【相次ぐ事故は他人事じゃない】なぜマンションからの落下事故が減らないの?実験や事例から見えてきたその理由を専門家が解説

【相次ぐ事故は他人事じゃない】なぜマンションからの落下事故が減らないの?実験や事例から見えてきたその理由を専門家が解説
ここ最近、たて続けに起きているマンションからの子どもの転落事故。なぜこんなに頻発するのでしょうか?原因と防止策を子どもの事故防止に関する活動を行っているNPO法人Safe Kids Japanの理事・大野美喜子さんに聞きました。
目次

毎年起きているマンションからの転落事故。今年はニュースでもよく目にし、記憶に新しいという人も多いのではないでしょうか。

気をつけている親も多い中で、なぜ事故がなくならないのでしょうか?親は何を知ってどのような点に気をつけておくべきなのでしょうか。

子どもの事故防止に取り組んでいるNPO法人Safe Kids Japan理事の大野美喜子さんにくわしくお話をうかがいました。

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「柵の高さ」で子どもの安全は守れない

ベランダから子どもが落下する原因の一つとしていわれることがある「柵が低いからではないか?」という声。実際にどのくらいの柵の高さがあれば安全なのでしょうか。
Safe Kids Japanでは実際に子どもがどの高さまで登れるかを実験したのだそう。

ー高さを変えられるベランダ柵を使って子どもたちがどこまで登れるのか?の実証実験を行ったと伺いました。結果的に「このぐらい高さがあれば安全」というのはあるのでしょうか?

結論からいうと、安全な高さというのはありません
「高さだけで解決できる問題ではない」というのが、実験を通して感じた感想です。

以前、3〜6歳の子どもを対象に、最大で140cmの高さのベランダ柵を模した装置を乗り越えられるかの実験を行いました。
140cmというと子どもたちの身長よりもはるかに高い柵ですが、足がかりが何もない状態でもあっという間に登ってしまう子もいました。

確かにそこまで高くすれば登れなくなる子どもの方が多いので、一定の効果はあると思います。
でも、実際の現場では椅子や踏み台を持ってくることも考えられますし、やはり柵の高さdで落下のリスクを軽減するのは限界があるなと思いました。

子どもは感情でとっさに行動している

ー子どもがベランダ柵に登りたくなるのはどういう時なのでしょうか?怖いとは思わないものなのでしょうか?

登りたくなる心理というのは正直わかりません。
ですが、転落の事故で子どもを亡くされた保護者の方のお話から推測すると、子どもが「外にどうしても出たい」という衝動に駆られるときではないかと思います。

たとえば、誰かに会いたい、など、ベランダの柵を超えたいと強く思ったとき、危ないという危機感よりも行動に出てしまうことが多いのではないかと推測しています

「柵に登るのは危ないよ」と子どもに言い聞かせることは大事といわれていますよね。
確かにそういった教育は大事だと思いますが、とっさの行動にまでその言い聞かせが通用するわけではありません。そして、実際には柵を乗り越えて転落している事故が何件も起きているという事実をしっかりと受け止めることが大切でしょう。

また消費者庁の調べでは特に3〜4歳が多いようですが、じつは年齢もあまり関係ありません。
危ないことへの分別がつくだろうと思われている、8歳くらいの小学生の子どもでも落ちています

落ちる原因はとっさの行動なので、子どもがちょっと危ないなと感じて理性を保って止められるものではないのです。
つまり、しつけ・教育だけでは防げないので、環境で変えていくしかありません。

「持ってくる」可能性を考えてベランダに出さない努力を

ー環境を整える中で親がすべきことはありますか?

まずベランダを乗り越える足がかりになるものを、子どもが自分で持ってくる可能性があることを認識しておきましょう。

「ベランダにものを置かないようにしています」という人はよくいますが、子どもは自分で足場を作ります。
実際にお話を伺った中にも、ベランダには何も置いてなかったのに、子どもが持ってきたという方もいらっしゃいました。

洗面所の踏み台だったり子ども椅子だったりは、軽くて持ち運びも簡単ですよね。 そういった観点から考えると、ベランダにものを置かないということは解決策にはなりません。
そもそもベランダに出さないという環境を、保護者の努力で作ることが一番大事なことだと私は考えます。

そして、1人では出られないようにするためには、「スライドドアロック」という商品が便利です。

取り付ける位置で窓の開きが調整できるため、子どもが通れない10cm程度のところに設置すれば換気もスムーズにできますよ。

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子どもにとってはおうちの中も立派な遊び場

好奇心いっぱいの子どもにとって、家の中にあるものすべてが遊具です。
高いところには登りたくなるし、ぶら下がるところがあればぶら下がる。倒せるものは倒したいのが子どもです。

実際によくある棚の転倒事故では、子どもが引き出しを階段状にして登って、重心がずれることで家具ごと倒れて下敷きになってしまう、という事例が多くあります。

棚に限らず、椅子や机に対して「これは座るものだし、ここは机だから登ってはいけない」と思うのは大人で、その感覚は子どもにはありませんよね。

少しでいいので大人から見る世界を捨てて、ここでどういう風に遊べるかなと考えると、少しはリスクが見えるかもしれません。
そうした視点からおうちの中の安全を見直して、予防することが何よりも大事です。

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ベランダにものを置かなければ大丈夫だろう、柵の高さがあればいいだろうと、と思っていた人も多いのではないでしょうか?

でも、今回ヒヤリとするような転落の実例を聞いて、そういった思い込みこそが危険な認識なのだと実感しました。

ベランダからの転落は衝動的な行動によるものだという観点からも、子どもが1人でベランダに出られないようにすることが一番の予防策であることも納得できますよね。

ヒヤリを現実にしないためにも、各家庭でベランダへつながる環境をもう一度見直してみましょう!

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お話を伺った方

NPO法人 Safe Kids Japan 理事 大野 美喜子

国立研究開発法人 産業技術総合研究所 人工知能研究センターに所属し、AIを用いた傷害予防教育プログラムの研究などに携わっています。2歳・7歳の2人のお子さんのママ。

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執筆者

ライター Ichika

山梨県生まれ。関西、九州での生活を経て11年ぶりに地元に戻りライター業をスタート。身内や友人に教育関係者が多く、たくさんのヒントを得ながら自分なりの育児を模索中。子育て経験をもとにした体験談やコラムも発信しています。

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