とりあえずの「がんばったねー」はNG!子どもがグッとくる親のほめ方次第で非認知能力はもっと伸びる!
2020年もあとわずかとなりました。おやこのくふうが8月13日にリリースして約4か月あまり。その中でもっともよく読まれているのが#まなびのきほんタグです。その#まなびのきほんタグの人気記事ランキングを大公開。今年よく読まれた記事は、いま注目のキーワード「非認知能力の伸ばし方」に関するものでした。
「非認知能力」とは、思いやりや我慢強さ、やる気など、点数化できない力の総称。それを伸ばすためには、子どもが自らの力でそれを伸ばしていけるよう導くことが肝心です。
「ほめてあげる大人⇔ほめてもらう子ども」という関係ではなく、大人自身が「ステキ」「ありがとう」と思ったことをそのまま率直に表現し、子どもとシェア(共有)する。「いまのすっごいステキ!」「それそれ、ほんとうれしい!ありがとね!」などと、わかりやすく声かけをした方がグッとくるはず・・というアドバイスに支持が集まりました。
子どもとステキな「非認知能力ポイント」をシェアするためには、「がんばったねー」とあいまいにほめるのではなく、シェアしたい子どものステキな姿を大人がしっかりキャッチしておく必要があるのです。
2位も「非認知能力」に関する記事。コロナ禍で子どもから「何もすることない」と退屈を訴えられたとき、「これとこれどっちにする?」と親がやってしまいがちな対応に警鐘を鳴らした内容になっています。
人が何かをするとき、自分の中から沸き起こった興味・関心から行動する「内発的意欲」と、外から与えられるご褒美目当て(お金がもらえるから、おいしいものが食べられるから、これをしたら名誉が与えられるからetc)で動く「外発的意欲」の2種類がありますが、当然のことながら、非認知能力を伸ばしていくのは、自ら沸き起こる「内発的意欲」です。
子どもに「これとこれ、どっちにする?」と聞くのは、自主性を重んじているようで、2つから選択させる「制限」をかけていると言えなくもありません。もしスウェーデンで同じようなことをした場合、子どもの権利条約の第12条「意見表明権」に抵触し、虐待に当たる恐れがある・・という指摘に、ドキッとされたかたも多かったのではないでしょうか。
AかBの二者択一ではなく、「3~4歳までは何をしてもオールOK!」と受け止めることが、「自分はここに存在していいんだ」と思える自己肯定感(自己受容感)につながり、非認知能力の土台となる。「受け入れてもらえた嬉しさや安心感」を知っているからこそ、自分をコントロールする力や、他者と協調・協動していく力などを身につけられるのです。
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さて、幼児期は生きていくために必要な点数化できない力=非認知能力を伸ばすことが大切で、ひらがなの読み書きのような「認知能力」は小学校に入ってからでいいのでは?と思われがちです。
でも、入学後、読み書きができなくて子ども自身が「自分は学校で少し遅れてしまっているな」と感じてしまうと、自己肯定感が下がり、非認知能力の伸びを妨げることにもつながりかねません。
だからこそ、幼児期のいま、親として何をさせるべきかをきちんと考えることが必要…ということで3位から5位にはひらがなの習得についての記事がランクインしました。
3位には、子どもにひらがなを教える前に「語彙(ごい)を増やす」ことの重要性をわかりやすく解説した記事がエントリーしました。語彙(ボキャブラリー)を増やすために親ができる、3つの習慣が紹介されています。
一つ目は、絵本の読み聞かせ。ひらがなそのものは文字に過ぎず、実際に使えなければ意味がありません。頭の中に浮かんだ言葉が文字と組み合わさることで初めて文章として読めるので、言葉がいっぱい詰まっている絵本を、日々読んでいくだけで自然に語彙を増やしていけるのです。
このとき大切なのが、言い間違いがあっても絶対に指摘しないこと!あくまで一緒に絵本を楽しむことを心がけましょう。
また、大人が読み聞かせするときに、一文字一文字を指で追って、ひらがなを意識させる必要もありません。個人差はあるものの、多くの子は4~5歳になると自然に「自分で拾い読みをしたいブーム」がやってきます。そのタイミングが「読み」を前進させるチャンスなので、ブームが訪れるのをゆっくり待ちましょう。
