『子どもが生まれても夫を憎まずにすむ方法』(太田出版)の著者は、ニューヨーク郊外に住むライターのジャンシー・ダン。夫も同じくライターという、フリーランス夫婦です。ふたりの間には、6歳の娘がひとり。
この本は、タイトル通り、子どもが生まれて以来ケンカばかりになってしまった夫婦関係を再び円満に戻せるように奮起する妻のドキュメンタリーエッセイです。
その中身は、第三者から、科学的に、ときに容赦なく、率直に分析してもらうというもの。
カップル・カウンセリングに、家計・教育費から住まいの整理術、さらにはFBIの人質解放交渉人へのインタビューまで!
リアルでためになって、たまにクスッと笑える…なにより国境を越えて勉強になることが盛りだくさんの1冊でした!
子どもが生まれてまもない頃、オムツの片づけを頼んでもすぐ動かない夫にブチッときて、初めて夫を怒鳴りつけてしまった著者のジャンシー。
それ以来、日常生活のささいなことで夫とのケンカは絶え間なく続き、怒鳴るたびに自己嫌悪…。一方、妻に責められても、いまいちなんでそんなに怒るのかピンと来ない夫。
「私ばっかり」「もっとこうしてほしい」というストレスがたまる毎日。しかし、同時にこのまま私たちがケンカをしていたら、子どもにも悪影響を与えてしまうのではないかという不安も…。
そこで、妻のジャンシーは立ち上がります。
「今ならまだ間に合う!」と、夫婦関係を改善するために、できることはなんでもやろうと。夫婦が抱えている問題をプロの目で見て判断してもらい、アドバイスをもらいに奔走します。
まずは、"鬼コーチ"的な米国で著名(かつ高額!)なカウンセラーによるカップル・カウンセリングを受けて、夫婦そして家族間の問題を掘り起こし、行き詰まりを打開。
カウンセラーからの怒涛の攻(口)撃を受けて、夫婦お互いに相手の気持ちを置き去りにして、勝手な思い込みにとらわれ過ぎていたことに気づかされます。
たとえば、ジャンシーは家事の負担の不公平感から夫を怒鳴ってしまうことを相談すると、「"自分だけが正しいという怒り"に溺れ、その状態に究極の居心地のよさを感じている」と指摘されます。
つまり、一方的に家事を背負い込んでその負担の重さにイライラして当たる前に、コミュニケーションを取って「私がこれをやったんだから、あなたはそれをやって」と言えさえすればいい、と。
そして、このような夫婦げんかを目の当たりにしている子どもは、将来的に「夫婦とはこういうもの」と自然と学習していってしまうと注意されます。
鬼コーチは、子どものためにも夫婦間のコミュニケーション法を指南し、それをジャンシー夫婦は素直に実践していきます。
これってわが家のこと??と思えるようなエピソードに読みながらハマりつつ、確かにわが子たちのために私自身もどうにかしないと…という焦りも。
読みながら、ジャンシーと共に「変わらねば!」という強い気持ちに駆られていきます。
そもそもケンカの要因は、「時間がないため常に着々と物事を進めたい妻と、いつも自分のやりたいことを優先させてしまう夫」の行き違いにあり。
さらには「家事・育児は女の仕事」といったひと昔前から続いているジェンダー的な役割分担観にいまだに縛られていたり、男女で子どものために本能的に動く能力に差があったり…。
ある調査結果によると、寝ているときの子どもの夜泣きに、ほとんどの女性がすぐ気づくのに対し、男性は車の盗難アラーム音や強風の音よりも気づかないそう!(つい先日も、夜泣きする2歳を抱っこしながら、隣でいびきをかいている夫を死んだ魚のような目で見つめていました、私。)
このあたりはどこの国でも共通なんですよね。
とはいえ、子どものためにも、意識は変えるべきだとこの本で強く思いました。
というのも、子どもが身近な家庭において「女は家庭」というしがらみを当たり前にしてしまうと、自分の将来やりたい職業や生き方にも制限をかけてしまう恐れがあるというのです。
社会に対して男女平等!と叫ぶ前に、私たち夫婦がまずは子どもの前で「平等」を実践せねばいけない。
そのために具体的にどう生活を変えるべきかを、この本では丁寧に描いています。
週末のスケジュールの組み方、子どもへの家事への参加のさせ方、住まいを整理して効率的に家事が進められるくふうなども。
これらもライターである著者の情報力をフル稼働し、一流のプロたちから指南を受けているので、ハウツーに説得力があり、読んで役立つ情報が盛りだくさんでした。
そのような努力をコツコツと続けながら、ジャンシー夫婦は次第に変わっていきます。
その努力の途中で印象的だったのは、ケンカが悪いのではない、悪いのはそれがダラダラと続くこと、ということ。
正々堂々と夫婦で言い争うことは、実は子どもにもいい影響になるのだそう。
物事を解決する手段として、しっかりとお互いの意見を言い合い、お互いを理解し、徹底的に話し合うなら、それは子どもにとっても「建設的な問題解決法」ができるようになるから。
これって、わが家にとってもすごく大切なポイントだなと思いました。
ケンカが子どもに与える影響をいろいろと知りつつ、どう夫婦間でコミュニケーションを取っていくべきなのか、を学べる1冊です。
果たして、この夫婦は数々のチャレンジを経てどういう関係にたどり着いたのか…それはぜひ本書を読んでのお楽しみに!
『子どもが生まれても夫を憎まずにすむ方法』
著:ジャンシー・ダン
発行:太田出版
定価:単行本(ソフトカバー)1,980円(税込)/Kindle版(電子書籍)1,881円(税込)
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【わたし的評価】
満足度 ★★★★☆
実践度 ★★★★☆
読みやすさ ★★★☆☆
わかりやすさ★★★☆☆
ライター 河瀬 みこと
大学卒業後16年間、教育関連企業で編集・マーケティング業務を担当。第一子妊娠時に退職。その後保育士資格を取得。二児の姉妹を育てながら、編集・ライター業に邁進中。
2023年春より、念願の「食堂+寺子屋 nuinu(ぬいぬ)」開業。
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