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保育士が教える小学校入学までに身につけたいこと

【知ると役立つ・保育園の裏側】「年間・月間の保育計画」って知ってる?家庭でも意識したい子どもの年齢なりの成長の姿とは

【知ると役立つ・保育園の裏側】「年間・月間の保育計画」って知ってる?家庭でも意識したい子どもの年齢なりの成長の姿とは
保育園では、年間計画、月案・日案を立て保育所保育指針に沿った保育を行なっていることをご存知でしょうか。年齢ごとに到達しておきたい成長過程を、親も知っておけば、子育ての悩みが少しは減るかもしれませんね。元保育士ライターが解説します。
目次

保育園では、年間計画、月案・日案を立て保育所保育指針に沿った保育行なっていることをご存知でしょうか。

保育士は年度初めにクラス会議を開き、子ども一人ひとりの成長の確認や申し送りを行います。
一人ひとりの子どもと、クラス全体の様子を把握した後、1年間でどのような成長を目指すのか、日々の遊びや行事を通し、どのようなことを「ねらい」とし、成長の後押しをするのか計画を立てます。

この計画は、年間・月間・週案・日案とクラスごと・年齢別に大まかな計画から細やかな計画までを立て、子どもたちの成長を促します。

そんな成長や発達の過程を親御さんも知っておくとちょっと子育てにプラスのスパイスになるかもしれませんね。

元保育士のライター炭本まみが解説します。

年間・月間・日ごとの保育計画とは?

厚生労働省の管轄である保育所は、「保育所保育指針」に基づいて保育を進めています。

「保育所保育指針」とは、厚生労働大臣が告示し定めた指針であり、保育所の運営や子どもの保育で大切にしなければならないことが記されているもの。時代とともに改訂され最新のものは2018年に見直されました。

保育園では、この保育指針を基に、クラス・年齢ごとに保育計画を立てていきます。また、保育計画については、「保育所保育指針」に以下のように示されています。

”全体的な計画は、子どもや家庭の状況、地域の実態、保育時間な どを考慮し、子どもの育ちに関する長期的見通しをもって適切に作成されなければならない。

出典:厚生労働省/保育所保育指針解説

一人ひとりの子どもの家庭環境、子ども同士の関係や発達過程をよく観察し考慮しながら、保育指針に沿ってどのような目標を掲げ、ねらいを持ち、具体的にどのような活動をしていくのかというのが年間保育計画です。

季節感や行事、子どもの育ちや到達しておきたい成長過程を考慮したものが月間保育計画となり、さらに、週間、日案とより詳しく掘り下げた計画を立てて保育を実行していきます。

それでは、各年齢にはどのような目的を掲げた保育計画があるのでしょうか。年齢別に大まかにご紹介します。

3歳児クラスの年間計画と家庭でのアドバイス

3歳児クラスの子どもは、保育園の場合進級児と新入園児が混じり合って保育室にいる状態のことが多く、4月~5月の連休明けまではなかなか落ち着かない状況です。

これまで保育園へ通っていた子どもであっても、周囲の友だちや担任・保育室の変化により、何となく心細くなったり不安定になったり、登園を嫌がる日があるかもしれません

ところが5月の連休が明けるころになると、少しずつ友だちの顔と名前を覚え、担任の先生とも信頼関係ができてきます。

一人で遊んでいながらも、友だちと同じ遊びを楽しんだり、おもちゃの貸し借りや言葉のやり取りがうまくいかず、けんかになりながらも、相手にも思いや気持ちがあるのだと気づき、友だち関係が少しずつできてくる時期でもあります。

いっしょに遊んでいるようで、まだまだ一人遊びが主な活動の子どもももちろんいます。おうちで「誰と遊んだの?」「仲良しはだれ?」と聞いても、子どもが答えられないこともあるかもしれませんが、気にしなくて大丈夫でしょう。

そして夏から秋にかけての3歳児クラスは、ぐっと成長が見える時期。クラスでの活動や生活リズムにも慣れ、着替えやトイレ、食事などが少しずつ自分でできるよう自立していきます。

友だちや先生とは、言葉でのやり取りをしながら関わるのが上手になっていきます。おうちでも子どもの言いたいことやしてほしいことがわかっても、「どうしたの?何か欲しいの?」「牛乳?コップにどれくらい入れようか?」など、言葉を介した関わりを多く持つように心がけてあげるとよいでしょう。

大きく自立していく年齢なので、おうちでも子どもが「自分でしたい!」という気持ちを理解し、少しだけ待ってあげる時間を持つなど寄り添ってあげながら、その中で、さりげなく援助し、子どもの成功体験を増やしてあげるのがよいでしょう。いっぽうで、本来のルールや物事の良し悪しも、落ち着いている時に伝えていきましょう。

言葉でのやり取りや気持ちの表現を通し、心が大きく成長するのが3歳児クラスの大きな特長です。。保護者も、短時間でいいのでしっかり手をとめ、目を見て、話を聞いてあげる時間を持ってあげましょう。

4歳児クラスの年間計画と家庭でのアドバイス

4歳児になると、着替えやお手洗い、食事などほぼ生活面での活動は自立し、援助が必要なくなっていきます。 保育園では、言葉を通して友だちや保育士と更にコミュニケーションを深めていく一年間となるでしょう。

また、友だちとの関わり方も安定し、言葉を使った関わりの中でけんかなどを解決したり、自分たちならではのルールを作り、楽しむ姿も見られます。保育士は見守りながらも、子ども一人ひとりの姿をしっかり見極め、それぞれの個性を大切にしながら更に良いところを伸ばすよう、援助していきます。

