子どもの教育費は幼稚園から大学までの合計で、すべて公立の場合約784万円、私立の場合で約2261万円~約2421万円。
かかるであろう教育費の総額と、幼稚園から大学までそれぞれの段階にかかる教育費の特徴が大体わかったら、次はどう貯めていくか。
この大きな出費に対して、具体的にどのように準備していくべきなのか、八木さんに教えていただきます。
「【気になる子どもの教育費】小・中・高・大学まで一体いくらかかる…?”わが家の教育費プラン”どう考えたらいい?」
「教育費、みんなどう貯めている?途中で息切れしないために各年齢で知っておきたいことって?」
大学・短大・専門学校進学に備えて、遅くとも高3の夏ぐらいまでに、少なくても大学4年間(もしくは短大・専門学校等の2年間)の学費の半分を目標に貯めるとよいでしょう。
大学進学であれば、200万円~300万円になります。高校3年生というと、子どもの年齢では17歳になります。0歳で始めれば17年間ありますが、積立を開始するのが遅ければ遅いほど、積立期間が短くなるため、早めにスタートするのがよいでしょう。
“人生の貯めどきは3回”と言われており、①独身を含む子どもがいない時期、②子どもが小さい時期(小学校低学年ぐらいまで)、③子どもが巣立ってからの時期になります。
とはいえ、子どもがまだ生まれていない時期に、子どもの教育費の積立を始める方は、優秀というか、珍しいです。たいていの方は、子どもが生まれてから、「教育費いくらぐらいかな?」と考えるため、その時点では貯めどきは2回。
ただ子どもが巣立ってからの貯めどきは、教育費ではなく、老後資金としての位置づけになるため、教育費として貯めどきは、「子どもが小さい時期」のみになります。ここでどのぐらい貯められるかが、教育費マラソンにおいて、大事な点になります。
そして、その後は、中高校生となりますので、塾や習い事との兼ね合いを見ながら、積立額を減額しながら続けたり、高校においてはまったく積立できなかったりするご家庭もありますから、やはり、子どもの小さなときにある程度の教育資金を確保しておくとよいでしょう。
「教育費といえば、学資保険」と言われるほどに、教育資金の貯め方としては王道であった学資保険ですが、近年、その人気には陰りが出ています。
その理由は、戻り率が下がっている点にあります。戻り率とは、返戻率ともいい、たとえば100万円預けて、101万円になれば、1%の戻り率になります。しかし、現在の学資保険の中には、元本割れするものもあります。保険商品と考えれば当然なのですが、貯蓄と考えていると、「元本割れするなんて…」という衝撃が走りますよね。
利回りでは魅力が薄れつつある学資保険ですが、メリットは3つあります。
まず、毎月決まった金額が引き落とされるので、まとまった金額を準備しやすい点です。自分でこつこつ貯蓄するのが苦手な人には向いています。
2つ目に、学資保険は普通預金や定期預金に比べると簡単に引き出すことができませんから、満期保険金を受け取る日に、教育費として手にできます。
3つめに万が一、契約者が死亡してしまった場合は「保険料払込免除」の特約があり、契約時に決めた満期保険金を受け取ることができます。
そのほか、教育費を貯める目的にされる保険に、低解約返戻金型終身保険と言われるものがあります。低解約返戻金型終身保険とは、保険料を払っている間の解約返戻金を少なくすることで、保険料が割安になっている保険です。
加入したばかりの一定期間に解約をすると、解約返戻金が少ないのですが、その期間を過ぎてから、解約すると解約返戻金の金額が上がるため、一定期間を教育費として積み立てる期間と考えれば、教育資金の商品としても有効です。
また、その段階でお金が必要でなければ、そのまま貯めておき、終身保険としても使えるため、教育資金にするか別の資金にするか分からないと迷っている方に向いています。
また、投資信託を活用することもできます。
投資信託とは、プロに任せて運用ができる金融商品で、少額から、複数の株式や債券に預けることが可能です。
元本割れの可能性がある商品ですが、海外株式に分散するインデックス投資信託などは比較的利回りが期待できるので、お子さんがまだ小さく、積立期間が長期だという方は教育資金として始めてもよいでしょう。
ちなみに、時々驚かれますが、筆者は、現在小学6年生の娘の大学の教育資金は、すべて投資信託で準備しています。教育費といっても、長期なら、投資信託で運用するのも手です。
もし投資信託だけなら不安な方は、他の元本割れしない商品と組み合わせるのもよいでしょう。なお運用するにあたっては、今なら、つみたてNISAなど利益が非課税になる、税制優遇制度がありますので利用を検討しましょう。
いずれにしても、定期的に積立するのが重要なため、どの商品にするか迷う場合は、ひとまず、児童手当が入金される銀行口座にて自動積立を始めましょう。
自動積立とは、同じ銀行口座内で、普通預金と別枠にして貯めていく方法です。会社で財形貯蓄などやっていればそれでも構いません。
大切なのは、どの商品でやればいいか分からないので放置して数年経っていたという状態を避けることです。
日本は、OECD諸国の中で、家庭での教育費の負担が高い国と言われています。そのため、子育て世代の方は、しょっとしんどいなぁと感じながら読まれたかもしれません。
でも、教育費をたくさんかけたからといって立派な子になるわけでもありません。「わが子にどんな大人になってほしいか」という原点を忘れずに、進路などの節目で、親子で話し合ってほしいと思っています。
「子どもにお金の心配をさせたくない」と、これまで家庭でお金について話すのはタブーという風潮がありました。また、教育費をかけすぎて、将来、老後資金が足りなくなって子どもに迷惑かけてもいけません。
子ども自身がお金の管理ができるようになることも立派な教育の一つです。子どもが大学生になって、アルバイトや一人暮らしをする前に、「人生にかかるお金」を家庭で話すことから始めていけるといいですね。
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子育て世代には「教育費」の問題はなかなか辛い話かもしれません。
でも、そこから逃げていては始まりませんし、必要な時期は刻一刻と迫ってきます。
まずは、教育資金としていつまでにいくら貯蓄すべきかを明確にして目標を立てることから。それぞれの家庭に合った貯蓄方法を選んでいけるといいですね。
キッズ・マネー・ステーション
「見えないお金」が増えている現代社会の子どもたちに、物やお金の大切さを知り「自立する力」を持ってもらいたい、という想いで設立。 全国に約300名在籍する認定講師が自治体や学校などを中心に、お金教育・キャリア教育の授業や講演を行う。2020年までに1500件以上の講座実績を持つ。http://www.1kinsenkyouiku.com/
キッズ・マネー・ステーション代表/イー・カンパニー代表取締役 八木 陽子
2005年からお金教育・キャリア教育を普及する「キッズ・マネー・ステーション」を主宰し、現在、約300名の講師たちが所属し、全国の小・中・高等学校にて授業や講演などの活動実績が多数。2017年度から使用される文部科学省検定の高等学校家庭科の教科書に日本のファイナンシャルプランナーとして掲載される。
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