3人育児に奮闘中のママライター、タキザワです。
「早くしなさい」「勉強しなさい」…子どものことを心配するあまり、そんな小言がつい増えてしまいますよね。筆者も子どもたちに「早くしなさい!」と叫ぶ毎日に悩みつつも、「子どものためだから仕方ない」とも…。しかし親がよかれと思って発するこれらの言葉が、なんと子どもが犯罪に手を染めるきっかけになってしまう可能性があると聞くと、ドキッとしますよね。
1万人を超える犯罪者・非行少年の心理分析を行ってきた犯罪心理学の第一人者が、「言葉」をテーマに綴った子育ての教科書『犯罪心理学者が教える子どもを呪う言葉・救う言葉』(出口保行著・SBクリエイティブ刊)を紹介します。
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インパクトのあるタイトルの本書。「『呪い』ってどういうこと!?」となんだか怖くなってきてしまいますよね。
著者、出口保行さんは法務省の心理職として全国の少年鑑別所、刑務所、拘置所で犯罪者の心理分析を担当し、退職後は東京未来大学 こども心理学部の学部長を務める犯罪心理学の第一人者です。
出口さんが心理分析を担当した犯罪者、非行少年はじつに1万人を超えるそう。そんな中で出口さんが実感しているのは、子どもの犯罪や非行、問題行動には家庭環境が大きく関わっているということ。
「家庭環境が悪い」というと、虐待や育児放棄、貧困などが思い浮かぶかもしれませんが、実際にはそんなわかりやすい問題だけではありません。ごく普通の家庭で親が子どもに「よかれ」と思ってかけた言葉が「呪いの言葉」となって、子どもを非行に走らせる場合が多いと出口さんは語ります。
筆者も含め、多くの親は子どもに社会性を身につけてほしくて「~しなさい」「~しちゃダメ」とつい声をかけてしまうもの。そんな子育て中の親は「確証バイアス」に陥りがちだといいます。
「確証バイアス」とは心理学の用語で、自分に都合のいい情報ばかりを無意識に集めてしまうこと。「うちの子にはこれがいい」と確信してしまうと、ほかの情報や周りの人の声、果てには子どもの発するSOSもスルーしてしまうことがあるというのです。
確証バイアスが機能した親は一方的に「よかれ」を子どもに押しつけすぎてしまいがち。すると子どもは無意識のうちに不満を貯めこんでしまい、それが何かのきっかけで問題行動を起こしてしまいます。よくある「まさかうちの子が…」という事件の裏には、こんな家庭の問題が隠れていたんですね。
この恐ろしい「子育ての確証バイアス」から抜け出すには、「子どものため」を思っての言動が押し付けになっていないか考えることが大切だと出口さんはいいます。
特にありがちなのが「早くしなさい」「さっさと片づけなさい」「いい加減、準備しなさい」などの子どもを急かす言葉。筆者はほぼ毎日言ってしまっていました…。
急かす言葉がなぜダメなのかというと、子どもの「事前予見能力」の発達に大きく関わるからなんだとか!本書では各章の冒頭で、犯罪や非行の事例を紹介し、その章のテーマとなる「呪いの言葉」=子どもへの押し付けになる気をつけたい言葉を挙げています。
この章の事例に登場するユカさんは、恋人の借金返済のために会社の金を横領。少額ずつ自分の銀行口座に送金するという大胆かつ稚拙ともいえる犯行は、会計監査によって発覚することになります。特別な細工もなく直接自分の口座に送金していたのですから、すぐバレてしまうことなんてわかりそうなものですが…。実はユカさんの「事前予見能力」の乏しさに問題があったといいます。
「事前予見能力」とは、いわゆる「先を読む力」のこと。この事前予見能力が十分に育っていないと、「いまがよければそれでいい」と現在を優先して行動してしまうそう。ユカさんももちろん横領は犯罪だと理解していましたが、「恋人の借金」という目の前の問題しか見えていませんでした。
ユカさんは幼い頃から両親の店の手伝いを任され、常に「早くしなさい」と言われて育ちました。その結果、常に目先のことをどうやり過ごすかしか考えられなくなったといいます。非行少年に多いのが、ユカさんのように事前予見能力が十分に発達していないケースなんだそうです。
親が「早くしなさい!」と言うときは、「急がないと学校に遅刻しちゃう」などちゃんと理由がありますよね。でも子どもは事前予見能力が十分に育っていないため、なぜ急がなければいけないのかわからないんです。親に「早くしなさい!」と言われたから、よくわからないままとりあえず急ぐ。その場はなんとかなっても、急ぐ必要性が理解できていないままなので、事前予見能力が育たず、常に場当たり的で後先を考えない思考になってしまいます。
子どもの事前予見能力をちゃんと育てたい!でも早くしてくれないと困る!そんなジレンマを解決するには、「なんで急がなくちゃいけないのか」を子どもにちゃんと説明することが大切。たとえば「学校まで歩いて15分かかるから、8時には出ないといけないよね」「8時に家を出るためにはどうしたらいいかな?」など、早くしなきゃいけない理由を伝えたうえで、どうするべきなのかを自分で考えさせます。これが事前予見能力のトレーニングになるんだそう!急ぐ必要性が理解できれば、自分で時間を見ながら動く習慣ができます。
筆者もさっそく6歳の長男に、「40分に幼稚園のバスが来ちゃうんだ。もうすぐ35分なんだけど…。どうすればいいかな?」と声をかけるようにしました。まだまだ自分で時間を見るまではいきませんが、「あ!35分!」の一言で自分から準備をするようになりましたよ!
本書にはこのほかにも「頑張りなさい」「何度言ったらわかるの」「勉強しなさい」「気をつけて」が「呪いの言葉」として登場します。どれも言ってしまいがちな言葉ですよね…。
本書を読んで、普段から言っていた言葉が子どもの心を傷つけ、混乱させてしまっていたのかもしれないと思うと申し訳ない気持ちになりました。
でも、今からでも遅くない!その「子どものために」は本当に子どものためなのか、子どもの気持ちを無視して押し付けていないか、子どもにとって「呪い」になってしまっていないか…。子どもがのびのびと成長していけるよう、子ども、そして自分自身に向き合っていきたいと強く思えた1冊でした。
『犯罪心理学者が教える子どもを呪う言葉・救う言葉』
著者:出口 保行
発行:SBクリエイティブ
定価:単行本(新書)990円(税込)/Kindle版(電子書籍)990円(税込)
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【わたし的評価】
満足度 ★★★★☆
実践度 ★★★★☆
読みやすさ ★★★☆☆
わかりやすさ★★★★☆
ライター タキザワミユキ
何にでも興味津々なやんちゃな3兄妹を育てるママライター。留学・語学学校での勤務経験を活かし、さまざまなテーマで執筆しています。子供たちの笑顔が毎日の癒し!子供の成長はあっという間だなと実感する日々です。
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