1年生で始まる「算数」に向けての幼児期の「数のべんきょう」。
前回は「数を数えられること」と「数を理解できていること」は違っていて、数の概念を理解できなければいけないことがわかりました。
では、数の概念を理解するためにはどうしたらいいのか…家庭教育アドバイザーのTERUさんによると、ふだんからの親の関わり方が大きく影響を与えるようです。
実は私は、数は勉強として教える必要はないと思っているくらいなんです。
日常生活の中で子どもの数の理解は9割完成する。
これは、以前ひらがなの学習がテーマのときにお話したことと一緒で、子どもが「数でどれだけ遊べるか」にかかっていると思っています。
ちなみに残りの1割はプリント学習。でもこれはあくまで「理解できているかどうか」の確認としての取り組みです。
ですから、今回は、勉強としての数の教え方、というよりは、日ごろからの子どもとの関わり中で、親が心がけるといいことをお話しします。
まず、大前提ですが、早くから数や計算を教えることを強要しないでください。
だいたい数の敏感期(子どもの成長で特定の事柄に対して強い興味・関心をもって取り組める時期のこと)は、4・5歳くらいが目安です。そのころになると、数への興味が子どもの中から自然とあふれ出てきます。「数を数えたくて数えたくて仕方がない時期」が突然やってくるんです。
そのタイミングでぐっと数の理解を深めることができるので、その時期を待つことが大切です。
それまでは強要する必要はありません。焦らずにいてください。
ただ、敏感期に急に興味を持つということではなく、「徐々に蓄積された興味があふれだした」というほうが正しいので、敏感期が来る前には、自然に数に触れられる環境を作っておくこと。そして、親から子どもに上手に数についてのインプットをしておくことを心がけたいですね。
親が意識して、少し工夫するだけで数への興味の芽生えや、定着度はずいぶん違うと思っています。
子どもに「数えたくて仕方がない!」数の敏感期がやってくる前に、うまく数についてのインプットをしておくと、数の理解がスムーズに進みます。
子どもが「数を理解できている」というのは、数字・音・物を理解している状態のことです。
●「5」が「ご」という数字だと認識できることが、数字の理解
●5個あるものを「ご」と数えられることが、音の理解
●「5と言われたら5個の物が頭に浮かぶ」「1個が5つ集まって5個」「3個に2個増えて5個になっている」など実際の物の増減と数を結び付けて理解できていることが、物の理解
この3つの理解ができるように、親がしておくとよいことをご紹介します。すべて子どもにとっては遊びの中でできることですので、気負わずにトライしてみてください。
まずは、「数字」の理解です。
数字を認識できるようになるために、おうちの中で数字を目にする機会を増やしてください。
ひらがな50音表と同様に、数字表も早くから貼っておくことは有効だと思います。ちょっとした時に、「これは5だよ」など、表を見て声かけしやすくなりますね。
また、数字のついた積み木やブロックもいいですね。それを使って日ごろから遊んでいれば、数字を目にする機会がぐっと多くなります。
数字の形のパズルや、マグネットも良いと思います。数字の形を使ったおもちゃだと、より印象に残りやすいかもしれませんね。
おもちゃに数字がついていると、それを並べて遊んだりすることで、自然と数の順番を意識することもできます。
また、数字カードなどもあると便利です。数字カードを選ぶ時は、数字だけではなく、計算記号(+、-、=)などがあるものがよいと思います。最初はカードを引いて数字を読むことから始めますが、ある程度数字が理解できてきてからは、計算記号のカードも用いて遊ぶことで、たし算、ひき算遊びまでできるので、後々長く使えます。
このカードは、実際の「物」と合わせたときに力を発揮します。 例えば、積み木を使って「2個と3個を合わせると5個になるね!」と物で確認してから、数字カードと記号カードを使って「2+3=5」と見せてあげます。このように物と数字と記号を合わせて理解していくことで、算数が得意になることにつながっていくのです。
次に、「音」としての理解です。
親が日ごろから言葉の中で、数を使っていく頻度を増やしていきましょう。何をするにも数える。ぶつぶつと数を唱えるだけでも、子どもの興味を引き出せます。
例えば、歩き始めた子に、「いちに、いちに・・・」と声をかけることがありますが、これは実はすごくよい声かけなんです。
特に、好きでしている遊びや頑張っていることを、いっしょに数えて応援してあげてください。
縄跳びをしているのを数えてあげたり、お手伝いで卵を混ぜるときには「まぜまぜ」ではなく、「1・2・3・4・・」と混ぜる回数を数えるなど。
