年長になる息子が、人の話をちゃんと聞けていないようで気になっています。遊んでいるときに、「ごはんよ」などと声をかけても全然遊びをやめず、叱ったり注意したりするときも、本当に聞いてる?というような態度で、響いている様子がありません。
何を言っても、聞いているのかいないのかわからない態度を見せられると、腹が立ったりする一方、何か原因があるのかと、心配になってきますよね。
では、その原因と対策を探っていきましょう。
考えられる原因には3つあります。
まず最初に確認したいのは、聞いていないのではなく聞こえていない、つまり聴力に問題があるかもしれないということ。
そのときは耳鼻科に行って相談する必要があります。
ふだんの様子をよく見て、名前を呼んでも振り向きもしない、お母さん以外の人の言葉にも反応が鈍い、テレビの音量をすぐに大きくするなどの兆候があれば、この機会に、耳と鼻の健康診断をしに行くつもりで一度耳鼻科を訪れてみるのもいいかもしれません。
聴力に問題がなく、でも聞こえていないような態度を取る場合…考えられる原因には、「お母さんの声」に対して拒否反応が出ている、ということがあります。
人は、「何か話しかけられたと思えば、たいていお小言」というような相手からは、名前を呼ばれただけでも「あ~、またきっと…」と防御態勢を作ってしまい、「上の空で聞いている」「心ここにあらず」といった状態になることがあります。
「他の人の言葉はよく聞いているが、私の言葉だけ無視される」というようなときは、そういうことも考えられます。
もしも自身に心当たりがある場合は、これからは、お小言を言ったあとでいいので、「子どもがうれしくなる言葉」をたくさん言う習慣をつけてください。
たとえば「ごはんよと言われたらすぐに来なさい!」と叱ってしまったら、「ちゃんといただきますって言えたね」「きれいに食べたね」など、そのあとにほめる言葉や食事が楽しくなる言葉をたくさん言うのです。
一日のどの場面でもそんな風にすると、少々お小言を言われても、お母さんの言葉を聞こうとする習慣がついていきます。
もう1つの原因として、「伝え方がよくない」ということが考えられます。
「伝えた」つもりが「伝わっていない」というのは大人同士でもよくあります。
特に、「声が小さい」「まわりくどくて何が言いたいかわからない」「独り言のように言う」「怒鳴って言う」などは、本人はそれで伝えたつもりでも、言った内容は全然伝わらないものです。
子どもを叱ったり何か言ったりするときにそうなっていないか、一度確認してみましょう。
「単語言葉」も伝わらない言葉のひとつなので気を付けてください。
たとえば食事中に注意をするときも、「足!」「ひじ!」と、単語で言ったりしていませんか?
子どもから「お茶」と言われれば、「お茶がどうしたの?」となるように、子どもも「足がどうかしたの?」となり、「足」だけでは何のことを言われているのかわからないのです。
「ごはんよ」は「ごはんだからもう遊ぶのをやめなさい」、「ひじ!」は「ひじをつかないで食べようね」と、子どもに何かを言うときは、言葉を省略しないで伝える習慣をつけてみてください。
子どもに何かを言うときに質問文で言っていないか、も気を付けましょう。
たとえば「何時だと思ってるの!?」と言うと、親は「もうテレビは見たらダメ」ということを伝えたいつもりでも、子どもは言葉通りに受け止め、「11時」と答えるときがあります。
「どこに上がってるの」と言われ、そのまま「机」と答えた子どももいます。
その他、「何してるの!?」「だれが暴れているの!?」「いつまで・・・やってるの!?」など、質問文で言った言葉は、すべて真意が伝わらず、言われた子どもは何を言われたのかわからず、キョトンとすることがあります。場合によってはその様子が「聞いていない」ように見えるかもしれません。
質問文で言ってしまったときは、そのあとでいいので「もうテレビを消しなさい」「机から降りなさい」と、「すべきこと」をはっきりと伝えるようにしてください。
また、声の大きさや言い方にも気を付けているのに聞いていないような気がするときは、本当はすべて聞こえているのに、とぼけているのかもしれませんよ。
とぼけるなんて2歳や3歳ではできないことなので、それはそれでひとつの成長です。
もしもとぼけていたなら、それを叱るのではなく、逆にそれを親子の笑いのネタにするくらいにしてほしいと思います。
あと、注意力が散漫な子どもは、人の話をよく聞けないことがあります。
そういう子は話を聞くだけでなく、そのほかのことをするときも集中力がないなど、その兆候が表れます。
でも、どんな場合でも、それを否定するのではなく、それを”わが子の姿”としてありのままを受け止めることが大切です。
子育てに関することは何でも、子どもの姿を否定をすると否定言葉しか出てこなくなりますが、ありのままを認めると、親子に笑顔が出てきますよ。
こどもコンサルタント 原坂 一郎
1956年、神戸市生まれ。関西大学社会学部卒業。神戸市内で23年間6か所の保育所勤務を経て、2004年「こどもコンサルタント」に。笑いと笑顔をキーワードに、子どもおよび子育てに関するさまざまな研究・執筆・講演を全国で展開。『読むだけで子育てがうんと楽しくなる本』(春陽堂)、『男の子のしつけに悩んだら読む本』(すばる舎)ほか著書多数。
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