「ワンオペ育児」の「ワンオペ」は「ワンオペレーション」の略で、一人ですべての作業をこなすことを意味します。「ワンオペ育児」とは家事や育児を全て一人でこなさければならない状況のこと。もとは、牛丼チェーンのスタッフが「ワンオペ」だったことが社会問題化し、それが転じて2015年ころから「ワンオペ育児」という言葉が出てきました。
1歳未満の子どもを持つ核家族の30代男女を対象に行われた「チーム育児に関する調査」によると、夫婦で協力・分担して育児を行う「チーム育児」ができていない家庭は全体の90%にのぼることがわかりました。
また家事についても、夫の家事負担に比べ妻の負担が平均10個多いという結果に。特に母親がワンオペ育児を強いられている家庭が多いようです。
ワンオペ育児になるきっかけや、ワンオペ育児がつらい理由、その解消方法にはどんなものがあるのでしょうか。園を通して、多くの家庭を見てきた横浜市の認可保育所「ちいさなたね保育園」施設長・安江文子先生に伺いました。
では、どんなときにワンオペ育児に陥りやすいのでしょうか。最初からワンオペ育児だったというわけではなく、生活のある出来事をきっかけにワンオペ育児になることもあるようです。
まず物理的なワンオペ育児になるのがパートナーの単身赴任。仕事の都合で仕方がないですが、突然異動が決まることもあり、家事・育児や生活にかかる準備が十分にできないままワンオペ育児がはじまることも考えられます。
一緒に住んでいても、パートナーの仕事が忙しく朝早く出て夜遅く帰ってくる場合は実質ワンオペ育児に。帰ってくれば育児に協力してくれるパートナーでも、一人で育児をする時間が長くなると身体的・心理的負担が大きくなります。
周りに頼れる人がいないと、物理的にワンオペ育児になるだけでなく、気持ちを吐き出す機会がなく精神的な負荷も大きくなります。夫婦いずれの実家も遠い、転勤で地方から引っ越したなどの理由でワンオペ育児になるパターンがあるようです。
夫婦のどちらかがフルタイムで働いていてもう一人が専業主婦(夫)だと、必然的に家事・育児の負担が家にいる方に偏ってしまいます。また、育児休業から仕事に復帰したタイミングで、休業中に一人がしていた家事や育児をうまく夫婦で分担できず、そのままワンオペ状態になってしまうことも。
両親と同居している場合を除き、シングルマザーはどうしてもワンオペ育児になりがちです。働きながら育児をする人が大半なので、仕事の不調や体調不良時などに利用できる支援をあらかじめ知っておく、相談する人を決めておくなどの備えが必要でしょう。
ワンオペ育児のつらさには、まず育児のすべての責任が自分にある状態が精神的負荷になっていることが考えられます。特にはじめての子育てでは不安も大きく、二人の子どもなのに一人で見なければならない状態が続くと「なんで私ばっかり?」と思ってしまいますよね。
また、コロナ禍でリモートワークが普及しましたが、パートナーが家にいる時間が増えても育児に非協力的な場合、「いるのにやってくれない」というストレスものしかかります。このような精神的な「孤立感」がワンオペ育児のつらさを生んでいるといえるでしょう。
パートナーに限らず育児について相談できる人がいるといいのですが、専業主婦(夫)で保育園を利用していない人にとっては、地域の保育園や子育て支援施設の敷居が高く感じられるかもしれません。
事前に調べて準備をして子育て支援施設に行っても、職員や利用者になじめるかわからない不安もあるでしょう。ワンオペ育児の負担を軽くするための「育児仲間探し」をする余裕がない状況だと、さらに孤立感は増すと考えられます。
子どもを保育園に預けて働いている場合は、預けている時間は育児から解放されますが、イレギュラーなお迎え対応があったり、そもそも仕事に割ける時間が出産前と比べると短くなったりと、「前と同じようにできない」モヤモヤもあると考えられます。
割り振られる仕事内容が変わる場合もあるでしょうし、残業も物理的にできません。そのうえ退勤後すぐに家事・育児に取り掛からなければいけないので、身体的負荷も大きいといえます。
ワンオペ育児の負担を軽くするためにはどうすればよいのでしょうか。夫婦間や地域の資源の利用で解決できるかもしれません。家事も合わせてワンオペ育児の負担ですから、家事・育児双方に関わる方法を紹介します。
家事や育児の分担の偏りでワンオペ育児になっている要因に、パートナーとのコミュニケーション不足がある場合もあります。「ちょっとしんどいな」と思ったら、改めて話し合いの機会を設けてみましょう。
家事・育児の分担を話し合う際には、まず家事・育児でやらなければいけないことを書き出し、可視化するのがおすすめです。家庭でおもに妻の負担になりがちな「名もなき家事・育児」も書き出してください。そして改めて分担の現状を「見て」みると、「こんなにやってくれてたの?」とその偏りに気づいてくれるかもしれません。
それから、分担を割り振るときにはなるべく具体的に。例えば「週2回はゴミを出してほしい」よりも、「月曜日と水曜日はゴミ出しお願いね」と伝えた方が、やったかどうかの確認や習慣化がしやすくなります。もちろん、あとから揉めないよう決めた分担は紙やデータとしてしっかり残しておきましょう。
