。
熱中症とは、気温や湿度の高い環境に身体が適応できないことで引き起こされるさまざまな症状の総称のこと。 子どもは大人に比べて、体温も高く体温調節機能が十分に発達していないため、熱中症になりやすいと言われています。さらに子どもは自分の不調を訴えることが難しいため、親が熱中症についてしっかり知識を持っておきたいですよね。
小児科医の黒澤照喜先生に、子どもの熱中症の予防と対策について伺いました。
ー子どもは熱中症になりやすいと聞きますが、熱中症で受診する子は増えていますか?
子どもが熱中症になりやすいというのは事実ですが、実は診察の現場で重症の熱中症の子に出会うことはまれです。ただし、車の中に子どもを置き去りにすることは昼夜や天候にかかわらず熱中症による命の危険があるので絶対にしないでください。
子どもの熱中症が重症化するケースが少ないのは、熱中症の危険性が親や子どもに関わる人たちの間でも認識されていること、外で働く大人のように長時間暑い場所に留まらないためだと思われます。
ただし、今年は昨年と違って子どもたちが外出したり、一昨年と違ってマスクをつけていたり…と状況が違うため、熱中症は増えるかもしれませんね。親御さんが早期に気づいて、軽症で済んだので受診しないケースも多いと思われます。
ーそうなんですね。やはり知識は持っておかなければいけないですね。熱中症になりやすいタイミングなどはありますか?
熱中症を引き起こす条件には、気温が高い、湿度が高い、日差しが強いなどの環境条件のほか、急に暑くなって暑さに慣れていないなどの体の条件、長時間の屋外で遊ぶなどの行動の条件があります。
最近では、暑さ指数(WBGT)に応じて屋外の活動を制限し、熱中症予防に役立てている保育園や幼稚園も多いようです。熱中症は体が暑さになれていないタイミングで起きやすいとされますから、
これからの季節では
など、暑さからしばらく離れていたあとはとくに注意が必要です。
ー子どもが熱中症にならないために、親ができることを教えてください。
熱中症の予防には、大きく分けて①暑さに備える、②生活習慣を整える、③暑さへの工夫の3つがあります。
これから本格的な夏になり、気温が上がってきます。その前に暑さに体を慣らしておくことが大切です。だいたい暑くなる2週間前ぐらいから軽い運動などをして、徐々に暑さに体を慣らすといいでしょう。
今は外出を控えている人も多いので、無理をせず様子を見ながら行ってください。また、湯舟につかって適度に汗をかくことも有効です。目安は2日に1度程度とされています。
暑さに負けない体力を維持するためにも、涼しく快適な環境で、しっかり睡眠をとることも大切です。暑い中で遊んだ日には、眠そうならお昼寝をさせたり、夜早めに寝かせるように工夫してみましょう。
子どもは体温が高く、暑く感じがちなのでエアコンや扇風機だけでなく衣服でもこまめに体温調節をしてあげます。またバランスのよい食事をとり、体力が落ちないように気を付けてください。
常に飲み物を持ち歩いて、こまめに飲みましょう。OS-1やスポーツドリンクのような水分・塩分のバランスに優れている飲み物が熱中症対策には有効です。しかし、スポーツドリンクは糖分が含まれていて、ジュース代わりに飲むと食事がとれなくなり、かえって夏バテを起こしてしまうなどの弊害も。
子どもは深刻な塩分不足になるほどの熱中症のリスクは低いと思います。お水・お茶などででも十分でしょう。塩タブレットなども、それ自体は脱水対策にはならず、のどに詰まらせるリスクがメリットを上回るのであまり必要ありません。
冷却グッズを使う場合には、子どもが嫌がらないものを使いましょう。首元などの太い血管が体の表面近くを通っているところを冷やすのが効果的です。メントールで涼しさを感じる商品は、実際には熱は奪われないため冷却効果はありませんが気持ちいいと感じるなら使っても。
ーいざというときのために、熱中症の症状を教えてください。
熱中症には、重症度を表すⅠ度~Ⅲ度までがありますが、明確に症状で判断できるわけではありません。子どもは我慢しないこともあり、しっかりⅠ度程度の時点で対処していれば、通常はいきなりⅢ度の重症になったりはしません。
熱中症で発熱している場合には、軽症のうちであれば涼しいところにいて、水分を取れば体温は早々に平熱に戻ります。慌てずに対処しましょう。
・めまいや顔のほてり ・筋肉痛や筋肉のけいれん ・汗のかきかたがおかしい
子どもの場合、熱中症のほてりだと思っていた発熱(特に高熱)は、実際には風邪による発熱であることがほとんどです。また子どもは汗をよくかくので、汗だけで判断するのは難しく、脱水が進むと余剰の水分がなくなるため汗をかかなくなることも。他の症状と併せて総合的に考えることが大切です。
・体のだるさや吐き気、頭痛など
嘔吐しているときには無理に飲ませずに体を冷やしながら受診させてください。実際には、嘔吐していても熱中症である可能性は相対的に低く、他の病気(胃腸炎)などが見つかり、それに対する治療を行うことがほとんどです。
・意識障害、けいれん、手足が動かせない
・高体温(体に触ると熱い。いわゆる熱射病、重度の日射病)
実際には、子どもがⅢ度の熱中症になるケースはほとんど見ませんが、熱中症による40℃前後の高熱が見られる場合には、大至急救急車を呼び、体を冷やす応急処置を行いましょう。
ー軽症のうちに対処することが大切なんですね。子どもが公園など屋外で遊んでいる時、熱中症かも?と思ったらどうしたらいいでしょうか?
ポイントは体を休めて冷やすこと、水分を取ることです。夏の木陰の気温・湿度はそのときどきで変わります。その場にとどまるのが良いか、帰宅を含めて屋内に移動するのが良いのか、本人や周囲の状況を考えながら行動しましょう。
涼しい場所に移動したら、服をゆるめて、顔、両腕、足などを水で冷やします。霧吹きで体に水をかけたり、うちわや扇風機で風邪をあてると気化熱で温度が下がります。両側の首筋、わき、足の付け根など、太い血管がある場所を冷やすといいでしょう。
ー熱中症になった場合、翌日に幼稚園や保育園に登園してよいでしょうか?
単なる一時的な熱のこもりを除き、発熱している場合には熱中症による体調不良や、逆に体調不良による熱中症の誘発も考えられます。
一般的に朝は子供は元気に見えることが多いため、登園させたくなってしまいますが、原則休ませて小児科を受診して判断してもらうのが良いでしょう。基本的には、子どもが平熱で元気な状態が24時間続いたら登園OKです。
***
意外にも重症は少ないという子どもの熱中症。その裏には、ママパパたちがしっかり気をつけているという理由も大きいそう。例年の夏とは違い、今年はマスクをつけての外出が増えたり、暑さに慣れにくい状況なので、今一度気を引き締めておきたいですね。
小児科医 黒澤 照喜
帝京大学医学部附属溝口病院勤務。小児科医。東京大学医学部卒業。同大学医学部附属病院小児科、都立小児総合医療センターなどを経て、2017年より現職。10歳・6歳・3歳の3人のお子さんのパパで、子育ての現実に沿った優しいアドバイスが魅力です。
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