空を見上げたときに青く見える理由、夕焼け空が真っ赤になる理由を子どもから聞かれたとき、あなたは説明ができますか?
たしかに空気は透明、太陽の光は無色なのに、なぜ色が見えるのでしょう。その理由を子どもにもわかりやすいように解説します。
太陽を絵で表すとき、よく赤や黄色が使われます。子どもたちもお絵描きのとき、そういうものだという感覚が身についていて、自然とクレヨンや色鉛筆で赤や黄色を選びますよね。
ところが太陽の光は、実際は白に近い色をしています。この色を白色光(はくしょくこう)といいます。しかし実は太陽の白い光は赤から紫までのいろいろな色が集まってできているのです。
白いのに、いろいろな色でできている…?ちょっと難しいですね。
その証拠に、太陽の光をプリズム(光を分散したり屈折したりさせるガラスの三角柱)を通して白い紙の上に映してみると、虹のような色の帯ができます。光は「電磁波(でんじは)」と呼ばれる波の一種で、プリズムを通るとき、進む向きがずれるので、赤から紫までのいろいろな色があらわれるのです。
画像提供:みぃの親子実験教室
このように、1つの光がいろいろに分かれることを、「光の分散」と言います。太陽の光は虹の7色<赤、橙(だいだい)、黄、緑、青、藍(あい)、紫>が混ざり合ってできています。プリズムで分かれた光を、またプリズムで1つに集めると、ふたたび白い光に戻ります。
虹が7色に見えるのも、大気中の水滴がプリズムの役目をしているからです。雨の後、太陽の光が大気中に浮かぶ水滴の中に入り、そこで分散して7色に分かれ、虹となるのです。プリズムを通した光が、7色に分かれるのと同じような現象です。
太陽の光がいろいろな色が混ざっているのに、絵の具を混ぜたときのような色にならないのは、「光の三原色」が元になっているからです。
「光の三原色」とは赤Red・緑Green・青Blue(英語の頭文字を取ってRGBと呼ばれます)のことで、これらを混ぜ合わせると、光のエネルギーが増して明るくなり、白に近づいていくのです。これを「加法混色(かほうこんしょく)」と呼びます。加法とは足し算のことです。
赤、緑、青を混ぜていくとどんどん明るくなり、3色を重ねると白になるということです。テレビやパソコンのディスプレイなどはこの加法混色で作られています。
ちなみに、絵の具は「色の三原色」を元に作られています。
「色の三原色」とはシアンCyan=緑がかった明るい青・マゼンタMagenta=明るい赤紫色・イエローYellow=黄色(英語の頭文字を取ってCMYと呼ばれます)のことで、これらを混ぜ合わせると、「光の三原色」とは逆に、光のエネルギーが失われ、どんどん暗くなって黒に近づいていくのです。
いろいろな色の絵の具を混ぜ合わせると黒っぽくなっていくのは、実体験からイメージがつきやすいのではないでしょうか。
この方法は「減法混色(げんぽうこんしょく)」と呼ばれています。減法とは引き算のことです。絵や写真などは色の三原色で作られています。絵の具の色は余分な光を吸収させて作ります。混ぜると光がより吸収されて弱くなるためどんどん黒くなって見えるのです。
空が青く見えるのは、何の色もついていないように見える太陽の光が、実はたくさんの色が混ざり合ってできていることと大きく関係しています。
『にじいろのしまうま』という絵本があります。綺麗な虹色をしたシマウマが、自分の色を世界に分けてあげるというお話で、世界は色とりどりになったけれど、自分は色を失ってしまい落ち込んでいると、色を分けてあげた仲間が周りを囲んでくれてうれしくなるという話です。
「赤い空はみたことがある?」「虹はみたことがある?」「夜はなにいろ?」色々聞くと、空にはたくさんの色があることがわかります。青い空は晴れた日の空。いろんな色をみんなで分けっこしてるんじゃない?と提案してみたりします。
さて、ここから本題の「空が青く見える理由」に入ります。
太陽の光を作っているいろいろな色の光は、それぞれの波長を持っています。この光を波長の成分に分解したものを「スペクトル」といいます。目に見える光の色の中で、青い光の波長が一番短く、赤い光の波長が一番長くなっています。
この光の色の波長の違いが、空の色と関わっているのです。
太陽の光が地球に届くとき、地球を覆う空気の層(大気)を通りぬけます。大気には空気の分子があり、太陽からやってきた光を散らばらせる性質があります。これを「光の散乱(さんらん)」といいます。それぞれの色で、散らばりやすさと 進む距離が違います。波長が短いほど、光は強く散乱されます。
つまり、青い光は他の色より強く散乱して空いっぱいに広がります。その結果、青色が他の色より強調されて、空が青く見えるのです。紫の光は青よりもっと波長が短いのですが、人間の目では感知することができません。
ちなみに、目に見える可視光線より波長が長くなると「赤外線」になり、短くなると「紫外線」となります。
夕方の空が赤くなるのは、太陽の光が突き抜ける大気層の厚さに関係があります。
