やりたいことがうまくできなかったとき、自分の思い通りに物事が進まなかったとき、「もういい!」「やめる!」なんていって怒って投げ出してしまう…幼児期にはよく見られる場面ではないでしょうか。
そんなとき、子どもの中で何が起こっていて、親はどう寄り添うべきなのでしょう。
「森のようちえん さんぽみち」の園長、野澤俊索さんにくわしく伺っていきます。
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先日、子どもたちと湖のほとりにおさんぽにいきました。
道端に笹がいっぱい生えていたので"笹ぶね"を作って浮かべようということになり、みんなで作りはじめました。四苦八苦しながら、手元に集中している子どもたち。
できた!という声が聞こえてくると、まだ苦戦中の子どもは少し焦ってきた様子。そのうち一人の子が「できないよー!」と言ってわんわん泣き始めました。
「どんなふうにやっていたの?」と聞くと、泣き止んでおはなしをすることができました。しばらくしてから今度は一緒に笹ぶねを作り始めました。「ここのところがむずかしいね」と少し手伝ってあげると、「できた!」とうれしそう。
それから二つ目を作ると言って、今度は一人で作ることができました。
「なんで泣いていたの?」と聞くと、「うまくできなくて、どうしようっておもったら、なみだがでてきたの」とのこと。
まだ幼い子どもたちは、自分の感情をコントロールしたり、自分の思いを相手に伝えたりするのがとても難しいことなのです。
うまくいかないときに怒ったり泣いたりすることは、赤ちゃんの時から最初にできる感情表現です。これは自分の気持ちを伝える原始的な方法なのです。
相手が赤ちゃんなら、どうしたのかな?といろいろと推察できるのですが、幼児期になると気持ちはもっと複雑です。そんな心の奥底にある気持ちを上手に表現するにはまだ幼すぎるため、子どもたちのとる方法はやっぱり怒るとか泣くとかになってしまいます。
ある日、トカゲを捕まえようと一生懸命追いかけていた子がいました。そして一日中追いかけた末に、やっと捕まえることができました。これをお母さんに見せたらきっと喜ぶぞ、と思ってその子はトカゲを大事に、大事に持って帰りました。
ところが、お迎えに来てトカゲを見たお母さんは、「ぎゃー!」と悲鳴をあげてしまいました。お母さんは虫が大の苦手だったのです。
それを見たその子はトカゲを地面に投げつけて、怒ったような悲しいような顔をして、足で踏んでしまいました。とっさに、「なんてことするの!」と怒って止めたお母さん。でも子どもも怒っていてうまくお話ができませんでした。
その日のことをお母さんにお話しすると、お母さんの目からは涙がぽろぽろ。子どもの気持ちがようやくわかって「ごめんね、ごめんね」と言いました。そのうち子どもも落ち着いて、「また捕まえようね」とお話ししながらふたりで帰っていきました。
表現が未熟な子どもの気持ちと行動は、上手く一致していないことがあります。悲しいとか、悔しいとか、そうした気持ちをどう表現したらいいかわからなくて、どんなときも怒ったり、泣いたりしてしまいます。
だから、そこに隠れている気持ちを聞いてもらったり、認めてもらったりすることは、子どもたちにとってとてもうれしいことなのです。
モノにあたってしまったり、物事が上手くいかなくてかんしゃくを起こしたりすることはどんな子にでもあることです。
そのとき、どんな気持ちだったのかをしっかりと受け止めてあげることで、子どもたちは落ち着きます。子どもたちがしてしまう様々な行動を諭すのは、そのあとからでも十分に間に合うことです。
何かが起きたときは、まず、気持ちの受容を。どんなことであれ、その気持ちは素直なものです。
「こうしたかったんだね」「うまくできなくて悔しいんだね」「いまは悲しいんだね」と言葉にしてあげると、よりすっきりとすることでしょう。そのあとゆっくりと行動についてお話しすると、子どもたちも理解しやすくなるはずです。
「壊しちゃったら、もう遊べなくなるから、投げないでおこうね」「叩くのはやめようね」など言葉にしてもらうと、より分かりやすく素直に聞き入れるようになるのではないでしょうか。
森のようちえんさんぽみち園長 野澤 俊索
NPO法人ネイチャーマジック理事長、兵庫県自然保育連盟 理事長、森のようちえん全国ネットワーク連盟 理事
神戸大学理学部地球惑星科学科 卒業。
兵庫県西宮市甲山にて、建物を持たず森を園舎とする日常通園型の自然保育「森のようちえんさんぽみち」を運営して10年。今では2歳から6歳までの園児25名と一緒に、雨の日も風の日も毎日森へ出かけていく日々。愛称は"のんたん"。森のようちえん全国連盟では指導者の育成を担当している。
プライベートでは2歳の娘の子育ても楽しみにしている。