子育てに仕事に…と追われる毎日。
わが家では、3歳と1歳の娘たちの「なぜ⁉」という言動に日々振り回されっぱなし。
ここは叱るべきかそれとも成長の一環と見守るべきか…と戸惑いと迷いを抱きながら、こちらのエネルギーはすり減っていく一方。
なので、娘たちを預かってくれている保育園は本当にありがたい存在。
いつも「保育士の先生ってすごい、素晴らしい…」と、その愛にあふれる姿に感謝と感動の嵐。「保育士の目で見る子育て観」というものに日頃から興味を抱いていました。
保育や児童福祉に40年以上携わっている保育士・長野眞弓さんの著書『Happy子育て』には、そんな私のような“お母さん”に寄り添った温かいメッセージと、「こうすれば大丈夫」というすぐに役立つ悩みの解決法が詰まっていて、「いま読めてよかった!」と思える1冊でした。
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著者の長野眞弓さんの人生は、まるで小説やドラマのように壮絶。正直、読んでいて胸が痛くなるような体験談が冒頭に書かれています。親の離婚に、ご自身の離婚・再婚体験。
そんな人生において目的を見失い、理想と現実のはざまでもだえ苦しんでいる時期に「選択理論心理学」と出合うことで、目の前の霧がぱあっと晴れるように人生が切り拓かれていく…。
そしてその「自分が変わるきっかけ」のベースにあった、娘さんの「お母さんに笑顔でいてほしい」という言葉。それは、かつて実母に抱いたご自身の思いでもあり、生きる目的でもありました。
だからこそ、どのお母さんにも子どものために「笑顔で、幸せでいてね」という優しいまなざしが一冊の中に通貫しています。
長野さんは、現代の子育てには「いきなり自由がなくなること」と「達成感がないこと」という2つの壁があると言います。
本当にその通り!と共感しつつ…
それって仕方ないし、子どもとの時間も大切にしたいし、…と思いながら読み進めていくと、その2つの壁を乗り越えてHappyな子育てができる方法が紹介されていたのです!
ひとつ目は、お母さん自身がセルフコントロール技術を身につけること。
ふたつ目は、子どもを育てるための技術を身につけること。
長野さんは、イマドキのお母さんにとって必要なのは、子育ての「知識」と「技術」だと語っています。
とくに「技術」は意識的に身に付けるしかないもの。
その「技術」が、「選択理論心理学」のメソッドをリアル育児に当てはめて論理的に解説されているので、すんなりと理解していけます。
では、技術の1つ目である、お母さん自身のセルフコントロールとは具体的にどういうことなのでしょうか?
子育てをしているとつい、「緊急であり、なおかつ重要なこと」にばかり追われがち。でも長野さんは、あえて「緊急ではないけど、重要なこと」を最優先にすべき、と言います。
なぜか?
理由は、大切なもの(=例えば「家族との時間」)を大切にするには、「追われない」余裕を持つことが重要で、「緊急ではないけど、重要なこと」を最優先に行うことで、行動・成果・結果が変わるからだそう。
わが家ではどうだろう?と試しに実践してみました。
じつは今まで、本音では見せたくないと思いつつ、食事時間も動画を解禁。
そうすれば、ふたりとも動画に夢中になって嫌いな食べ物も、あーんで食べさせられる…という、 "手抜き"を優先していたのですね。とくに朝の時間がないときは何でもいいから食べてほしい!という「緊急性と重要性」もあり。
しかし『Happy子育て』を読んで、大切にすべきは「急いで何でもいいから食べさせること」ではなく、「自分からパクパク食べて、食事時間を楽しむこと」なのよね…と、思い切って食事中の動画を断つことに。
最初は「なんで!?」と言わんばかりに1歳の次女もiPadを指さして大騒ぎ。3歳の長女もロボットのように「アンパンマンみながらごはんたべる」と繰り返してきます…。娘たちの騒ぐ姿に、「ここで見せればラクだけど…」とグラグラ心揺れつつも、グッと我慢。最終的に、何とか食べさせることに成功しました。
…すると次の日からはiPadには見向きもせず、ただ目の前に用意されたごはんにだけ向き合って食べてくれるではないですか!!そしてしばらくすると、1歳の次女は自分でスプーンを持って上手に食べ進められるようになるという快挙も!さらに、たまたまかも知れませんが、3歳の長女も苦手だった野菜を少しずつ自分から食べるように…!
