前回の記事では、就学前にひらがなを読めるようにしておくとよい、という話がありました。
「じゃあ、ひらがなを読めるように練習しなきゃ!」と思ったママ・パパは、ちょっと待って!まずは読みを教えるベースとして、親が整えておきたいことを、これまで多くの子どもたちと関わってきたキッズコーチングの専門家・TERUさんに伺いました。
私は、ひらがな=語彙力だと思っています。ひらがなはあくまで文字なので、文字だけを教えても使えないと意味がないからです。
まずは、語彙(ボキャブラリー)を増やしていきましょう。子どもの頭の中にたくさん言葉がある状態で、それが文字と組み合わさることではじめて、文章として読めるようになります。
語彙を増やすために、日ごろからママやパパがぜひ意識したいことは大きく3つあります。
一つ目は、絵本の読み聞かせ。
これは、子どもが読みたいなら、いくらでも読んであげたらいいと思っています。純粋に親子で絵本を楽しんでください。
絵本には言葉がいっぱい詰まっているので、日々読んでいくだけで自然に語彙を増やしていけます。
大好きな絵本を繰り返し読むうちに、すっかり丸ごと覚えてしまう子もいますね。そのときは、子どもに読んでもらうという演出も効果的です。
ママやパパ、ときには弟・妹に読んであげられているうれしさが、より絵本を好きになるきっかけにもなります。
このとき大切なことが、もし間違っていても絶対に指摘しないこと!
親からすると、つい「そこは○○だよね」と直したくなる言い間違いがあるかもしれませんが、グッとこらえて。
間違いなく暗唱して読んでもらうことが目的ではありません。そんな指摘をされると、せっかくの楽しい気持ちがしぼんでしまいます。
また、大人が読み聞かせするときに、ひらがなを意識させるために一文字一文字を指で追いながら読む必要もありません。
時期に個人差はありますが、多くの子は4~5歳になると自然に「自分で拾い読みをしたいブーム」がやってきます。そのタイミングはぐっと「読み」を前進させるチャンスです。
逆に、そのブームがくるまでは、絵本で文字を覚えさせようとは思わないでください。
繰り返しますが、あくまで絵本を読むことを楽しむことが大切です。
勉強のためにやっているとなったら、子どもの意識も変わってしまいます。そこは、充分気をつけたいところです。
余談ですが、私の経験上、文章をうまく書ける子の多くは読書好きが多いです。そして、読書好きの子は、多くの場合が「親に日常的な読書習慣がある」ご家庭が多いのです。
子どもを待っているちょっとした時間に本を開いていたり、子どもが遊ぶかたわらで本を読んでいるなど、子どもは親のそんな様子を見ています。
親の姿から「本はおもしろいものだな」と自然に伝わるのでしょうね。
子どもに直接伝えなくても、"ママやパパが読書が好き"という事実は、何より子どもを本好きにする効果的なことだといえます。
二つ目は、日常会話の「質」をあげていくこと。
小さいときからの語りかけ育児は大切です。まずは、どれだけ親が言葉を伝えてあげられるかが鍵だと思っています。いわゆる親から子への「言葉のシャワー」ですね。
だから、こそ「質」にこだわって欲しいです。質を上げる、といっても難しいことではありません。
私は幼児言葉反対派で、もちろん賛否両論もあるのですが、どんなに子どもが小さくても「ブーブー」ではなく、「車」と呼びたい。「正式名称=正しい言葉」として伝えたいと思っています。
そのうえで、たとえば車が好きな子と外を歩いていて、走っている車の話をするときには、「あれは○○というメーカーの○○という車だね。こういうところが他の車と違う特徴だね」などというように、車種や特徴などを詳しく盛り込んで伝えていきます。
こうした積み重ねで語彙はどんどん増えていくのです。
そして、ぜひ心がけてほしいのは、家庭で大人が単語で話さないことです。
よく昔ながらの父親の会話の例で「飯!」「風呂!」みたいなこといいますよね(笑)。そのあとの要望もあるはずなのに、単語のみで会話をする。
じつは、これ笑い話ではなく、意外とやっていることが多いのです。
子どもとの会話でも「はい、お風呂!」「歯磨き!」のように言ってしまうことはありませんか?単語で話す親といると、子どもも単語で話すようになってしまいます。
同様に、助詞を抜かないで話すことも大切です。「牛乳!」ではなく「牛乳のおかわりをください」と言えるように、日ごろから親も文章で話すことを心がけたいですね。
ドキッ!ひらがなを教える云々の前に、自分がしっかりしなければ…
家庭での言葉づかいの土台が無いのに教えようとすると、どこかでつまずいてしまいます。子どもは家族の言葉をよーく聞いています。家族の会話を大切に意識していきたいですね。
三つ目は、「感情のミラーリング」。
子どもの感情が爆発してしまうことがあると思いますが、これは子どもが「もやもやする気持ちを言葉で伝えきれない」ためにおこります。
そんな場面ではその爆発をたしなめるのではなく、子どもの気持ちをくみ取って言葉にして寄り添ってあげて下さい。
ミラーリングとは同調するということ。
転んで泣いているときに「転んでも痛くなかったよね!大したことない!」なんていうのは、子どもは痛かったのにそれを否定してしまい、ミラーリングにはなりません。まずは子どものその気持ちをそのまま受け止めることが大切です。
親が気持ちを代弁してくれることで、感情の語彙化ができます。この積み重ねで、自分で気持ちを言葉で表現できるようになっていきます。
自分の感情を口に出して言える子は、心が安定して、勉強にも集中できるようになります。幼児期はそのための種まきを親がしっかり行っていきたいです。
次回は、具体的に、ひらがなの読みの練習のために親ができることをご紹介します。
家庭教育アドバイザー TERU
幼児教育の講師。 1000人以上の子どもたちと関わってきた経験をもとに、0~12歳の保護者向けに知育、育脳、子どもとの接し方など家庭教育情報を発信している。登録者8万人超のYouTubeでは"子どもを成長させる"実践的な子育て動画を配信中。
YouTube:子育て勉強会 TERU channel
Twitter:@TERUkyoiku
Instagram:teru_kyoiku
ライター 赤司 陽子
大学卒業後、製薬会社での勤務を経て、大手教育関連企業に転職。約10年間幼児教育・小学生教育事業に携わる。その後夫の海外赴任に随行し、アメリカで出産・育児を経験。多様な価値観に触れる。帰国後、フリーのプランナー・エディター・ライターとして活動中。現在、5歳女子・3歳男子の年子育児に奮闘中。
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