夫にもっと積極的に育児に参加してもらいたいです。
決して子育てに非協力的なのではなく、頼んだことはやってくれます。でも、頼まないと指示待ちで何もしません。たとえば園への送りを頼むと、私がすべての支度が終わって「はい、いってらっしゃい」と言うまで手持ち無沙汰にふらふらして、何もせずに待っているだけ。そんな姿についイライラしてしまいます。
たくさんのパパ・ママを見てきた原坂先生、どうしたらいいのかぜひアドバイスをお願いします。
「もっと子育てに関わってほしい」
「言われなくても動いてほしい」
・・・
これは多くのご家庭の"あるある"ではないでしょうか。世の"夫族"はどうしてそうなってしまうのでしょうか?もっと積極的に動いてもらういい方法はないのでしょうか?今回は、同じ夫族の一員としてお話ししたいと思います。
確かに多くのパパは、私が見ていても、家事でもなんでも家庭では指示待ちの姿勢が多いと思います。
でも、そんなパパでも、会社ではテキパキ仕事をこなし、指示待ちどころか、的確な指示を部下に与えたりしていることが多いものです。つまり、根っからの「指示待ち人間」になってしまっているわけでは決してないのです。
ではなぜ家では自分の妻から言われないと動けないのでしょうか?
原因はいくつか考えられます。
まずは、「何をどうやればいいか本当にわからない」ということです。
たとえば、保育園や幼稚園に通う年齢の子どもがいるご家庭では、家を出るまでにやるべきことがたくさんありますよね。
子どもを起こす・トイレに行かせる・顔を洗う・着るものを選ぶ・着替えさせる・朝ご飯を用意する・食べさせる・連絡ノートに記入する・園に持っていくものを通園バッグに入れる…などなど。その一連のことはママにとっては当たり前でも、パパにとっては本当にわかっていないことが多いようです。何時に起こせばいいかさえわからないパパも多いはずです。
それらのすべてを完全にパパに任せると、その1つか2つが抜け落ちてしまうことも。
実は男性というのは、生活に関することは女性に比べるとおおむね無頓着な人が多い傾向にあると、私は考えています。自分に関することでも、「あ、髭を剃り忘れた」「あ、ハンカチを忘れた」となる人は多いもの。
でも「会議の書類を忘れた」「お客様と会う時間を忘れた」は滅多にないはずです。生活的なこととそれ以外のこと(仕事や趣味)では気の配り用が全く違うといってもいいでしょう。
一方女性は、生活に関することや子どもにまつわることは、どの1つをとってもとても重要なことと考えている人が多いものです。
お互い、そこを理解し合うことが、まず大切だと思います。
決して「する気がない」のではなく、特に子育てのこまごまとしたことでは、何が大切か、何をすべきか、がわかっていないことが多く、結局「何をどうやればいいかわからない」ことが多いパパ。
そんなパパに言うのもしんどい…というのも理解できますが、わからないのですから、残念ながら解決への近道は、やはり子どもと同じように、その都度、伝えたり言ったりするしかないようです。
パパが、言われなければ動いてくれないもうひとつの理由。
それは「やっても否定されることが多い」ということかもしれません。
子どもに服を着せようと思ったら「あ、その服は着せないで」。
洗濯物を取り込もうとしたら「まだ干しといて」。
部屋に掃除機をかけようとしたら「さっきしたのに」。
夫の行動や、"やったこと"に対して、無意識のうちにダメ出しをしたり、言い方は優しくても結局は否定的なことを言ったりしている場合が、どのご夫婦を見ていても、けっこう多くあります。
人は誰でも、自分のやり方を否定されるのは嫌ですよね。
家事でも子どものことでも、本人は一生懸命にやったつもり、気を利かしてしてしたつもりでも、ダメ出しを食らうと、プライドが邪魔をし、そこで学習をするのではなく、そういうことをされなくても済む方法を取るようになるのです。
結果、「言われてからしよう」「言われたことだけをしよう」となってしまうこともあるのです。
だからと言って、今のままでは困りますよね。
「動かない夫」「言われないとしてくれない夫」の妻はストレスがたまります。
でもそれは、小さな子どものいるママだけではありません。
あるアンケートにおると、50代の既婚女性の一番のストレスのもとは「夫」だったそうで、年齢は関係ないことがわかります。
では、夫のその行動や態度にイライラしてしまった時はどうすればいいのでしょうか?
私は、そのときの気持ちのもちようをコントロールするのがベストだと思っています。それは子育てととてもよく似ています。
子育てがうまくいく方法は、「ありのままを受け止める」と言われ、幼児教育の世界ではそれを「受容の原理」と言っています。
子どものすべてを文字通り受け入れるのです。
簡単に言えば、「子どもというものはこんなもの」「これがわが子だ」と思うのです。
否定をすれば、気分はイライラし、文句も出やすくなりますが、認めたものに対しては笑顔が出やすくなり気分も落ち着きます。 夫の姿、性格、行動のありのままを認め、否定するのではなく、「そう来たか」と丸ごと受け止めるだけでも、イライラはずい分減っていきます。つまり、言い分を認めるというのではなく、夫はそう思ってるんだ、と事実を認めるのです。
以前、ご夫婦で参加されたある講演会で「夫の直してほしいところ」「妻の直してほしいところ」を書いてもらいました。
すると、妻は紙いっぱいに書く人が多く、裏面にまで書く人もいたのですが、夫は「何もありません」が実に多かったことに驚きました。
何もないはずはないと思ったのですが、そんな人はおそらく妻のすべてを認め、丸ごと受け止めているのでしょう。きっとストレスとも縁遠い生活をしているのではないでしょうか。
次回は、パパに主体的に動いてもらう方法、そして、パパが家事や育児に参加するとどんないいことが家庭に起こるのか、などをご紹介したいと思います。
こどもコンサルタント 原坂 一郎
1956年、神戸市生まれ。関西大学社会学部卒業。神戸市内で23年間6か所の保育所勤務を経て、2004年「こどもコンサルタント」に。笑いと笑顔をキーワードに、子どもおよび子育てに関するさまざまな研究・執筆・講演を全国で展開。『読むだけで子育てがうんと楽しくなる本』(春陽堂)、『男の子のしつけに悩んだら読む本』(すばる舎)ほか著書多数。
Facebook:@IchiroHarasaka
http://harasaka.com/