このような声かけを繰り返すことで、その場面が数えることとセットで根付き、親がそばにいないときでも「頭の中で数がリピート」されるようになります。
数唱は取り組まれている方も多いと思いますが、1・2・3と上がっていくだけではなく、数を減らしていくのもぜひ取り入れてください。
そして抜けがちなのですが、「0」まで数えることを心がけてください。
●0・1・2・3と「何もないところから増えていく」
●3・2・1・0と「何もなくなって0になる」
「何もない」ということを、0としてしっかり意識と、より今後の数の理解に役立ちます。
最後に、「物」としての理解について。
物の理解は、数字を言われたときにその数の物が頭に浮かぶこと。そして、数は物が動くことで、増えたり減ったりするということを理解することが大切です。
「指」は身近にある「物」なので、増減が視覚的に伝わりやすいですね。指を使って数の増減を教えている方も多いと思いますが、気を付けたいことがあります。
大人が数を数えるときは、指を開いた状態から折って数えることが多いですが、数え始めの子どもには、数が増えていくイメージを正しく伝えるために、指を折って数えるのではなく、グーの状態から指を開いて数える方法にしてください。
また、10までの数であれば、両手をつかって数えること。
そして、10以上の数になるときは、大人が手を貸して補助するなど、その数の分だけ指を用意することが大切です。
これはどういうことかというと、例えば指が足りなくなったときに、いちど開いた指を戻したりして数えていると、子どもにとっては数えた物が「なくなってしまう」ので、わけがわからなくなってしまうため。
物が増えていく数の概念としてもおかしくなります。同じ「指を開いて数える」という状態が続いていくことが「増えていくこと」という「物の動きの法則・概念」を守ってあげて欲しいなと思います。
これは、とにかく日々の暮らしや遊びの中で、繰り返し声かけをしていきます。
ブロックなどを使って、「5個あるね。3つ増えたら、8個になるね」など、たし算・ひき算につながるような声かけをするとよいでしょう。
そして声かけをするときにはぜひ「補数」を意識してみてください。補数とは、補う数のこと。
「パンが3つあるけど、4人に配るからあと1個足りないね」など、「残りいくつで、いくつになる」と補っていく概念はくり上がり、くり下がりの計算の素地になっていきます。
声かけするときの表現のバリエーションも大切です。
たし算であれば
足す
合わせる
一緒になる
増やす
〇+〇=
など、日本語は表現が豊富なので、全部同じ意味ということを理解できるように使っていきます。
ひき算も同様に…
引く
取る
減らす
なくなる
〇-〇=
など、表現のバリエーションをつけてみてください。
増えていくのはたし算、減っていくのはひき算ということがまだ理解できなくてもよいので、数の増減がいろいろな表現で伝えられる、ということが大切です。
なんだかいろいろ声かけをしなくてはいけなくて大変そう…と思うかもしれませんが、教え込むというよりは、ひとり言くらいの感覚でよいです。「こうなんだよ~」という気楽な感じで話していくことが実は子どもの中に蓄積されていきます。
物の動きのイメージが付きやすいように、大人は上手にサポートしてあげてください。
考えてみれば、毎日の親子の生活には常にいろいろな数があふれています。それをひとつずつ言葉にして子どもにわかるように伝えていくことで、数とは何か、数の増減についても自然とわかるようになっていくということなんですね。
次回は数の概念を理解するのに大切な10進法を理解すること、さらに量感を身につけるためにできることをTERUさんに教えていただきましょう。
子育てに役立つ名言を集めた、おやこのくふうインスタグラムは @oyako_kufu
家庭教育アドバイザー TERU
幼児教育の講師。 1000人以上の子どもたちと関わってきた経験をもとに、0~12歳の保護者向けに知育、育脳、子どもとの接し方など家庭教育情報を発信している。登録者8万人超のYouTubeでは"子どもを成長させる"実践的な子育て動画を配信中。
YouTube:子育て勉強会 TERU channel
Twitter:@TERUkyoiku
Instagram:teru_kyoiku
ライター 赤司 陽子
大学卒業後、製薬会社での勤務を経て、大手教育関連企業に転職。約10年間幼児教育・小学生教育事業に携わる。その後夫の海外赴任に随行し、アメリカで出産・育児を経験。多様な価値観に触れる。帰国後、フリーのプランナー・エディター・ライターとして活動中。現在、5歳女子・3歳男子の年子育児に奮闘中。
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