うちの子は好き嫌いが多く、好きなものしか食べません。
食べず嫌いが多いので、食べられるメニューがなかなか増えないし、
野菜もほとんど食べないので心配です。
子どもに何を出せばいいか、まいにちの食事作りに悩む日々です。
食べ物で、「これだけは苦手」という「好き嫌い」のある人は大人でも多いもの。
一方、好き嫌いなく、何でも食べる人もいます。
子どももそうなってほしいですよね。
そもそも、好き嫌いはどうしてできるのでしょうか?
好き嫌いのある子どもは、よく「わがまま」と言われたりします。
ですが、私は、好き嫌いはその子どもの性格から来るのではなく、舌のスペック(性能)の違いで発生すものだと思っています。
つまり、好き嫌いのある人は、それを食べておいしくは感じない、残念な舌を持っていて、好き嫌いなく何でも食べる人は、何を食べてもおいしく感じる、素晴らしい舌を持っている、というわけです。
性格は明るく素直だけれど好き嫌いが多い、という子どもは多くいます。一方、性格はわがままだけれど、好き嫌いなく何でもよく食べる、という子どももいます。
好き嫌いの有無は、決して性格から来ているのではないようです。
でも、子どもの好き嫌いは少しでも減らしたい、と思うのが親心ですよね。
今回は、好き嫌いのあるお子さんがいらっしゃるご家庭に、おすすめしたい5つの作戦をご紹介したいと思います。
子どもは"嫌いなもの"を出されると、まったく口にせず、ひと口も食べないことがあります。
そんなときに効果があるのが、"9割減らし作戦"です。
たとえば、子どもの嫌いなものがあるとすると、子どもの目の前でその9割を取り除き、1割の状態にして、「じゃあ、これだけは食べてね」と言うのです。
嫌いなものが9割も減り、とても小さくなると、「これなら食べられそう」となり、その場でパクッと食べてしまう子もいます。食べたのはたったの1割でも、「まったく食べない」から進化したわけで、すばらしいことです。
ポイントは、「目の前で減らす」ということ。
台所で減らしたなら、減らしたその量が「全量」となり、1割になっているその「ありがたさ」がわからず、それすらも食べないことがあります。1割に減らして食べたなら次は2割、その次は3割、と少しずつ増やせばいいのです。
これは食べず嫌いの食べ物があるときにも効果があり、目の前で1割に減らしてもらった初めての食べ物を生まれて初めて食べてみると、思わぬおいしさに、「さっき減らした分を返して」と言い、結局全量を食べた子どももいます。
人は誰でも「私ってほめられたら伸びるタイプ!」と言います。なのに、わが子に関しては「叱ったら伸びるタイプ」だと思うのか、子どもが「これ嫌い」と言っただけで叱ってしまう親は多いもの。
子どももやはり「ほめられると伸びるタイプ」です。
好き嫌いに関しても、叱るのではなくほめていくようにすると、少しずつ改まっていきます。
ポイントは、「食べないときに叱らず、少しでも食べたときにほめる」ということ。
「好き嫌いを言わずに食べた」「食べるのに時間がかかったけれど全部食べた」という場合はもちろん、「嫌いだけれど少しは食べた」「前は食べなかったが今日は食べた」ときなど、その都度ほめるのです。
ほめられると、次も頑張ろうとする気持ちが生まれると共に、その食べ物に対してプラスのイメージが刷り込まれ、食事自体も楽しくなってきます。
一番よくないのは、我慢して少し食べた時に、「もう、好き嫌いばっかり言って」と、食べたのに叱られることです。
保育士時代に不思議だったのは、「野菜は一切食べない」という子どもでも、みそ汁の中に入っている野菜はおいしそうに食べるということです。保育園ではよくみそ汁が出るのですが、みそ汁を嫌いという子どもは滅多にいなかったのも不思議でした。
子どもの野菜嫌いに悩んでおられる方は、みそ汁にいろんな野菜を入れ、特に好きな野菜は多めにいれて野菜不足を補うようにしてみてください。
また、野菜は嫌いでも野菜ジュースは好き、というお子さんは、濃縮野菜ジュースで補ってもいいでしょう。野菜ジュースを200cc飲むと、100gの野菜を摂ったことにもなると言われています。
そのように、子どもは嫌いな野菜も、調理法などで味や形が変わると食べる、ということも多いので、その大きさや柔らかさにも変化をつけながら、調理法を工夫してみてくださいね。
なんだかんだ言っても母親は子どもには甘く、わが子の嫌いなものは食卓には一切並ばない、もしくは無理には食べさせないというご家庭は多いもの。
でも、子どもの舌は刻一刻と変わり、嫌いだったものがいつのまにか好きなものに変わっていくこともあります。それを「おいしくない」と感じていた舌が、「おいしい」と感じる舌に変化したというわけです。
嫌いな食べ物も、最低月に一度は出すようにしましょう。
好き嫌いをなくそうと、子どもが泣いていやがるほど嫌いな食べ物を無理に食べさせるのはよくありません。 仮にそれで食べられるようになったとしても、その経験は決して「楽しい思い出」にはならず、逆にそれがトラウマになったり、見るたびにそのときのことを思い出すと言う人もいます。
人生の原体験とも言える子ども時代に大切なことは、食事を“楽しいもの”として頭の中に刷り込むことです。
好き嫌いをなくすことにこだわりすぎず、今は毎日の食卓で一度でも多くの笑顔が子どもに起こることに努めるようにしてください。
楽しい食事は人を良くしていきます。
なぜなら「食」という字は、人を良くすると書きますからね。
こどもコンサルタント 原坂 一郎
1956年、神戸市生まれ。関西大学社会学部卒業。神戸市内で23年間6か所の保育所勤務を経て、2004年「こどもコンサルタント」に。笑いと笑顔をキーワードに、子どもおよび子育てに関するさまざまな研究・執筆・講演を全国で展開。『読むだけで子育てがうんと楽しくなる本』(春陽堂)、『男の子のしつけに悩んだら読む本』(すばる舎)ほか著書多数。
Facebook:@IchiroHarasaka
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