さらにできるなら、イレギュラーな対応も考えておけると安心です。例えば長期の出張が入ったとき、どちらかが体調を崩したとき、子どもの長期休みなど、想定できる範囲で話し合っておきましょう。
出産して子育てしながら働くのは人生初のことでしょう。もちろんパートナーにとってもはじめてですから、子どもが生まれる前のようにはいかないと認め、お互いはじめてだから「しょうがないね」と言い合えるよう意識して話し合いの機会を持つことが大切です。
特に共働きの家庭では、家事・育児の外注を検討してもよいかもしれません。家事代行サービスやベビーシッターなど、月に数回でも利用できると精神的負担が軽くなります。信頼できるサービスが見つかれば定期的な利用も考えましょう。
このような外注サービスは、利用のための登録、説明を聞く時間など準備が大変で踏み出しにくいと思うかもしれません。パートナーと相談して手配をお願いするなど、夫婦で協力して準備を進めましょう。
上記のサービスのほか、家事・育児の負担を軽くしてくれる家電を導入する手もあります。食器洗い乾燥機や自動調理器、ロボット掃除機など、導入に費用はかかりますが、子育てが大変な今だけと思って自分と家族のために購入してもよいかもしれません。同様に、食事のデリバリーサービスや外食も検討してみてください。
パートナーとの話し合いは先に述べましたが、子どもが大きくなってきたら子どもも交えた家族での話し合いをしてみましょう。3歳ごろには自分の意思がはっきりとありますから、わかる言葉で選択肢を出すなどして聞いてみてください。
5歳頃になると自分から言葉で意見を伝えられる子も多いでしょう。夫婦間では「押し付けにならないかな」と思うことでも、子どもが「お迎えはパパがいいな」と言ってくれれば頑張れますよね。
5~6歳になると、家事の分担にも子どもが入っていけるかもしれません。ゴミを集める、テーブルを拭くなど、できることからお願いしてみましょう。着替えやトイレなど自分のことを自分でしてくれるだけでも助かりますよね。「やってくれるとママ助かるな」「やってくれてありがとう」と気持ちを伝えれば、進んでやってくれるかもしれませんよ。
そうはいってもなかなか簡単にはいかないもの。サクッと解決できればそもそも悩んでないですよね。それでも生活は続いていきますから、サバイブするための優先順位で割り切って生活することが必要かもしれません。
私が考える優先順位は、「寝ること」「食べること」「適度な清潔」の順です。
まずはしっかり寝ること。疲れているとイライラしますし、子どもにも伝わってぐずって泣いてしまいます。寝かしつけで一緒に寝てしまってもOK。寝て疲労が回復すれば、子どもも機嫌よく登園してくれるものです。
2番目に、食べること。手抜きでも買ったものでも外食でも、おなかが満たされれば安心感がわきます。宅配の食事サービスなども積極的に使っていきましょう。
そして最後に、適度な清潔。「適度」でいいと割り切ることが大切です。多少部屋が汚れていてもなんとかなりますし、お風呂を飛ばしてもOK。あせもはできるかもしれませんが、治ります。
このように、生きるための順番を意識して乗り越えていきましょう。子どもはどんどん成長するので、振り返ってみればそんなに長い時間ではないはず。
そして、何をするにしても人と比べないことです。インスタグラムで見るような見栄えのいいごはんじゃなくていいのです。それよりも自分と家族が機嫌よく笑って過ごせることのほうが大切です。それが回り回って、子どもにもいい影響を与えていきますよ。
子どもが大きくなるほど、パートナーと一緒に家事・育児に取り組む姿勢が大切です。子どもは身近な大人の姿をよく見ていますから、どちらかがしんどそうだったり笑顔がなかったりするのはよくありません。
協力して取り組み、感謝し合っている姿を見せれば、子どもは自然と「協力して家事・育児に取り組むのは当たり前のこと」と認識してできるようになっていきます。
子どもが小学校に入ると子育ては楽になるかと思いきや、意外と精神的なフォローが大変になってきます。宿題をするように促したり、次の日の準備の確認をしたり、行事や習い事の準備もあるでしょう。
そういった生活の変化に合わせて、家事・育児の分担を改めて話し合いコミュニケーションをとれるといいですね。
ちいさなたね保育園・施設長 安江文子
横浜市で子育て支援を行うNPO法人びーのびーので、子育て広場などの勤務を経たのち、2015年より保育園「ちいさなたね保育園」で園長(施設長)を務めています。子どもへの温かなまなざしを持ったアドバイスが魅力です。
ライター 西方 香澄
徳島で生まれ育ち、大学進学を機に神戸へ。養護教諭・児童発達支援など教育に従事したのち独学でライティングをはじめる。夫・1歳になった娘とクリエイティブな毎日をつくるため、現在デザインも勉強中。
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