とにかく食べるのが遅いうちの子。食べ始めても、なかなか手が動かず、遊んでしまったりして、「ごちそうさま」までとにかく時間がかかります。食べることが嫌いなわけではなさそうなのですが…
保育園や幼稚園でも、食べるのに時間がかかってしまう子どもは一定数でいます。食事に時間がかかると、食事タイム全体に時間を取られて次の活動に移りにくくなり、実は園の先生も困っている場合が多いようです。困るという点ではご家庭でも同じかもしれませんね。
そこで、食事に時間がかかる子どもへの対処法をお伝えしましょう。
保育士時代に0歳から年長クラスまですべて受け持ってわかったことがあります。それは、食べるのが遅い子と早い子は、2歳の頃からはっきりと分かれているということです。
そもそも、食べるのに時間がかかる子どもはどうして遅くなるのでしょうか?クラスの中で、いつも遅くなる子どもを見ていると、年齢に関係なく、次の6つの原因があることがわかりました。
食事に時間がかかる子どもは、上記の中で必ず2つ以上のことをしています。
早く食べられるようになるには、まずは遅くなる原因を見つけましょう。一度、お子さんの食べる様子をじっくりと見て、何が原因かを探ってみてください。
原因がわかったら、その原因を取り除く、つまり、それをしないようにする声かけや援助をしていきましょう。
声かけと言っても、「早く食べなさい!」「ほらあ、また遊んでる!」などのお小言は逆効果になります。「では、どうすべきか」をやさしく具体的に伝えるのです。
原因別に見ていきましょう。
そもそも食べ始めが遅く、「いただきます」を言ってしばらくしてからやっとひと口目を食べるような子どもは、食事全体がダラダラし、遅くなりがちです。
「『いただきます』を言ったらすぐにお口に入れようね」と言ってすぐに食べることを促しましょう。
スプーンやお箸を置いている時間が長い子どもは、口の中に何も入っていない時間が長く、所要時間も当然長くなってしまいます。
「スプーンを持ってお口に運ぼうね」などと具体的に伝えていきましょう。
ひと口がとても小さく、ごはんは10粒ずつ、とうもろこしは一粒ずつ、といった子どもは、いくら時間をかけても、ごはんやおかずは減らず、結局遅くなってしまいます。
「ひと口は、このくらいお口に入れようね」と、ひと口の適量を見せて教えてあげましょう。
咀嚼のスピードが遅く、口を1秒に1回くらいしか動かさない子どもは、ひと口を食べるのにも時間がかかります。
そんな子には、「これくらい早く動かせるかな?モグモグモグ・・・」と、ユーモアを交えながら見本を見せましょう。子どもはその通りのことをしようとします。
食事の姿勢が悪いと、体全体のバランスが崩れて、食べるのに時間がかかってしまいます。
まずは子どもの足が、床やイスの足置き台にしっかり届いているかを確認してください。食事中は、足がどこかに着いていないと大人でも落ち着かないものです。子どもなら体全体が不安定になり、足をブラブラさせたり、肘をついたりしやすくなります。
姿勢やお行儀を注意をするときは、「足!」「肘!」と、単語で言うだけでは子どもに伝わりません。「足をぶらぶらさせないでね」「肘をつかないで食べようね」と「してはいけないこと」を丁寧に伝えましょう。
食事中に、食べること以外のことをしてしまうと、当然食べ終わるまでに時間がかかります。食事に集中しないと親としてはついイライラしてしまいますよね。そんなときも、「は~い、おしゃべりは~、おしまいっ!」「もう遊びませ~ん!」などとユーモアたっぷりに言うと食事が楽しい雰囲気になり、「しっかり食べようね」「前を向こうね」などの言葉も子どもに届きやすくなります。
以上のように、食事のたびに具体的に伝えていくと、遅くなる原因が1つ取り除かれ、やがてそれが習慣化し、だんだん早く食べられるようになっていきます。根気強く続けてみてください。
でも、逆に、これら6つのことをしないできちんとできているときや早く食べられたときは、「大きなお口で食べたね」「お行儀よく食べたねえ」「早く食べられたね」としっかりほめてやってくださいね。子どもはほめられると余計に頑張るので、自然と食べるスピードも早くなっていきますよ。
前回の記事でもご紹介しましたが、小学校へ上がると、給食タイムは準備を含めて45分~50分しかありません。食事の時間はおよそ20分が目安になっているので、一定の時間内に食べるという習慣は幼児期からつけておきたいものです。
食事開始20分後くらいで、脳の満腹中枢が働き、さほど食べていないのに「もうおなか一杯」という指令を出すので、そういう意味でも、「食事は最初の20分間が勝負」と覚えておくといいかもしれませんね。
3歳未満の子どもは食事が滞れば、手伝ってもかまいません。
つい子どものスプーンを奪って、親が手伝う時間の方が多くなってしまうことがありますが、子どもにはスプーンを持たせたままにし、親が介助用のお箸やスプーンを別に持っておくとスムーズに進みますよ。
こどもコンサルタント 原坂 一郎
1956年、神戸市生まれ。関西大学社会学部卒業。神戸市内で23年間6か所の保育所勤務を経て、2004年「こどもコンサルタント」に。笑いと笑顔をキーワードに、子どもおよび子育てに関するさまざまな研究・執筆・講演を全国で展開。『読むだけで子育てがうんと楽しくなる本』(春陽堂)、『男の子のしつけに悩んだら読む本』(すばる舎)ほか著書多数。
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