「子どもと一緒に料理する」と聞いて、とても楽しそう!と思う人もいれば、大変そう…と思う人もいるかもしれません。
小さなころから料理にふれることには、子どもの成長や将来の味覚形成にとって、とても大きな意味があると、料理研究家の関岡弘美さんは語ります。 さあ、子どもと一緒に、キッチンに立ってみませんか?
料理することを通して学ぶことは、本当にたくさんあります。
五感をフル活動させて学べる絶好の知育であり、生きていくうえでずっと切り離せない、生活の基礎部分にもなるからです。
以前携わっていた食育雑誌の編集を通して、現在は自分の子育てを通して、改めてその大切さを実感しています。
では一緒に料理をすることは、子どもにどんなよい影響があるのか、見ていきましょう。
道具を使う、材料をはかる、おいしそうに盛り付ける…など、料理はたくさん手や指先を使って作業をしますよね。
指先の運動は脳に刺激を与え、子どもの成長、発達をうながすと言われています。
人間の舌にある食べ物の味を感じる器官「味蕾(みらい)」は、年齢を経るにつれて少しずつ数が減っていくといいます。
つまり、小さいうちのほうが、味に対して敏感に反応できるということ!
お手伝いする中で「食べてみようかな」と色々な食べ物にチャレンジすることで、味覚を育てていくことができるのです。
また、味を感じるときに大きな役割を果たしているのが「嗅覚」です。出来上がっていく料理からただようおいしそうな香りは、料理への関心をさらに高めます。
食材にふれ、調理の過程を自ら体験すると、食材に対する愛着が生まれます。
苦手で食べられなかった野菜などが食べられるようになる、ということも、自分で料理することで得られることの一つです。
おいしそうな盛り付けには、彩りやバランスを考える力が必要です。
どんな色のおかずが、どんな盛り付けでお皿にあると、おいしそうに見えるかな?とおやこで一緒に考えれば、美的感覚も養われます。
料理には、下ごしらえから盛り付け、完成に至るまで、その流れを考える力が必要です。2品以上になった場合はさらに、その流れは複雑になります。
どの料理のどの工程をいつ始めるか、どんな順番で作ればうまく完成するか。
幼児は料理の手順を自分で考え、決めることはまだ難しいですが、大人の段取りを隣で見ているうちに自然と考える力が身についていきます。
実は、料理やお菓子作りの中には、化学変化を利用した工程がたくさんあります。
卵を焼くと固まる、ゼラチンを入れて冷やすとゼリーができる、など、できあがる工程は、実験そのもの。
食材の色や形の変化を追うだけでも、子どもにとって大きな学びになります。
お手伝いをする過程はもちろん、料理して出来上がったものを家族で食べるということも、大切なコミュニケーションの場になります。
家族のために作ることで、家族の一員としての役割を果たしている気持ちにも。また、自分がふだん作ってもらっていることへの感謝の気持ちも、そこから生まれてきます。
改めて見ると、こんなに良いことがあるとは…!
このように、料理を通して学べること、得られることは、数えきれないほどあります。
小さいうちから始め、少しずつできることを増やしていくことで、料理に対する関心の芽も伸びていきます。
子どもの年齢で、できることは変わってきますが、発達段階に合わせて、一緒にできることを増やしてみましょう。
いきなり一緒に何かを作ろうとしても、うまくいかないこともよくあります。
まずは、遊びの延長のように楽しめる、身近なお手伝いから始めてみましょう。
ポイントは、「親自身の余裕があるときに声をかける」こと。
例えば、時間がない夕食どきに何かしようとしても、すぐに乗ってきてくれなかったり、失敗したり、時間がかかったりすると自分に余裕がなくなり、イライラしてしまいます。 イライラが子どもに伝わると、「おてつだい=楽しくない」になってしまい、次につながりません。
まずは少し余裕のあるときなど、多少時間がかかっても大丈夫、と思えるときに、キッチン以外のところから始めてみましょう。
キッチンに立たなくても、料理に関わるお手伝いはかなりあります。
最初は簡単なことでOKです!
子どもの興味がありそうなものから声をかけて、一緒にやってみましょう。
大人がやっているのを見て、「一緒にやる!」となったら、しめたものです。
子どもとの料理で一番大切なのは、「料理って楽しい!」と思わせること。
そのためには、まず、大人が料理を楽しむことが大切です。
大人が楽しそうに料理をしている姿を見ると、自分もやってみたい!という気持ちになります。
隣に立ってじっくり眺めていなくても、その姿が視界のどこかにあれば、意外と子どもはちゃんと目に留めています。
まずは、自分自身が楽しんで料理をしている姿を、子どもに見てもらいましょう。
料理研究家 関岡 弘美
食育雑誌の編集に携わった後、渡仏。フランス料理、菓子、ワインを学ぶ。現在は、雑誌、テレビ、広告などを中心にレシピを提案。都内でおもてなし料理の教室を主宰。4歳の息子の子育てに奮闘中。
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