子どもの小学校入学に向けて、迷ったりわかりにくかったりすることの一つが「文字教育」ですね。読むことはできても書けない、書けるけれど書き順が適当など、子どもの姿を前にどこまで教えておいたら良いのか迷うことも多いでしょう。
お友達の中にはすでに漢字や英語を書ける子がいたりして、焦ってしまうかもしれません。
入学前、家庭で文字教育を進めておいた方が良いのでしょうか。もしもするのならどんな方法でどこまで教えておいたら良いのでしょうか。
保育士ライターの炭本まみが、就学前の「文字教育」について解説します。
小学校へ入学後は、すぐに机に向かう授業が始まるわけではありません。
学校内を見て回る「学校探検」や、持ち物の管理の方法を教わったり、整列の仕方など、学校で生活するために必要なことを学びます。
初めの学習は、教科書の中を見てみたり、鉛筆の持ち方を教わったりしたら、ひらがなや自分の名前を書いたり読んだりし始めます。初めはノートを使わずプリントやドリルを使って、線や図形から始まり文字をなぞったり書き順を覚えていきます。
おさらいの意味と、保護者にどのような学習をしているのか知らせる目的で、早々に宿題が出される学校もあるでしょう。
その後は、「見て書き写す」という少し高度な学習になります。例えば、先生が板書したことを連絡帳に書き写すことも文字学習のひとつでしょう。
夏休みには、「絵日記」や「一行日記」など、事実や感じたことを文章にして書く宿題が出されます。
夏休みは7月末からの学校が多いので、実質入学から3か月で文字で思いをつづるというところまでたどり着けるように学習します。文字学習の進行は意外と早いのです。
ここまでを読むと、小学校入学に向けて家庭で文字を読み書きできるように教えなければ!と焦ってしまうパパやママがいることでしょう。
ですが、「文字を書く」ことも子どもにとっては「遊び」のひとつです。楽しくなければ文字に関心を持たず、覚えることはできません。
まずは入学前に自分の名前を書ければ大丈夫。ほかの文字も読みたい・書きたいようであれば生活の中で自ら学び、パパやママにも読み方や書き方を聞いてくるでしょう。
文字を覚えられるようになるには、ドリルなどを使わなくても日常生活や遊びの中で興味や関心を持たせてあげられる活動がたくさんあります。その一例を紹介します。
文字をいきなり教えるのではなく、文字にたくさん触れ、文字を意識できるように環境を用意することが大切です。
文字に興味を持たせるための「導入」として家庭でも身近なものが、絵本です。
ときには子どもに絵本を読んでもらうのも良いですね。年齢に合った絵本を選ぶと、文字が多くなったり、お話の内容が複雑になったりして子どもが自分で読むのには少し難しいことも。少し対象年齢が低くても、自分で読めるという経験が自信になります。
いつもパパやママに読んでもらっていた絵本を自分が読むという体験は、子どもの視点が変わり、文字に興味を持つきっかけになりますよ。
文字を書くには腕や手を複雑に動かす「運動」が必要になります。これまで動かしたことのない腕や手の動かし方をしながら、立て・横・円・斜めに線を引き、合わせたものが文字になります。
その下準備のために、たくさんの絵を描いて遊ぶのも立派な練習です!
クレヨンだけではなく、色鉛筆や絵具など色々な画材を使い、大きな紙から小さな紙まで様々な大きさの紙に描いてみましょう。
ママやパパも隣で一緒に描いて楽しみましょう。「りんごを描こうかな」と言いながらりんごを描き、「りんご」と書き添えることで、物の名前と文字の書き方・読み方が連動していることにも気づくでしょう。
ぜひ一緒に描いて遊んで見せてあげましょう。
かるた遊びは、ひらがなを認識するのにとても最適な遊びです。子どもは慣れてくると、読み札を少し読んだだけで取り札を探すようになります。
かるた遊びを通じて、子どもはひらがなを「形」としておぼろげに覚えていくようになります。
慣れてきたら、子どもに読み札を読んでもらうのもおすすめ。まだ読めないときは、一緒に声を出して読んであげましょう。
一人で読みたい、読めるようになりたい」という意欲が沸くはずです。
子どもはおのずと成長したいと日々思っているもの。
読めるようになったら、文字を書くことに挑戦したくなるでしょう。お手紙ごっこで遊び始める子もいます。
初めは書いた文字が正しくなく、何と書いてあるか読めないかもしれません。そんな時は「なんて書いたの?字が書けるんだね」と認めてあげましょう。
子どもが読めない文字や、鏡文字など間違った文字を書いていても「ここは違うよ」「もう少しきれいに書いたら」などのダメ出しをしてはいけません。
教えられるのと、少しずつ嫌になって文字を書くことに興味が失われていくかもしれません。大切なのは、文字に興味を持ち、読もう・書こうとする気持ちを育てること。
どんな字を書いても「書けたね」と書けたことや書こうとした気持ちを認め、言葉にして伝えてあげましょう。
正しい書き方は、学校でプロの先生が教えてくれるので、それまではたくさんの遊びや運動、文字への興味を育ててあげましょう。
入学後の授業で、基本的な文字の書き方から、文字を使って事実や気持ちを表現するようになるまでのスピードは確かに速いと感じるかもしれません。ですが、子どもは興味を持つと習得は早いもの。
事前に全てのひらがなの読み書きができる子どもは、入学間もなくは優越感を持ち、つまずくことなく学習できるでしょう。でも事前に読み書きがさほどできなかった子どもとの差は、あっという間に縮まるものです。
文字を覚えることはわかりやすい目安なので、小学校生活への心配から教えてあげたくなるもの。ですが、それよりもたくさんの遊びや活動、家庭での会話を豊かに経験し、柔らかに興味を吸収する心を育むほうを重視してほしいと思います。
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2020年に新しい小学校教育要領へ変わってから、文部科学省では、子どもが自ら表現し、考え、行動するという自主性や創造性を育てる教育を目指しています。
困難なことがあったとき対処する力、さまざまな経験を経て仲間と話し合い考えを出してまとめる力など、先のわからない新しい時代に向けて、一人ひとりの子どもの「考える力」を大切にしています。
さまざまなことへ興味を持ち楽しんだり疑問を持ったりできるよう、家庭は安心できる場所でありたいですね。温かな会話やかかわりで、子どもをサポートしていきましょう。
炭本まみ
保育士として10年勤務し、今は高校生と中学生を育てるママ。未だに子育てに行き詰ることはありますが子育てのアドバイス記事を書きながら自分も振り返っています。趣味はキャンプと旅行とカメラ。アウトドア記事や旅行記事、保育士や保護者向けのコラムを執筆中。
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