2021年10月4日に発売された『音にさわる ーはるなつあきふゆをたのしむ「手」ー(以下、音にさわる)』(偕成社)は、目の見える人も見えない人も楽しめる、さわって楽しむ絵本。
目の見えない人が文字を認識するのに使うのが「点字」ですが、こちらの絵本は点字以外にもさまざまな「しかけ」が!
視覚障害の有無にかかわらず楽しめる本になっています。
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じつはこれまでにも偕成社から発刊されている「てんじつきさわれるえほん」。
特徴は点字だけでなく、イラストにも隆起印刷(凹凸)が施されていること。文字だけでなく、そこにどんな絵が描かれているのか、目が見えなくても楽しめるようになっています。
これまでに発売された「てんじつき さわれるえほん」には、2021年に300万部を突破したあかちゃん絵本『じゃあじゃあびりびり』やシリーズ累計が3400万部を突破している「ノンタン」シリーズの中の1冊『ノンタン じどうしゃぶっぶー』などがあります。
これらはどれも既に人気だった絵本を「さわれる化」したものがメインでしたが、『音にさわる』は最初から「さわることを前提」にして作られた絵本。
どのような特徴を持っているのか、絵本の中身とともにご紹介します。
絵本の主人公は全身が手の形をした「さわるくん」。
4つの季節をめぐり、さまざまな音を探します。
たとえばこちらは夏のシーン。
夏といえばセミが鳴くときの「ジリジリ」、「ミーンミーン!」という大きな音が印象的ですが、絵からはそれほど騒がしそうな印象は感じとれませんよね。
しかし実はこのシーン、何もないように見える真ん中を中心に、あるしかけがあります。
それがこちら。
黒い部分に隆起印刷が施されており、木の幹や葉っぱ、そしてセミの大きな鳴き声をさわって体感することができるようになっているのです。
この隆起印刷と絵を組み合わせた実際の絵本の中身がこんなかんじ。
たくさんの点や細い線、太い線が入り混じり、さわっただけなのに、まるで本当にセミが鳴いているようなにぎやかさを感じとることができそうです。
これまでの「てんじつき さわれるえほん」は既存の本を「さわれる化」していたため、複数の絵が重なっている部分に対して認識しやすいように元の絵からずらした場所に隆起印刷を施してきました。
たとえばこちらはノンタンが自動車のおもちゃを持っているのが本来の絵ですが、自動車とノンタンを一緒に隆起印刷することでわかりにくくなるため、分けられています。
しかし『音にさわる』ではさわることを前提に一から作られたため、絵と隆起印刷が一致するように作られています。
さまざまな形をした秋の葉っぱやどんぐりもこのとおり。
目が見えても見えていなくても、同じ絵柄を感じられるって素敵ですよね。
本作を手掛けたのは、自身も全盲である広瀬浩二郎さん。
新型コロナウイルス感染症の拡大とともに、そもそも「さわる」とはどんな意味をもっているのかという、基本的な問いに立ち返ることになったという広瀬さん。
いろいろな感触の隆起印刷をとおし子どもたちがさわり楽しむことで、視覚だけに頼らないさまざまな感覚が目覚めることになれば、という思いが込められています。
かわいらしく明解なイラストは、日比野尚子さんが手がけています。
目が見えるかどうかにかかわらず、ぜひ多くの子どもたち「さわる」ことの楽しさを感じることができそうですね。
『音にさわる ーはるなつあきふゆをたのしむ「手」ー』
作:広瀬浩二郎
絵:日比野尚子
発行:偕成社
定価:1,540円
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