夕方になると太陽が傾き、地平線のほうへと遠ざかります。地球は丸いので、太陽が真上にある時よりも、地平線にある時の方が遠くなります。つまり、夜が近づくと、光が進む大気中の距離が、昼間より長くなるのです。
画像提供:みぃの親子実験教室
太陽が遠ざかることによって、光は空気中を長く旅することになり、青い光は私たちの目に届くまでに散乱しきってしまいます。
それに比べると、波長が長い赤い光はほとんど散乱されることなく、まっすぐ私たちの目に届きます。夕方の空が赤いのはこのためです。夕焼けだけでなく、朝焼けの空が赤いのも、同じ原理です。また、太陽だけでなく、月や星も、地平線近くでは赤く見えます。満月に近いころの夕方、東の空をながめてみましょう。真っ赤な月が見つかるかもしれません。
暗い夜はよく見えないけど、太陽が出ているとよく見える。見えるというのは電気をつけるのと同じで、太陽の光が当たっているということ。
お空に光があたったら、青い色が見えるということ。
夕方の空は赤い色や黄色をしてるということ。
年長さんくらいになるとこんな話が分かるかもしれませんね。
画像提供:みぃの親子実験教室
この空が青く見えたり、夕焼けが赤く見えたりするしくみを身近な実験で再現することができます。特別な材料は必要ありませんので、ぜひやってみてください。
■実験の方法
少量の牛乳を混ぜた水は大気中の分子がある状態を再現しています。
ここに、太陽を再現した懐中電灯の光を当てていきます。
まず、懐中電灯の光を上から照らすとペットボトルの短辺へ光が届きます。
波長の短い青色が液中の粒子にぶつかり散乱することで、光が少し青みがかって見えます。
これは、空が青く見える原理と同じです。
次に懐中電灯の光を横から照らすとペットボトルの長辺に光が届きます。
写真は左側から懐中電灯を当てています。波長の短い青色は懐中電灯の光側で散乱するので、懐中電灯の近くの光はやや青色寄りになります。波長の長い赤色は懐中電灯の光より遠くまで進み、赤色になります。
これは、夕焼けが赤くなる原理と同じです。
光の散乱実験の企画・画像・解説提供:みぃの親子実験教室
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いかがでしたでしょうか。
空が青いのは、ひと言でいうと「太陽の光の中で青い光が一番波長が短いので、大気中の分子にぶつかりやすく、たくさん散らばるから」。
それには、太陽光が波長の異なる7色の光でできていることと、大気による「光の散乱」という性質が関係しているのですね。
空が青く見える理由
太陽の光は、虹の7つの色の光からできているんだよ。赤、だいだい、黄、緑、青、あいいろ、紫の7つ。その中の青い光が一番ちらばりやすくて、お空いっぱいに広がっているの。だから、お空は青く見えるんだよ
夕焼けが赤く見える理由
夕方になると太陽は沈んでいくでしょう。そうすると、太陽の光はここまで届くのに、とっても長い距離を進んでくるの。そのうち、ちらばりやすい青い光は途中で散ってしまい、ちらばりにくい赤い光がここまで届くから赤く見えるんだよ
そんな理由を知って空を見上げてみると、いつもの青空や夕焼け空がまたちょっと違って見えるかも…ぜひ、親子で話しながら観察してみましょう。
「空が何で青いのかな?」と、子どもに聞いてみるといろいろな答えが返ってきます。「かみさまが泣いたから」「水でできているから」などなど。
子どもたちの想像は本当に豊かだなあと感心します。
そんな空想が科学や技術に変わり、世界を作っていくはじまりです。この芽を摘むことなく、大切に伸ばしていきたいですね。
森のようちえんさんぽみち園長 野澤 俊索
NPO法人ネイチャーマジック理事長、兵庫県自然保育連盟 理事長、森のようちえん全国ネットワーク連盟 理事
神戸大学理学部地球惑星科学科 卒業。
兵庫県西宮市甲山にて、建物を持たず森を園舎とする日常通園型の自然保育「森のようちえんさんぽみち」を運営して10年。今では2歳から6歳までの園児25名と一緒に、雨の日も風の日も毎日森へ出かけていく日々。愛称は"のんたん"。森のようちえん全国連盟では指導者の育成を担当している。
プライベートでは2歳の娘の子育ても楽しみにしている。
幼児向け実験教室主宰 みぃ
2歳と0歳の姉妹を子育て中の薬学部大学院卒のママ。
「何気ない日常を、ワクワクドキドキな科学の世界へ」と幼児向けの親子実験教室をオンラインやリアル教室で開講中。日常の科学を遊びへ転換させ、2歳からでも簡単に取り入れられるSTEAM教育遊びをInstagramで配信している。
ホームページ:みぃの親子実験教室
インスタグラム:@miii_edu
ライター 福田チヅコ
主として大手通信教育会社にて未就学児や小学生向けの教材や告知物の編集・原稿執筆を担当。
その他、女性誌やWEBでインタビューや対談記事を手がけている。
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