"もうやめなさい!""あなたが悪い!"はNGだった…【きょうだいゲンカ】親の「いい介入・よくない介入」
夏休みに入り、きょうだいで過ごす時間が増えて、ケンカが増えました。1日中物を取り合ったり、どっちが先だったと言いあったりと、争いが絶えません。
きょうだいゲンカが起きにくくなるようにあらかじめできる予防策、親が日頃から心がけておくことはあるのでしょうか。
夫婦がいい例ですが、2人以上の人が同じ屋根の下で生活をすると、大なり小なり必ずいさかいが起こります。だからきょうだい同士でケンカが起こるのは当然で、ゼロにするのはなかなか難しいことです。
でも、「できるだけ起こらないようにする」「起こっても小さなケンカになるようにする」ことは十分可能です。そのヒントをお伝えしたいと思います。
「顔を見合わせればケンカが起こる」というほどよくケンカをするきょうだいは確かに多くいますが、実は「ケンカはめったに起こらない」というきょうだいも多くいます。テレビで有名なタレントさんやスポーツ選手などの話の中でも、「昔からきょうだいは仲良く、ケンカはそれほどしなかった」という話をよく聞きませんか?
その差はどこから出てくるのかと言うと、私は普段の親の関わり方がカギを握っているように思います。親次第でケンカが起こりにくいきょうだいにするのは可能なのです。
では、まず、きょうだいゲンカが起こりやすい親のパターンを2つご紹介します。
大人でも子どもでも、相手が誰であれ、怒られると心が穏やかにいられなくなります。ストレスがたまります。
親が叱ったり怒ったりするのは子どものことを思ってのことであり、ある意味いいことではありますが、怒りすぎはよくありません。
子どもへのお小言やちょっとした文句なども「怒る」の範疇にいれると、1分に1回、1日にすると三桁の回数怒っていることになる親を私はよく見ます。
となると、きょうだいがいる場合は、当然よく怒られる子どもは小さなストレスがたまりやすく、その解消のための矛先が他者に行きやすくなります。
きょうだいがいる場合、親は平等に接しているつもりでも、実はどちらかに肩入れしている場合が多いもの。
それは必ず普段の言動となって現れます。
たとえば2人が同じことをしても、上にはきつく叱り、下ならやさしく叱る、もしくは何も言わないなど、された方にはわかる差があるものです。
出先で、上には買ってあげたけど下には何も買わなかった、なども、子どもはいつまでも覚えていたりします。
何でもきょうだい同じになるようすることは難しいものですが、日ごろから「平等」を意識しておかないと、不公平感や嫉妬心のようなものを常に持つようになり、それがケンカの起こりやすい原因となることもあるので気を付けたいものです。
では、親は普段からどうしておけばよいかと言うと…ポイントは2つです。
「抱っこ」をせがむと抱っこをしてくれた、店先で風船を配っていると一緒に並んでくれた、靴を揃えて脱いだらほめてくれた、といった些細な満足感をたくさん味わうと、「満たされた感」がたまっていき、そこに多少のストレスが加わっても我慢ができるようになったりします。
きょうだい間で少々何かあっても「まあいいか」と思う余裕ができ、ケンカにまで発展したりすることが減っていくのです。
私は日本のどこで大災害が起きても、暴動や大混乱が起こらないのは、私たち日本人は普段満ち足りた生活をしているからだと思っています。「こんなときくらいは我慢をしよう」と思えるようになり、他者への優しさまで出てくるのです。
子どもを甘やかすのはよくありませんが、「甘えを受け止める」のは大切です。
きょうだい全員の甘えをうまく受け止め、叶えてあげても不都合が起こらないような小さな要求はできるだけ叶える…普段からそんな接し方をし、子どもの「不満袋」ではなく「満足袋」をいっぱいにしておくと、きょうだいだけでなく、誰にも優しくできる子どもになっていくものです。
例えば、子どもが「お茶ちょうだい」と言ったときに「はい」と言ってあげるだけでも、「お茶ばかり飲まなくていいの!」と言ってあげなかったときとは比べものにならない満足感を味わいます。
また、1000円の玩具を「2人で仲良くね」と渡せば、不満もケンカも生じやすくなりますが、500円の玩具を2人それぞれに与えれば、お互い満足感から、かえって仲良く遊んだりします。
子どもを叱るときはもちろん、名前を呼ぶとき、何か尋ねる時、用事を頼むときなど、子どもに何か言葉をかけるときに優しく言えず、つい怒っているようなきつい言い方になってしまうことはありませんか?
話す口調がきつい人と一緒にいると、その人もきつくなると言われますが、子どもも同じです。それが子どもからやさしさを奪い、きょうだいにもきつい言い方になったり、冷たく当たったりするようになることがあります。
例えば、きょうだいが遊んだおもちゃを片付けさせるときでも、「早く片付けなさい!」「何してるの!」という言い方だと、もうそこできょうだいゲンカが起こりやすくなります。
子どもが何をしたとき、特に優しい言い方ではないけれど、決して怒鳴ったりしない、穏やかな言い方で言う親御さんをよく見かけますが、その子どもたちも穏やかで、ケンカも起こりにくいきょうだいであることが多いのは私の気のせいではないような気がします。
実は、私は妻と言い合うケンカをよくします。子どもの前でもします。
なのに、今32歳と31歳になる息子たちがケンカをする場面は、この30年間、一度も見たことがありません。とても仲がいいのです。「夫婦がよくケンカをすると、子どもも真似をする」というのはウソだなと思いました。「ケンカするほど仲がいい」とはよく言われる言葉ですが、本当に仲がいいなら最初からケンカが起こらない、ということが息子たちを見てわかりました。
彼らがケンカをしない原因は、よくわかりませんが、夫婦とも保育士で、子育てに関しては、子どもには今回お伝えしたような関わり方をしてきたからかな、と思っています。
▼こちらの記事では"きょうだいゲンカの親の関わり方"を紹介しています!
こどもコンサルタント 原坂 一郎
1956年、神戸市生まれ。関西大学社会学部卒業。神戸市内で23年間6か所の保育所勤務を経て、2004年「こどもコンサルタント」に。笑いと笑顔をキーワードに、子どもおよび子育てに関するさまざまな研究・執筆・講演を全国で展開。『読むだけで子育てがうんと楽しくなる本』(春陽堂)、『男の子のしつけに悩んだら読む本』(すばる舎)ほか著書多数。
Facebook:@IchiroHarasaka
http://harasaka.com/
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