二つ目は、日常会話の「質」を上げていくこと。どれだけ子どもに「言葉のシャワー」を浴びせてあげられるかが鍵です。賛否両論ありますが、「正式名称=正しい言葉」として伝えましょう。どんなに子どもが小さくても「ブーブー」ではなく、「車」。さらに「あれは○○というメーカーの○○という車だね。こういうところが他の車と違うね」など、車種や特徴などを詳しく盛り込む。こうした積み重ねで語彙はどんどん増えていくのです。
また、大人が単語で話さないことも大切。よく昔ながらの父親の例として、「飯!」「風呂!」と単語のみの会話が挙げられますが、単語で話す親といると、子どもも単語で話すようになってしまいます。子どもとの会話でも「はい、お風呂!」「歯磨き!」と言いがちですが、子どもが「牛乳!」ではなく、「牛乳のおかわりをください」と言えるように、日ごろから文章で話すよう心がけましょう。
三つ目は、「感情のミラーリング(同調)」。例えば、子どもが転んで泣いているときに「痛くなかったよね!」と誘導することは、痛かった子どもの気持ちを否定してしまい、ミラーリングにはなりません。もやもやする気持ちを言葉で伝えきれないと、子どもの感情は爆発してしまいます。親が気持ちを代弁してくれることで、感情の語彙化ができ、少しずつ自分の気持ちを言葉で表現できるようになっていきます。
4位は、小学校入学までに「ひらがなが読める・書ける」このふたつができればいい、という記事。小学校入学を意識する年齢になると、親は読み書き、計算などのいわゆる「おべんきょう」が気になり始めます。
確かに、子どもが自己肯定感をもつためにも、授業がわかる程度には身についているほうがいいですが、文章がスラスラ書けるレベルまでは必要ありません。ひらがなの読み書きさえできれば、1年生の授業についていくことができます。
幼児期の勉強で一番大切なことは、「好きになること」。「まだやりたい!」と思っているくらいで終わらせるのがコツです。だから、「1日5分」でOK! 飽きさせてはいけません。書き順が違っていた、形のバランスが悪い、余計な線があった、途中で絵を書いていた…。まだ幼児なんですから、書いたこと自体がすごいこと。その「書けたという過程」をほめてあげてください。
"親が先に始めてしまう"のも、効果的です。ひとりでひらがな表を読んでみたり、ひらがなを書いてみたり…。それでも、食いつかなかったら、そのときは"グッと我慢"です。やる気の上がり下がりが大きいのが幼児。やる気がなくてどうしようもないときは「明日やろうね」でいいんです。
子どもが一番気にしているのは、近くにいる親の顔。親が険しい顔をしていたり、ため息をついたりすると、子どもは敏感に察知して、勉強することが楽しくなくなってしまいます。子どもが勉強に取り組んでいるとき、親はニコニコと笑顔でいること。これ以上に重要なことはありません。
学びへのモチベーションを上げるためには、子どもがおべんきょうを「好きになること」が大切。ひらがなの習得も遊びの延長上に置いて、笑顔で取り組みましょう。
親は「早くひらがなが読めるようにしないと」と焦りがちですが、それを強制してしまうと、子どもの読みたい気持ちにブレーキをかけてしまうことにもなりかねません。大切なのは、あくまでも子どもが自然にインプットできる環境づくり。ひらがな積み木やカルタ、ひらがな50音表、あいうえおの歌…。そのような環境で遊んでいるうちに、自然とひらがなを読みたくなるタイミングが訪れます。その好機を逃さず、遊びながら段階的にステップアップしていきましょう。簡単な読みから少しずつ始め、「できた!」という体験を積み重ねることがポイントです。
読めるようになったら、次に書きの練習を始めましょう。「書き」にはひらがなの読みの知識以外に、文字の形を認識すること、手指でしっかり鉛筆を支え自在に動かせることなど、その他の要素も絡んでくるので、"種まき"をしておくことが大切です。
まず、お絵描きや新聞紙をギュッと丸める練習を通して握力をつけ、手指の巧緻性(上手に使えること)を高め、思い通りの線を書けるようになるための「運筆」に取り組んでいきます。
「書きたい!」という意欲を引き出すためには「おてがみ」も効果的です。おてがみ交換ブームがやってきたら、おともだちからもらったお手紙を大切に飾る、子どもから手紙をもらったら、大げさなくらい喜んで宝物扱いするなど、書きたい気持ちに繋がるような演出をしてあげましょう。
ライター 福田チヅコ
主として大手通信教育会社にて未就学児や小学生向けの教材や告知物の編集・原稿執筆を担当。
その他、女性誌やWEBでインタビューや対談記事を手がけている。