みなさん、この「子育て軸」も3回目となり、いよいよ本題に入ってきました。
これまでに2回、子育て診断に挑戦していただきました。
【子育て診断でわかる】あなたはどんな親タイプ?子どもにどうかかわっている?
【子育て診断part2】こんなとき子どもを止めるVS止めない?ズバリ、あなたの判断をチェック!
そして今回も早速ですが、以下の問いに答えてみてください。みなさんがどんな「子育て軸」を持っているのかを明らかにしていきましょう!
Q:4歳になるわが子と一緒にあなたがバスに乗っていたときのことです。
車内のBGMでしょうか、「ももたろう」の歌が聞こえてきました。すると、わが子がルンルンな感じで「もーもたろさん、ももたろさん…」と歌い始めてしまったのです。最初は、ほかのお客さんもにこやかだったり、イヤホンを付けていたりでしたが、「もーもたろさん、ももたろさん…」をひたすら繰り返すわが子と私に対してだんだんと冷ややかな視線が向けられ始めました。
自宅付近のバス停まであと10分ぐらい…。でも、このままではヤバい!
そこで、「〇〇ちゃん、シーよ」と声をかけるものの、上機嫌に歌い続けるわが子。過去の経験から、こういう時のわが子はなかなか簡単にはやめてくれそうにありません。しかし、周囲からの冷ややかな視線はますますあなたへ突き刺さってきています。
さあ、みなさん!みなさんだったらここでどうしますか?
A:ここは腹をくくって、まずは止める
B:むしろ腹をくくって、このままにしておく
C:止められそうにないけど、止める振りだけはしておく
D:止められそうにないので、次のバス停で降りる
E:止められそうにないので、お客さんに謝りたおす
F:A~E以外の選択肢(例:必殺スマホ作戦で歌以外の別なものへ興味を向ける…など)
いかがですか?A~Eの中にドンピシャなものがありましたか?
それとも、もっとほかの選択肢(F)が浮かびましたか?
具体的な事例とこの事例に対する6つの選択肢を用意しました。きっと今回も、かなり迷った方から迷わず即答した方まで色々な方がいらっしゃったことでしょう。
もうすっかりおなじみになってきちゃいましたけど、今回もやっぱりどれか一つが正解というわけではありません。ここで重要なことは、どの選択肢を選ぶかではなく、なぜその選択肢を選んだのか…なんです!
ということで、子育て軸の出番ですよね。今回、みなさんにはいろんな場面で使うことのできる3つの軸をご紹介します。
一つ目の軸は、「自分の軸」です。例えば、Aを選んだ方は、どうしてAを選んだのでしょう?
周囲の人の迷惑になっているからという理由でビシッと止めたのではなく、私が恥ずかしいからという理由で止めた場合は、まさにこの「自分の軸」になります。
Cも、親として自分が止めようとしている振りだけは見せておきたいからという理由であれば「自分の軸」ですね。つまり、その理由が自分の欲求や羞恥心などに重きが置かれている場合は、この軸がみなさんの中に強く出ているときでしょう。
二つ目の軸は、「わが子の軸」です。例えば、Fの例のような場合、せっかく気持ちよく歌っているわが子を無理やり止めるのではなく、そのまま別なものへ気持ちよく興味を持ってもらいたいからという理由は、まさに「わが子の軸」になります。
結果は違いますが、Bだってわが子にこのまま気持ちよく歌い続けてもらいたいから腹をくくったのなら「わが子の軸」になるでしょう。
三つ目の軸は、自分でもわが子でもない「他者の軸」です。この場合の他者は、なんといっても一緒のバスに乗っているお客さんたちになります。
例えば、Dではお客さんの迷惑にならないように次のバス停で降り、Eではお客さんに不快な思いをさせてしまっているから謝りたおしたのであれば、まさに「他者(お客さん)の軸」がみなさんの中で強く出ていることになるでしょう。
また、先ほどの「自分の軸」で紹介したAだって、お客さんの迷惑にならないように止めたのであれば、「他者の軸」が強く出たことになります。
つまり、行為は同じでも理由となる軸が違うことや、先ほどのように結果は違っても理由となる軸は同じになることは十分あり得るわけです。
さて、このように三つの軸からみなさんの判断を見たときに、みなさんはどの軸を一番強く意識されましたか?これって、まさにみなさんの価値観そのものですよね。
言うまでもなく、利己的な価値観を持っている人は「自分の軸」を意識して、自分の欲求や羞恥心を解消するために行動することでしょう。人間なら誰もが持っていてもおかしくはありません。
利子的(りしてき ※造語)な価値観を持っている人は「わが子の軸」を意識して、わが子の思いや気持ちを何よりも大事に行動するでしょう。これも親としてあるべき姿だと思います。
利他的な価値観を持っている人は「他者の軸」を意識して、お客さんの迷惑や不快感をなくすために行動するでしょう。社会人としてあるべき姿ですね。
いかがですか?みなさんが、はっきりストレートに意識した軸は一体どれでしょう?
もしくは、一つの軸だけではなく、三つの軸をブレンドされましたか?
ちなみに、私は【自分2:わが子3:他者5】でブレンドした上で、「A」を選びました。
恥ずかしいのはイヤですが、わが子の歌いたい気持ちの方が少し強め、だけどほかのお客さんに迷惑かけてまで優先すべきことではない(赤ん坊なら別ですが…)と判断した上で、わが子には「今はお客さんの迷惑になるから、あとでお父さんと一緒に歌おうなっ!」…と言って止めることでしょう。そして、きっとあとになって「必殺スマホ作戦にすればよかったなぁ…」とちょっと反省するかもしれません。
さて、みなさんはストレートでしたか?ブレンドでしたか?
ストレートの方は、特にどの軸を意識しましたか?
ブレンドの方は、【自分:わが子:他者】をそれぞれいくつでブレンドしましたか?
このような視点から、みなさんの子育て軸を見つけてみてください。
そして、実際にみなさんの子育ての中で、これらの軸が一体どうなっているのかを探ってみましょう!次回も、子育て軸は続きます。
岡山大学准教授 中山 芳一
1976年岡山県生まれ。岡山大学 全学教育・学生支援機構准教授。専門は教育方法学。大学生のためのキャリア教育に取り組むとともに、幼児から小中高学生の各世代の子どもたちが非認知的能力やメタ認知能力を向上できるように尽力している。9年間没頭した学童保育現場での実践経験から、「実践ありき」の研究をモットーにしている。『家庭、学校、職場で生かせる!自分と相手の非認知能力を伸ばすコツ』『学力テストで測れない非認知能力が子どもを伸ばす』(ともに東京書籍)ほか著書多数。最新刊は監修をつとめた『非認知能力を伸ばすおうちモンテッソーリ77のメニュー』(東京書籍)。