今までは「早く食べさせなきゃ」ということばかりを気にして動画に頼っていたのですが、「動画を見ながらのあーんがなくなったおかげで、子どもたちが自分のペースで食べることができるようになった、それをほめられてもっといろいろ食べようと思った、iPadの画面ではなく家族の顔を見ながら食事の時間を楽しめるようになった」…という、まさにHappyの連続が訪れたのです。
本書のサブタイトル、「イライラお母さんが突然、子育て上手になりました」は、決して大げさな表現ではなさそうです…!
ほかにも、子育ての具体的なアドバイスは充実。
個人的に興味深かったのは、子どもへの声かけの仕方として、「感情でしゃべらず、感情をしゃべる」ということ。
感情でしゃべる→「お母さんはいいけど、あなたが大人になったときに困るんだからね!」
感情をしゃべる→「お母さん、イライラしてきた。このままじゃ、あなたを叱りつけそう」
なるほど。
確かに「感情をしゃべる」ほうが、子どもにすぐ「これはダメなんだ」ということが伝わりますね。
長野さんは、この技術は夫との会話にも応用できると言っています。
夫が見るからに機嫌が悪くて、こちらまで気分が悪くなるようなときは、「ごめん、ちょっと怖いわ、さっきから」と感情をしゃべるのがよいと。
感情をぶつけ合ってもいいことがないことは経験からわかっているものの、ついそっちがそう出るなら!とムキになって言い返すことも多々あり…反省!
子育ての"ホーム"である夫婦関係をよくするためのアドバイスにも、「これは使える!」と非常に役立つものばかり。
ぜひ、子育てだけではなく夫婦関係にお悩みの方にも読んでほしいと思います!!
長野さんがこの本を執筆したのは、まさに新型コロナウイルスが世界中で蔓延している最中の2020年秋。
ご自身が運営している保育園でも、その影響を受けたエピソードが綴られています。
保育園では当初、「感染拡大予防のため、家族全員の体調を毎日報告してもらう」ことをルールとしていたが、保護者から負担が大きいという不満の声が上がったことを受けて、「体調に変化があったら、報告する」というふうに変えたそう。
正しさは、人によっても、立場によっても、時代によっても違う。
自分の正しさを押し通すだけでは、人間関係は壊れてしまう。
だから、捨てるべきはそれぞれの持つ「正しさ」。
自分の正しさを捨てなければ、相手を尊重できない、正しさを捨てた向こうにしか愛はない。
新型コロナで疲弊している私自身、何が正しいのか判断が難しいことも多いので、この強い言い切りに一つの道筋を与えられたような気持ちになりました。
「お母さんを笑顔にしたい」という長野さんだからこその、力強いメッセージ。読みながら拍手喝采です。
1冊にギュッと詰まったアドバイスの数々。
100%の実践はムリだとしても、読むことで多くの気づきと、具体的に今日から変えられる自分たちの行動が見えてくるはずです。
ぜひ、「本を読むヒマがない」という多忙なお母さんにこそ、「緊急ではないけど、重要かも?」と、この本を手に取ってもらえたらと思います。読書がニガテ!という方もサラッと読める一冊です。
『Happy子育て ―イライラお母さんが突然、子育て上手になりました-』
著者:長野眞弓
発行:アチーブメント出版
価格:1,540円(税込)
【わたし的評価】
満足度 ★★★★☆
実践度 ★★★★☆
読みやすさ ★★★★★
わかりやすさ★★★★☆
ライター 河瀬 みこと
大学卒業後16年間、教育関連企業で編集・マーケティング業務を担当。第一子妊娠時に退職。その後保育士資格を取得。二児の姉妹を育てながら、編集・ライター業に邁進中。
2023年春より、念願の「食堂+寺子屋 nuinu(ぬいぬ)」開業。
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