いっぽう自然環境や社会情勢、海外のことや大人のこと、仕事や生活、文字や数字などに関心を持ち始め、視野がぐっと広がってくるのも特徴です。
好奇心を刺激し、さまざまなことに興味を持ち楽しめるよう、おうちでもたくさんの経験をさせてあげたいですね。

お料理を一緒にしたり、お買い物に出かけ計算をしたり、献立を考えるなど、生活に即した経験も興味を持って楽しめることでしょう。

また、さまざまなことができるようになってくる反面、促しや声掛けがまだまだ必要な年齢でもあります。「この後、どうするんだっけ?」などと子ども本人が気づいて行動できるようにしてあげることで、自信を高め成長していくことでしょう。

5歳児クラスの年間計画と家庭でのアドバイス

5歳児クラスは、小学校入学前の最後の保育園生活の一年となります。
保育園では、一人ひとりの子どもの姿を再度見つめなおし、どのようなことを伸ばしていったらいいのか、どのような援助が必要か、その子どもの個性を活かしながら目指していくものにねらいを定め、関わりを考えていきます。

「保育所保育指針」には、”幼児期の終わりまでに育ってほしい「10の姿」”という10項目があるため、保育士はクラスの子どもの姿と照らし合わせ、指導や保育を考えていきます。

幼児期の終わりまでに育ってほしい10の姿

  1. 健康な心と体
  2. 自立心
  3. 協同性
  4. 道徳性・規範意識の芽生え
  5. 社会生活と関わり
  6. 思考力の芽生え
  7. 自然との関わり・生命尊重
  8. 量・図形、文字などへの関心・感覚
  9. 言葉による伝えあい
  10. 豊かな感性と表現

これらは必ず達成しなければならないことではありませんが、小学校入学までに、保育士がこれらのことを意識し、子ども一人ひとりに対し、またクラス全体に対し、どのような環境やサポート、関わりが必要なのかを考えています。

【小学校入学の不安】知らなかった!園から学校に送る「要録」は何を書いてるもの?親の希望は伝えていいの?元保育士が徹底解説という記事でも紹介しましたが、保育園が小学校へ申し送りをする書類には、この「10の姿」と照らし合わせた子どもの成長の姿を記録していきます。

難しく考えることはありませんが、おうちでもわが子にはどんなことに関心があり、どんなことにあまり興味を持ってていないのかを知っておくだけでも、日ごろの関わりや心持ちが変わってくるかもしれませんね。

保育計画を立てて、保育士が意識することとは?

このように、保育計画を細かく立てていくことで、保育士は子どもの年齢や月齢に合わせて、目指したい成長を職員間で共有したり、クラスや個々の子どもの様子と、指導案を見比べ、どのような保育士の関わりが足りていないか、どのような成長が子どもたちにあるか、振り返り、翌日・翌週・翌月の目安としています。

クラスだよりなどでも、クラス全体の様子や流行している遊びや言葉、子どもの姿を見て感じる保育士の思い、家庭にもお願いしたい関わりなどが記されていることがあるかもしれません。

保育園からの保育計画を通した子どもの成長を促すメッセージですので、ぜひ目を通しておきましょう。

保育士の保育計画を知ることで、家庭でフォローできることがある

保育計画を実際に公開している保育園はほとんどないかもしれませんが、保育目標など大まかな保育園の方針や思いなどは、クラスだよりや保護者会などから知ることができるでしょう。

知っておくことで、おうちでもできるフォローとはどのようなことでしょうか。

行事が近い時は家ではゆっくり休ませよう

運動会やお遊戯会など、保護者に向けて発表する行事は、練習が1カ月ほどにおよび、子どもは大変疲れています。

行事が近いときは、おうちではゆっくり休ませてあげたり、普段できていることができていなくても、大目に見てあげたりしましょう。

子どもを客観視し、家庭でも「認める・褒める」

年齢なりの成長ができているのか、心配になることがあるかもしれません。けれど子どもが少しずつ成長していると感じたり、お手伝いをしたり、自分で自分のことができていたときは、「できるようになったんだね」「やってくれたの?助かるな」「ありがとうね」などと、成長を喜び認める言葉をかけてあげましょう。

出来ている、成長しているという言葉をかけてもらうことで、子どもは喜びさらに成長していくはずです。

家庭での会話の糸口にしよう

保育計画についてや年齢なりの求められる姿、保育園でいま取り組んでいること・子どもたちが頑張っていることなどを知ることで、子どもとの会話の糸口になり、おうちでの会話が増えることでしょう。また、子どもも保育園での様子や感じたことを思い出して話すことができるようになるでしょう。

小学校へ入学すると、途端に子どもの様子が見えにくくなり不安になることも増えてきます。

その点、保育園での活動について触れる会話を続けることは、今後、学校であったことを話すのが自然にできることにつながっていくのです。

***

保育士は一緒に子育てをしている同志でもあり、専門家でもあります。不安な時は遠慮せずお子さんの様子について聞いてみて下さいね!

年齢なりの成長とわが子の成長をきけば、きっと子育てに向かう気持ちも楽になるはず!もちろん、保育士も喜んで応えてくれるはずです。

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執筆者

炭本まみ

保育士として10年勤務し、今は高校生と中学生を育てるママ。未だに子育てに行き詰ることはありますが子育てのアドバイス記事を書きながら自分も振り返っています。趣味はキャンプと旅行とカメラ。アウトドア記事や旅行記事、保育士や保護者向けのコラムを執筆中。

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